2014 Fiscal Year Research-status Report
介護事業所と地域の「役割相乗型連携」による高齢者の地域居住に関する研究
Project/Area Number |
26350045
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
立松 麻衣子 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (60389244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨永 美穂子 長崎県立大学, 看護栄養学部, 准教授 (50304382)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高齢者 / 地域居住 / 介護事業所 / 地域 / jコミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高齢化する地域のなかで高齢者の地域居住を維持するためには、コミュニティを再構成する必要があり、介護事業所は地域のパートナ―になり得ると考えている。そこで、介護事業所と地域の「役割相乗型連携」が、コミュニティづくりの1つの方法になり、それが高齢者の地域居住を可能にすることを明らかにする。平成26年度は、(1)施設高齢者の地域居住、(2)地域高齢者(自立)の地域居住、(3)地域高齢者(要介護)の地域居住、について以下の取組と検討を行った (1)施設高齢者を一時帰宅させる実践を行った。実践例から、①施設高齢者にも地域の居場所をつくることができる、②帰宅の楽しみや目標が生活意欲を向上させ、施設生活が変化する、③認知症高齢者が穏やかな気持ちや生活記憶を取り戻すことができる、ことを確認できた。つまり、施設に入所しても、生活をあきらめさせないこと、地域や家族との関係を切らないことの重要性が示唆された。(2)地域高齢者(自立)の健康状態への関心について、アンケート調査で把握した。分析結果から、特に女性は骨量・骨密度や血流への関心が高く、健康増進の取組(歩数計測や食生活アドバイス等)への参加意欲も高いことがわかった。また、美味しそう、健康に良さそうという感覚が食行動に与える影響も伺えた。(3)地域高齢者(要介護)の食を保障するための具体的方法を把握するために、デンマーク、オランダの食サービスの実態把握を行った。また、地域高齢者(要介護)の地域居住を支える家族介護者に着眼し、家族介護者自身の健康や家族生活、社会的生活を守るために介護事業所がすべきことを検討した。 平成26年度の研究から、介護事業所は地域高齢者(自立、要介護)や施設高齢者の地域居住を支えることができ、今後、介護事業所が地域とどのように向き合うか、地域の理解・協力をどのように得るかが鍵になると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、介護事業所と地域の「役割相乗型連携」が、コミュニティづくりの1つの方法になり、それが高齢者の地域居住を可能にすることを明らかにしようとしている。助成期間中には、(1)施設高齢者の地域居住をめざした実践および調査、(2)地域高齢者(自立)の地域居住を維持するための実践および調査、(3)地域高齢者(要介護)の地域居住を維持するための調査、を行う計画をしている。 平成26年度は、(1)施設高齢者の一時帰宅の実践と施設高齢者への効果の把握、(2)地域高齢者の食生活・栄養状態の実態把握調査(平成27年度実施予定)のための予備調査の実施と検討、(3)家族介護者の生活を守る在宅サービスのあり方の検討、を行った。 (1)施設高齢者の一時帰宅の実践から、「施設と家族の関係性」「高齢者が住んでいた地域と、施設がある地域の相違」「帰る場所の居住環境整備」など様々な課題を抽出することができた。また、施設高齢者と家族や地域住民との「共食の機会」が非常に大切だということもわかってきた。施設高齢者の地域居住に向けて引き続き検討を重ねる。(2)地域高齢者(自立)の健康状態への関心を把握した調査結果をもとにして、平成27年度には、食生活・栄養状態の実態把握調査を行う。地域高齢者(自立)が自宅で長く生活ができるようなサポートを検討していく。(3)在宅サービス関連の調査を重ねて、地域高齢者(要介護)や家族介護者の地域生活を守る方策について引き続き検討を行う。 以上、平成26年度は計画通りに遂行し、さらに平成27年度以降に続く研究の検討課題が抽出できたことから、「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
施設改革と医療改革に併行して、各地域で地域包括ケアシステムの構築がすすめられるようになってきた。しかし、平成26年度の研究を遂行するなかで、人は地域のなかにある他者との関係性のなかで生活をしており、その生活をサポートすることが非常に重要だということがわかってきた。つまり、地域で適切な医療や介護のサービスが受けられるということだけでは足りない。地域には、自立した地域高齢者であっても、介護が必要な地域高齢者であっても、施設高齢者であっても、仲間と出会い、楽しく過ごせる「居場所」が必要だということがわかった。高齢者の地域居住のためには、地域高齢者(自立、要介護)に対しては、居場所での気楽な相談を支援につなぐことも必要になってくる。施設高齢者に対しては、昔暮らしていた地域に帰る場所をつくるような工夫も必要になってくる。 一方、平成26年度の研究を遂行するなかで、高齢者の地域居住のためには、介護事業所が地域と向き合うためにどう変革できるかが鍵ではないかと考えるようになった。そして、介護事業所と地域の「役割相乗型連携」は、「地域とともにある介護事業所」「介護事業所の地域融合」のような関係性を創り出すのではないかと考えるようになった。 平成27年度は、平成26年度に得た知見を念頭におきつつ進めていく。(1)施設高齢者の地域居住、(2)地域高齢者(自立)の地域居住、(3)地域高齢者(要介護)の地域居住、のために介護事業所と地域が適切に役割を分担して連携をする方策を追究しながら、介護事業所と地域の機能を融合させた「居場所」の可能性についても検討していきたい。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、(1)施設高齢者の地域居住、(2)地域高齢者(自立)の地域居住、(3)地域高齢者(要介護)の地域居住、について以下の取組と検討を行った。 そのなかでも(2)地域高齢者(自立)の地域居住については、地域高齢者(自立)の健康状態への関心について。アンケート調査から把握した。この調査は、平成27年度に実施をする計画をしている食生活・栄養調査の準備調査の意味合いも持たせているものである。 この調査を進める時に、手持ちの物品を活用して調査の準備・実施をしたり、アルバイトを雇用せずにデータ入力をしたりしたので、計画よりも少ない額で調査を実施することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度には地域高齢者(自立)の食生活・栄養状態の実態把握調査をする計画をしている。調査方法や調査対象者数によっては、調査準備や調査実施、調査データの入力・分析等の一連の活動に、計画以上の消耗品費や印刷費、計測機器費、謝金等が必要になることが予測できる。 また平成27年度には、平成26年度の研究遂行で得られた新たな知見があり、それを念頭に置いて発展的に進めたい研究もある。 平成26年度に使わなかった助成金は、適切な研究計画によって平成27年度の研究遂行のために活用していく。
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[Presentation] 高齢者のくらしと食2014
Author(s)
立松麻衣子
Organizer
日本家政学会 第66回大会 公開講演会
Place of Presentation
北九州国際会議場
Year and Date
2014-05-24 – 2014-05-24
Invited