2014 Fiscal Year Research-status Report
光反射モデルに基づいた黒漆の質感の定量化と3DCG再現
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26350057
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
李 元貞 畿央大学, 健康科学部, 講師 (50388906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 法博 長野大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90387415)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 黒漆 / 光学的特性 / 視覚効果 / 光反射モデル / 質感 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究計画:「漆」と他の合成樹脂塗料から様々な塗膜面や形状の試料を作成し、その光学的特性を分析する。その分析結果に基づいて「漆」の光反射モデルを試作し、そのモデルパラメータ計測用の光反射計測系を試作する。 1.試料作成(佐藤善代松漆店に依頼):物体の陰影や光沢の空間分布(物体表面での広がり)は、物体の形状にも依存するため、棗器をベース試料として作成した。その表面に黒漆および種類の異なる塗膜面として合成樹脂塗料(カシュ―、ウレタン)、合わせて3種を用い、工程による表面特性を明らかにするため、以下の工程を行った。(1)一般的な塗漆工程(刷毛による工程):①木地調整-②布着せ後、ヘラで下地漆を施す下地工程-③刷毛を用いた塗漆工程(刷毛を用いて漆、カシュ―、ウレタンを数回繰り返し塗り、それぞれの膜層を形成する)-④、(2)エアースプレーによる塗布工程:①木地調整-②布着せ③エアースプレーによる塗布工程-④ ④光沢のあるロイロ仕上げとして、塗面を炭で平滑に研磨した後、「摺り漆-磨き」を繰り返すロイロ磨きを行う。 2. 試料の光学特性分析:④磨き工程の前に6つの試料(漆、カシュ―、ウレタンの刷毛塗り、エアースプレー塗布)を用い、試料表面の光学特性分析を行った。また、本研究の試料と比較のため、市販の棗器(光沢のあるカシュ―)の光学特性も合わせて検証した。すなわち、試作中の画像計測ベースの光反射計測系で、椀状、自由形状曲面の試料の光反射特性とともに、物体表面の色変化、陰影、光沢の空間分布(分布形状)の角度依存性を調べた。 3. 漆の光反射モデル構築と光反射計測系の試作中:分析した棗器の光学特性に基づいて、光反射のプロセスを光反射モデルで記述を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料作成がなかなか決まらなかったものの次の手順からは計画通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究計画:1. 視覚実験による質感の評価と光反射モデルの改良:京都、輪島、金沢を中心に活動している漆職人を被験者とし、各種漆膜に対する「深み感」「むっくり感」「あたたかみ感」「高級感」「黒み感」「つや感」に注目し質感評価の尺度として用い、他の合成樹脂塗料などと比較しながら視覚実験により視感評価を行う。視感評価の結果に基づいて光反射モデルの感性モデルパラメータの組み込み方法を改善する。特に漆膜に対する上記の質感評価尺度を感性情報として光反射モデルに組み込む。 2. 漆の3DCG再現(田中):本研究で構築した漆の光反射モデルから漆表面の質感を再現できるCGシステムを開発する。このシステムは光反射モデルを用いて、計測した漆面等の質感を3D CG 再現し、再現画像と計測した漆面の色度座標を色彩輝度計で計測し、その色差を定量的に調べ、高精度に物体が画像再現できているかどうかを調べる。
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Causes of Carryover |
1.試料作成が遅れたことから研究打ち合わせがまだ予定通りに行われなかった。 2.3Dプリンター用の部品を研究の進行状況に合わせて購入したい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.被験者実験による光反射モデルを決めるまで予定していた研究打ち合わせを行う。 2.3Dプリンター用の必要な部品を揃える。
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