2014 Fiscal Year Research-status Report
ソーシャルメディアを活用した緑景観の時空間分析とデザイン支援に関する研究
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26350026
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉川 眞 大阪工業大学, 工学部, 教授 (80116128)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 一成 大阪工業大学, 工学部, 教授 (10330789)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 環境デザイン / 緑景観 / 時空間分析 / 地理空間情報技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は対象地の選定から研究をスタートさせた。関西地域における公園・緑地の年間利用者数に着目し、奈良公園エリアを対象地と定めた。奈良市への年間観光客数の70%以上である年間1,300万人の観光客が訪れ、桜や紅葉の名所となっているなど関西を代表する緑豊かな観光地である奈良公園エリアは、東大寺、興福寺、春日大社など寺社の境内地や春日山の原生林などを含んでいる。 データ収集には、ソーシャルメディアのなかでも写真コミュニティサイトを活用した。世界一の写真投稿枚数を誇り、API(Application Programming Interface)による画像の抽出が容易に行える"Flickr"と呼ばれるサイトの写真画像を用いている。写真画像の取得期間を2012年1月1日から2013年12月31日までの2年間とし、取得した写真画像から緑が撮影されているものだけを抽出し、撮影位置をGIS上に展開している。そのなかで写真画像は、いわゆる衛星都市の住宅地などよりも奈良公園のようなわが国を代表する観光地の方が圧倒的に多数投稿されていることを確認している。また、奈良公園事務所が公開している「奈良公園桜マップ」と「奈良公園紅葉マップ」も利用している。その結果、写真撮影位置は、観光スポットが密集する奈良公園西部に集中していることを明らかにした。また、写真撮影位置の分布密度を把握し、桜や紅葉の分布と重ね合わせることにより季節変化を愉しむことができる地点を見出している。 さらに、桜と紅葉の分布が確認でき投稿写真の豊富な浅茅ヶ原園地の浮御堂周辺を対象に、GISとCAD/CGの両技術による3Dモデル化と景観シュミレーションを試行している。また、次年度へ向けて先行研究で取得済みの写真データを用いて、大名庭園におけるシークエンス景観の分析を試行し、視点と対象の関係におけるいくつかの動的な基本型を見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究対象地を当初考えていた京都市内から奈良公園に変更したことにより、新たに写真データの取得を行っている。いわゆる奈良公園エリア全域を対象に、写真画像から緑が撮影されているものだけを抽出し、撮影位置をGIS上に展開している。シーン景観の分析において時間経過に着目し、とくに季節的な変動を対象として一応の結果が得られている。しかし、広範な3次元モデル化による大規模なディジタルシティの構築には、現在のところ至っていない。 なお、次年度へ向けて先行研究で取得済みの写真データを用いて、代表的な大名庭園である兼六園を対象にシークエンス景観の分析を試行し、視点と対象の関係におけるいくつかの動的な基本型を見出している。しかし、シーン景観とシークエンス景観の分析において、ともに大量の写真データ、いわゆるビッグデータを必要とするところから、現在、投稿写真を抽出する写真コミュニティサイトの拡充と新たなサイトから投稿写真を抽出するAPIなどを活用した手法について試行を繰り返している。
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Strategy for Future Research Activity |
撮影された視点位置についての測位や撮影対象の方位や仰角・俯角などの計測に当たっては、タブレット端末とその上でのアプリケーションソフトウェアを用いて簡便な手法を採用している。今後、より高い精度での樹木をはじめとする地物の確認や広大な奈良公園エリアを3次元モデル化し大規模なディジタルシティを構築するために、新たなリアル3Dモデル作成技術を導入することにしている。海外出張においてドイツの開発元を視察し、その有効性を確認した1度に5方向の写真撮影が可能なオブリーク航空カメラPDC(PentaDigiCAM)を用いて、広範なエリアの都市モデル作成を可能にしようと考えている。 オブリーク航空カメラとは、垂直写真と斜め写真を同時に撮影する航空カメラであり、垂直写真(直下視)は主に平面(道路や屋根など)のテクスチャ画像、位置標定や高精度点群の抽出を行い、斜め写真(前、後、左、右方視)は主に壁面のテクスチャ画像、垂直写真の情報補完を行っている。この技術を用いることで、樹木の正確な位置が計測できるとともに、地形と建物などの地物の3Dモデル化が進むものと期待している。現在、ドイツの開発元から技術導入し航空機への実装を最近行っているわが国の航測会社と、この技術を本研究課題で利活用するにあたって技術面を含めたあらゆる面での検討を進めているところである。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、研究対象地を当初予定していた京都市内から奈良公園エリアに変更したことにより、写真コミュニティサイトにおける投稿写真を抽出するといった写真データ取得レベルでの作業に時間を要したため、広範囲な3D都市モデルの構築に至っていない。そのため、導入を予定していたワークステーションなどの設備備品などを次年度送りとしたことなどにより次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、前年度に購入を予定していたワークステーションなどの設備備品を購入するとともに、オブリーク航空カメラPDC(PentaDigiCAM)などの新しい技術によって得られる地理空間情報の導入費用に充当することにしている。
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Research Products
(3 results)