2015 Fiscal Year Research-status Report
能登半島里山地帯に生息する絶滅危惧種カワヤツメの生態と減少要因の解明
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26340092
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
柳井 清治 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (20337009)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アンモシーテス / 人工ふ化 / 浮遊土砂 / ワンド / 水理実験 / 水位差 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,河川環境の変化がカワヤツメの発生の初期過程に与える影響について中心に研究を行った.まず地元の漁師に協力いただきカワヤツメ親魚20尾を捕獲し,人工授精を行い幼生を約1万尾得ることに成功した.次に孵化直後の幼生(体長約1mm)と4か月ほど成長した幼生(体長約4mm)を用い,4段階の粒径にわけた底質が入った容器にこれらの幼生を投入し潜砂状況を確認した.また容器内の環境を変化(底質を投入・カバーとなる繊維を投入・何も投入しない)させて,初期幼生と餌を投入し,生存率と成長率を比較した. この結果,孵化直後の幼生(1mm)は最も細かい極細粒砂で潜砂していたが,幼生(体長約4mm)では極細粒砂と細粒砂でよく潜砂し,粗粒砂では潜砂しなかった.また幼生の生存率と成長率は底質を投入した処理で高い傾向が見られた.以上の結果から幼生は潜砂に適した細粒砂が堆積する底質が不可欠であり,潜砂することで着実に成長し,捕食者からも逃れることができると考えられる.細粒の砂が堆積するワンドの消失はカワヤツメの減少要因の一因であり,特に孵化直後の幼生に大きな影響を与えると考えられる. 次にカワヤツメ親魚が遡上する際,障害となる河川構造物の落差を明らかにするため水理実験施設を用いて遡上実験を行った.水路内で落差11cmと24cmで鉛直の隔壁と傾斜隔壁を設定し,それぞれ昼間と夜間で親魚の遡上率を比較した.この結果カワヤツメは昼間より夜間の遡上行動が活発であり,11cmの水位差では遡上できるが,24cmの水位差では遡上できないことが分かった.また画像解析から遡上可能な水位差は20㎝程度と推定された.この結果から河川構造物はカワヤツメの遡上に大きく影響し,たとえ小規模な落差工であっても遡上を妨げ,好適な産卵場にたどり着けないことが減少要因の一つとなっている可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カワヤツメの人工ふ化に成功し,多くの幼生を得ることで減少要因の解明を行うための実験を行いやすくなった.減少要因はこうした初期段階の生息場の減少と親魚の遡上能力の低さが大きく影響していることが明らかになりつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
農薬の影響について本年度親魚から得られた幼生を使って実験を行い,影響を明らかにする予定である.またこれまでの研究成果を学会誌に投稿したり,地元向けに普及講演会を行う.
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Causes of Carryover |
年度末の物品購入の段階で入力ミスが見つかり,若干の残額が生じてしまった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は少額であり,次年度執行計画の中で組み込んで適正に使用を行ってゆく予定である.
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