2015 Fiscal Year Research-status Report
介護事業所と地域の「役割相乗型連携」による高齢者の地域居住に関する研究
Project/Area Number |
26350045
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
立松 麻衣子 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (60389244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨永 美穂子 長崎県立大学, 看護栄養学部, 准教授 (50304382)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高齢者 / 地域居住 / 介護事業所 / 地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高齢者が地域居住を維持するために介護事業所が地域のパートナーになり得ると考えている。そこで、介護事業所と地域の「役割相乗型連携」が高齢者の地域居住を可能にすることを明らかにする。平成27年度は(1)地域高齢者(自立)、(2)地域高齢者(要介護)、(3)施設高齢者、の地域居住について以下の取組と検討を行った。 (1)地域高齢者(自立)については、管理栄養士による料理教室3回への参加者63名に対して健康への関心をアンケート調査で把握した。分析結果からは、健康診断を受けたい(90.9%)、健康グッツを使用したい(73.9%)など、健康増進への関心が高い。さらに、受けたい健康診断項目は、内臓脂肪、筋肉量、骨量・骨密度、バランス能力が多く、使用したい健康グッツは体組成計と活動量計が多い。その他、アンケート結果から、地域高齢者(自立)に対する健康アドバイスを行う有効性が示唆され、平成28年度には運動・食生活教室(仮称)の開催と健康介入を行い、その効果を検証することにした。(2)地域高齢者(要介護)については、心身の低下による社会的行動と食行動の変化を分析した。そして、自立生活から在宅要介護生活、施設生活に至る移行のなかで、高齢者の「生活の連続性」を構築するためのショートステイサービスの役割をまとめた。(3)施設高齢者については、一時帰宅の実践を継続した(計43例)。そして、高齢者や家族への効果や中断事由、継続運用の課題を検証しながら、介護事業所が施設高齢者の地域居住を目指して担うべき役割について検討を重ねた。 平成27年度の研究では、高齢者の地域居住を支えるために、介護事業所が地域とどう向き合うかという課題に向けて進むことができた。一方で、高齢者の地域居住に向けて地域が担える役割については検討が浅く、平成28年度はそれも含めて追究し、最終年度のまとめをしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、介護事業所と地域の「役割相乗型連携」が、コミュニティづくりの1つの方法になり、それが高齢者の地域居住を可能にすることを明らかにしようとしている。助成期間中には、(1)地域高齢者(自立)の地域居住を維持するための実践および調査、(2)地域高齢者(要介護)の地域居住を維持するための調査、(3)施設高齢者の地域居住を目指した実践および調査、を行う計画をしている。 平成27年度は、(1)地域高齢者の健康状態への関心を把握する調査と、その結果分析から次年度に実施する取組の検討、(2)地域高齢者(要介護)の生活の連続性を維持するために在宅サービスが担うべき役割の検討、(3)施設高齢者の一時帰宅による高齢者や家族への効果および運用課題の検討、を行った。特に、(1)地域高齢者(自立)の地域居住を支えることは、介護事業所以外の地域資源による介入の検討を進めることができた。また、自然災害発生等の非日常事態に陥ったときに、(2)地域高齢者(要介護)の生活を支える介護事業所の役割についても課題を見付けることができた。 これらをうけて平成28年度には、(1)地域高齢者(自立)に対して専門家による健康介入を行う。(2)地域高齢者(要介護)の生活の連続性を維持するための方策についても引き続き検討を行う。また、非日常の支援方策についても検討したい。(3)施設高齢者の一時帰宅の実践からは継続運用のための道筋が見えてきたため、引き続き実施・検討を行い、まとめていく。 以上、平成27年度は計画通りに遂行し、さらに以降に続く検討課題が抽出できたことから、「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
地域包括ケアシステムの構築がすすめられるなか、「介護事業所と地域の役割相乗型連携」は、「地域とともにある介護事業所」「介護事業所の地域融合」のような関係性を創り出すと考えている。そのためには、介護事業所が地域と向き合うためにどう変革できるかが鍵だと考えている。 現在までに、介護事業所が地域高齢者(自立・要介護)や施設高齢者の地域居住をどのように支えることができるかということを、直接介入を想定して検討を重ねてきた。一方で、研究を遂行するなかで、介護事業所が直接介入するだけではなく、地域高齢者(自立)を含めた地域が、在宅要介護高齢者や家族介護者、見守りを必要とする者を支える体制づくりに介護事業所が介入できる可能性が見えてきた。つまり、日常にも非日常にも機能する動作性と持続性をもつケアコミュニティづくりに介護事業所が一役を担う可能性である。これが、介護事業所の間接介入による「介護事業所と地域の役割相乗型連携」による高齢者の地域居住の実現である。 平成28年度は、これらの知見を念頭に置きつつ、持続可能で汎用性のある「介護事業所と地域の役割相乗型連携」を追究していき、研究の総括をしたい。
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Causes of Carryover |
地域高齢者(自立)へのアンケート調査や、介護事業所がどのように地域と向き合えるかを検討するための視察調査の出張時に、効率的な調査計画によって宿泊日数を減らしたり、LCCを利用したりした。また、アンケート調査の実施・分析にアルバイトの雇用をせずに進めた。これらにより、平成27年度は計画よりも少ない額で研究遂行を実施できた。それらの余剰分は、本研究を発展させるために有効に使用することができたが、次年度使用額も生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には、地域高齢者(自立)の運動・食生活介入を予定している。介入の内容によっては、それに伴う支出の増大が予想される。つまり、研究代表者および共同研究者の専門外である分野については専門家を雇用することによって、研究としての意味が大きく、対象者に対して効果的な介入を行うことができると考えている。また、平成27年度の研究遂行で得られた新たな知見があり、それを念頭に置いて発展的に進めたい研究がある。さらに、助成期間の最終年度として、研究成果を総括し公表していく必要がある。 平成27年度助成金の余剰分は、適切な研究計画によって、平成28年度の研究遂行に活かす。
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