2014 Fiscal Year Research-status Report
伝統産業の振興と地域産業活性化をテーマとした次世代型デザイン教育
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26350029
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
井上 友子 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (90330787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒巻 大樹 九州産業大学, 芸術学部, 助教 (30601372)
南 聡 九州産業大学, 芸術学部, 准教授 (30615365)
星野 浩司 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (60552205)
青木 幹太 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (70159276)
佐藤 佳代 九州産業大学, 芸術学部, 准教授 (70454907)
佐藤 慈 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (90412460)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 伝統産業の振興 / 地域産業活性化 / 商品化 / プロモーション・ヴィデオ / ドキュメンタリー / 福岡県知事指定特産伝統工芸品 / 報道 |
Outline of Annual Research Achievements |
「伝統産業の振興と地域産業活性化をテーマとした次世代型デザイン教育」のテーマに基づき、研究代表者・井上は福岡の伝統工芸品指定である「博多織」と「博多人形」のマーケット調査および新たな市場開拓を目途としたデザイン教育を課外活動に取り入れ帯商品4種類の製品化を達成し、地域企業に貢献した。また、国指定の重要無形民俗文化財「八女福島の燈籠人形」の舞台演出用「背景幕」の修復と制作を授業で実施し、その模様がテレビドキュメンタリーで放送され、新聞記事にも掲載された。分担者・青木は福岡の代表的地域産業「大川家具」を若い世代に受け入れる易くするため「若者目線のリ・デザイン」を学生教育に取り入れた。同じく分担者・佐藤(慈)は「博多織」「博多人形」を一般消費者に周知するためのプロモーション・ヴィデオとプロジェクション・マッピングを、また分担者・星野は「大川家具」をテーマとしたプロモーション・ヴィデオと「八女福島燈籠人形舞台背景幕」制作ドキュメンタリー映像を学生教育に取り入れ、地域産業振興と文化事業の伝承を広く紹介する映像作品を制作した。分担者・荒巻は宗像地域の産業「ガラス工芸品」の職人に密着したシリーズ写真作品を教育に取り入れ、佐藤(佳)は、福岡県知事指定特産伝統工芸品「博多張り子」を未就学児童に伝承する啓発活動を学生を動員して実施した。以上それぞれ独自に行なった活動は、学生のデザイン教育を軸に相互に関連し、2015年2月19日から3月4日まで2週間にわたる「天神イムズ」(福岡市中心の商業施設)での「九産大プロデュース展」開催につながった。 「九産大プロデュース展」には、テレビ局4社、新聞社4社が取材に訪れ、ニュースで報道された。会場が商業施設であることから正確な来場者数は不明だが、当該施設の担当者から「来年も是非実施してほしい」という申し入れを頂いている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「伝統産業と地域産業を学生のデザイン教育の素材として用い、実践的能力を修得させる」という本研究の目的は、着実に達成されつつあると考えている。その理由は、代表者と分担者が独自に開拓・選択した企業・自治体・工業会等と本学芸術学部学生との連携活動が、そのまま授業や課外活動の「学び」の材料としてデザイン教育の実践に活かされており、学生の考える力・行動する力・コミュニケートする力・修正および改善する力を確実に向上させているからである。授業や課外活動では、学生自身が企業・自治体・工業会等と協力しながら新たな市場開拓やデザインの見直しを行ない、地域に根付き伝承されている「モノ」や「文化」を後世に継承するために不可欠な「モノ」や「コト」として想定し、改良を行っている。そしてその結果、それぞれの連携企業・自治体・工業会等が選定した学生デザインの製品化へ結びついている。 さらに、研究代表者や分担者がそれぞれ開拓した連携関係は、研究者相互間の連携研究に発展し、相乗効果として大きな成果を得ている。 本研究の実行は、これまでの正規の授業では学習することが困難だった実学教育をデザイン領域で実施し、それを元に方法論を考案し、ひとつのモデル例を提示することで、次世代型の教育システム考案と開発につなげることが可能になると自負している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に試行し得られた成果を元に、残された2年の期間内で研究をどこまで掘り下げ発展させることができるのか、それが今後の大きな問題である。「平成26年度の研究実施計画書」①伝統文化/伝統産業 に関わる計画の遂行では、「重文」(「八女福島の燈籠人形」)にかかわる大事業をひとつひとつ達成し、「保存会」や「教育委員会」と連携作業を行う方策を進める。また「博多織」については前年度より多くの商品開発を、また「博多人形」については、商品化を可能とするデザイン案を提供することで、いずれの場合も地域振興や地域産業活性化に貢献できるものと考えている。②地域振興 に関わる計画の遂行では、工業会との連携に代表されるような地域振興でも、さらなる製品化の実現に向けて改良を続け、平成27年度のテーマに則った開発を継続する。③商品開発 に関わる計画の遂行では、平成26年度から着手している地元タクシー会社のCI計画を推進する。④広報および啓発 に関わる計画の遂行では、写真作品、デジタル・アート、およびワークショップを通じて、地域産業振興と文化事業をさらに広く紹介する。 さらには、おのおのの研究者が独自に連携する企業・自治体・工業会の新規開拓を推進し、同時に、代表者・研究者間・他の研究機関との相互研究の連携をさらに盤石なものとする。 授業や課外活動では、文化事業・商品開発・製品開発のデザイン案を提供することのみならず、企業コンセプトの再考などを視野に入れたデザイン教育を行い、学生に対しよりクオリティの高い「学び」の場を提供するための改良を続けて行く。 年度末に実施する商業地区における報告会は、多くの報道を通じて広く周知されるため、年を追う毎に高いクオリティを確保し、常に改良を続ける次世代型デザイン教育の方法論を実践で提示することを目指し研究活動を行なう。
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Causes of Carryover |
本研究実施のために学生が使用した材料費と年度末に実施した成果報告会の展示代費などの効率的な出費を行なった結果、144895円の持越し金が発生したが、参加学生延べ60名超、参加企業50社ほどの規模の活動が実現し、取材した報道機関の総数からも大学が中心となった地域産業の振興活動としては大きな成功を収めたといえる。前年度の持越し金は今年度の活動のさらなる洗練をめざし、クオリティの高い「学び」の場を提供するための準備や計画遂行に経費を使用する予定である。本研究は7人の教員がそれぞれの担当の活動を個々に行ない、リンクさせ、年度毎の成果報告の際にひとつにまとめあげる方式を採用しているため、それぞれが効率よく経費を使用することに努めている。本研究は、昨今注目を浴びつつあるソーシャルデザイン教育の先駆的実例として次世代のデザイン教育の重要な局面を予期しており、そのためにもより多くの経費を必要としている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
代表者・井上は、全体の総括と「博多織および雑貨」3社、「八女福島燈籠人形舞台背景幕修復制作」(重文)、「博多人形」「タクシー会社CI計画」「ガラス工芸」各1社、「伝統産業啓発活動」のプロモートを担当する。分担者・青木は、「大川家具および大川工業組合」18社、宗像地域おこし10社、「博多雑貨」「タクシーCI計画」(井上と共同)各1社などを担当する。佐藤(慈)はプロジェクション・マッピング、アニメーション、モーション・インフォグラフィックス、CG/実写合成などを用いた「博多人形」および「博多織」のプロモートを担当する。星野浩司は「八女福島燈籠人形舞台背景幕修復制作」「大川家具製作」ドキュメンタリー制作などを継続する。佐藤(佳)は、未就学児童を対象に、テキスタイル素材の地域伝統産業のワークショップを担当する。荒巻大樹は、宗像地域の伝統的地域産業の職人を記録し、シリーズ作品として製作する。
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