2015 Fiscal Year Research-status Report
19世紀英国における色彩論の成立・応用・伝播―官立デザイン学校を中心に
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26350007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹内 有子 大阪大学, 文学研究科, 助教 (80613984)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | デザイン教育 / 美術教育 / 色彩論 / 日英芸術文化交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、英国の色彩論を含めたデザイン教育法の波及と、日本における受容に関する調査を行った。これまで、官立デザイン学校およびサウスケンジントン・ミュージアムの関係者、クリストファー・ドレッサーのデザイン理論書が、明治期の高等教育機関の教育者たちに参照されていたことが、明らかにされてきた。これを踏まえ、日本でデザイン教育機関の設立・運営に関わった人々が参照しつつ著したデザイン技法書の記述内容と、官立デザイン学校の教育との比較及び影響関係について調査を試みた。その過程で、日本の義務教育としての図画の形成時期に遡り、普通教育に「装飾図案(デザイン)」作成法が導入されたことの意義を問い直さねばならないことが分かった。官立デザイン学校が芸術の教科を義務教育に展開させ図案の教育法を確立したことに対する、日英交流の一定の意味がここに見いだされる。さらに、先行研究では図画教育における「素描」面、とりわけ装飾模様を作成する方法「便化conventional treatment」のみに着目して、官立デザイン学校の影響を指摘していた。本研究では、同校の色彩論の教授概要を新たに追究した。この結果、同校の教義と共通する諸提言を掲げた、1900年の「第一回図画教育に関する万国会議」を通して、素描だけでなく「色彩」もまた図画教育の重点課題であったことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
官立デザイン学校本校のカリキュラムおよび色彩に関する授業に係る現地調査を行ったが、現存する同資料の同定と発見には時間がかかることが分かり、方向転換をする必要に迫られた。このため、諸外国への英国のデザイン教育法の波及のなかでも、日本における受容の把握・考察に限ることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記に関して、今後は英国内の比較的古くに設立された官立デザイン学校の地方校をいくつか候補を挙げて、カリキュラムの実態調査を行う予定である。諸外国における同校の教育の波及の動向に関しては、北米に加えて、旧英国植民地なかでもインドの学校に対象を絞る必要があることが分かったので、効率的に調査を進めるつもりである。
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Research Products
(3 results)