2014 Fiscal Year Research-status Report
戦後における「へき地教育」と小学校家庭科の展開:「鹿内瑞子旧蔵資料」をもとに
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26350049
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
八幡 彩子(谷口彩子) 熊本大学, 教育学部, 准教授 (90259763)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 小学校家庭科 / 戦後 / 鹿内瑞子 / 家政学原論 / 家政学史 / へき地教育 / 昭和20~30年代 / 鹿内瑞子旧蔵資料 |
Outline of Annual Research Achievements |
「鹿内瑞子旧蔵資料」には、小学校家庭科の検定済教科書が刊行される(昭和35年)以前の昭和20~30年代に、全国各地の小学校家庭科研究会が刊行した副読本等の教材資料が多数含まれている。これらの資料は、小学校家庭科の教科書が刊行されるまでに、「へき地」を含む全国各地の地域的特性をふまえて、どのような教材を通して家庭科の学習・指導が行われていたのかを知る貴重な資料である。本年度の研究では「鹿内瑞子旧蔵資料」に含まれる昭和27~35年に全国各地で刊行された小学校家庭科の教材資料の検討を通して、小学校家庭科ではどのような学習指導が行われていたのかを検討した。 おもな結果は以下の通りである。 (1)分析対象とした資料は、実際に小学校家庭科の学習指導に携わる現場の教員らによって組織された家庭科研究会による刊行が大半を占めた。検定済教科書の刊行以前における昭和20年代から昭和35年頃までには、小学校家庭科の学習指導は、現場の教師によって教材研究等が進められていたことがわかった。 (2)学習指導要領と教材資料との対応について検討した結果、学習指導要領に指定された題材や学年配置とは異なる学習指導が行われていたことがわかった。このことは、学習指導要領に準拠しながらも、小学校家庭科の実際の学習指導に携わる立場から、よりよい教材や指導方法が模索されていたためと考える。 (3)各地で刊行された多くの教材資料において、易しいものから難易度の高いものへと実習題材等を配置するなど、学習内容や教材の配置には発達段階に対応した系統性が確認できる。一方、問題解決的な学習を紹介する資料等も散見され、各地でさまざまな学習指導が試みられたことが窺われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の遂行、研究発表については、順調に進捗している。ただし、論文にまとめて『日本家政学会誌』に投稿するまでに至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究に関する資料収集が終わっていないので、早い段階で資料収集を行う。また、研究発表の機会にはできるだけ積極的に発表の機会を設ける。とりわけ今年度は、『日本家政学会誌』あるいは『家庭科教育学会誌』への投稿準備を確実に進めていきたい。そのための時間確保に努めたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、昭和20~30年代の小学校家庭科や家政学の歴史に関する文献購入を予定していたが、必要としていた文献は古書(新刊本ではない)のため、絶版などの理由により、購入に至らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昭和20~30年代の関連参考文献(古書)の購入にあたっては、引き続き、インターネットなどを通して、必要な文献の購入方法を検討し、速やかに入手できるように努めたい。また、必要な文献の入手が困難な場合は、著作権等の条件の許す限り、複写による入手を進めるなど、対策を検討したい。
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