2015 Fiscal Year Research-status Report
人々が健康に過ごせる健康な音環境の創造に向けた音環境の公正なあり方の検討
Project/Area Number |
26350002
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
永幡 幸司 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (50312765)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 公共空間の音環境 / 都市における静穏な地域 / 聴覚過敏 / 視覚障害者 / 音響式信号機 / 復興公営住宅 / バリアフリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,全ての人が健康に過ごすことができる健康な音環境の創造を目指し,人々が健康に生活できることを最優先とする価値規範を選び取った場合,音環境がどのようにあれば公正であるのかについて,具体的な事例研究と抽象的な議論を行き来しながら検討するものである。本年度は,具体的な事例研究として「(1)日常的にアクセスできる位置にある比較的静穏な環境に,道路交通騒音の侵入をどこまで許容するか」「(2)公共空間における音の付加のあり方」「(3)復興公営住宅の音環境の問題」の3点について研究を進めた。 (1)では,昨年度に引き続き,ダミーヘッドマイクロホンとハイビジョンカメラを用いた,音響心理実験に必要な素材の収録を行った。そして,それらの素材を編集し,予備実験を行った。 (2)では,聴覚過敏の者が感じる音環境の問題を探るため,聴覚過敏である方々から,予備的な聞き取り調査を行った。また,これまでの予備的調査で明らかになった聴覚過敏の方々にとっての問題点を論点に,視覚障害者と意見交換をする機会を持った。その中で,音響式信号機が,両者の間でコンフリクトになる大きな問題の1つであり,そのあり方を視覚障害者の立場からも,再検討する必要があることが見えてきた。 (3)では,高速道路沿いに立地する復興公営住宅において社会調査を行い,高速道路に面する棟に住んでいるものは,高速道路の音が気になると回答するものが多いだけでなく,復興公営住宅全体の評価を,高速道路に面さない棟に住んでいるものより低く評価する傾向があることがわかった。また,高速道路に面する棟に住んでいるものは,音とは直接関係ない個々の生活環境要素についても,低く評価する傾向にあることがわかった。 また,抽象的な議論の一環として,「騒音問題をめぐるABC」と題する試論を学会発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で具体的事例として取り扱っているテーマのうち(1)については,昨年度,デング熱の問題が発生したため,素材収録の段階で半年遅れており,そのままの遅れで進行している。 (2)については,協力していただける聴覚過敏の方の数がまだ少ないため,その点は少々遅れ気味と言えるかもしれないが,視覚障害者の方々と議論するのに必要な情報は最低限得られている。そして,予定より早く視覚障害者の方々と議論を始めることができたため,その意味では,少々進んでいるとも評価できると考える。 そして,当初は3つめの具体的事例は,(1)の研究が概ね片付いた段階で開始する予定であったが,(1)の進行が半年遅れたことと,復興公営住宅の問題が本研究のテーマとして最適な社会的問題であったことから,繰り上げて検討を開始したものである。このテーマに関連して,既に,学会で発表を行っているので,(3)については,順調であると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度同様に,「(1)日常的にアクセスできる位置にある比較的静穏な環境に,道路交通騒音の侵入をどこまで許容するか」「(2)公共空間における音の付加のあり方」「(3)復興公営住宅の音環境の問題」の3点について,同時進行で研究を進める。 これらのうち,(3)のテーマについては,東日本大震災への対応のみならず,今般の熊本での震災への対応でも,成果が生かされる研究であると考えられるため,(3)の研究をより優先的に進めたい。
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Causes of Carryover |
3月に出かけた2件の出張が,どちらも,他の予定と日程的に重なってしまい,期間を短縮して行かざるを得なかった。そのため,宿泊に必要な費用が減額となったため,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究計画の申請当時から発表を想定していた国内学会の1つが,例年は東京開催であるところ,次年度は地方開催となったため,当初の予定より旅費が必要となる。そこで,その充当にあてたい。
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Research Products
(8 results)