2015 Fiscal Year Research-status Report
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26350069
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
乾 滋 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (10356496)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 立体裁断 / 仮想化 / シミュレーション / 型紙 / 仮縫い / 布モデル / 手のモデル / ダミーモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はシステムにダミーのモデルを加えた。ダミーのモデルと手のモデルとの間は、衝突の判定・反応が必要である。システム全体はリアルタイムで動作することが必要であり、高速な処理が求められる。そのために距離関数を用いた。距離関数とは物体の表面からの距離の場であるが、物体を含む空間に格子点を設定し、各格子点のダミー表面からの距離を計算して求める。格子点以外の点については、格子点での距離を補間して求める。距離関数を用いると通常の衝突判定の処理に比べ非常に高速な処理が可能となる。 また、例えばスカートの腰部に布モデルを地の目線に沿って固定する。腰部は上に行くに従って絞られた形となるため、上の部分は布が浮いた状態となる。この状態で手のモデルの指でこの部分をつまみ、ダーツを取ることを実現した。また、つまんだ部分をマークすることによって、布モデルを開いた時に型紙の形状を得ることができる。 以上の2点を実現したことによって、立体裁断法の基本的な構成要素であるダーツの作成が可能となった。現実の立体裁断法では型紙の大きさに近い大きさに布を切り取り、これをダミーなどの表面に当てて型紙の形状を作成する。このことは布モデルをダミー表面に写像することで実現できていた。この布モデルの写像と指のモデルによる布モデルの操作とを組み合わせることによってダーツ作成の基礎を確立することができた。 立体裁断法の基本的な要素の構築にとって、今年度までの研究の積み重ねは非常に重要であり、様々な課題があるものの実用に一歩近づいた。既製服では個々人の体型に合う衣服を求めることが困難である場合が多く、オーダーメードが最善である。しかし現実の世界ではオーダーメードには多くの時間と費用を要するため簡単に利用することができない。仮想的な立体裁断法が実現できれば、設計効率が飛躍的に向上することで、より広く利用されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究目的に対する本年度までの達成度は概ね計画に沿って実施されていると判断している.本研究の目的は立体裁断の仮想化のために必要な基本的な要素を確立することにある.このためのシステムを成立させるためには,立体裁断の基本的な要素のモデル化が必要となる.立体裁断は,ダミーや人体の形状,型紙の形状を作成するための布,それを操作するための手などから構成され,さらに布を仮止めするためのピンや切り取るためのはさみなどが加わる.昨年度までに布を力学的に定式化したモデルを設定し,このモデルに変位が与えられた場合の変形をリアルタイムで計算する方法を定めた.さらに他の物体との衝突が発生したときのための処理も追加した. 手については,手や指の動きを動的に計測することのできるセンサを用いて,現実世界での手や指の動きを捉え,その動きに応じてリアルタイムで手のモデルを動作させることができた.手のモデルについても他の物体,ここでは布のモデルであるが,との衝突の処理を追加することで,相互作用が可能となっている. 今年度はさらに立体裁断を行う際の土台となるダミーのモデル化を行った.ダミーモデルは現実世界のダミーの形状の計測値に基づいて作成した.さらにほかの物体モデルとの相互作用を設定したが,ダミーモデルは静止しているので,より高速な処理方法を採用することができた. また,布モデルをダミーモデル表面上に写像することでピン留めを代替している.また,手のモデルでの布モデルの切り取りを仮想的に行う方法を作成するとともに,写像された布モデルの境界線を設定することで,布モデルの切り取りを実現しようとしている. 以上のように今年度までに立体裁断の仮想化のための基本的な要素モデル化に一応成功している.来年度以降は,これらの要素の連携をより強めることによって,システムの実現に近づけてゆく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策については,2つの要素があると考えている. 第1は不足している要素の開発である。センサで捉えた手や指の動きをモデルに反映させている。センサの値の急激な変化が見られる場合があり,これに対応するためにフィルタ等のさらなる工夫が必要である.また,布モデルの操作はリアルタイム性が求められるため,布モデルには高速な計算を可能とするための簡単なモデルが用いられている.しかし,一方で形状を正確に求めるためには計算に時間を要する詳細な布モデルを用いる必要がある.布モデルは相反する性能を満たす必要がある.このため手で操作するときには簡単なモデル,操作が終了後形状を求める際には詳細なモデルというようにモデルの切り替えを実現する必要がある.また,型紙を作成する際に細かな調整が必要になる場合がある.この場合も,すでに形状が確定している部分は固定し,それ以外の部分を詳細なモデルに切り替えてリアルタイム性を保つことも考えられる. 第2は専門家によるシステムの評価である.これまでにも経験者に評価を依頼してきたが,今後進めるうえで専門家の意見を聞くことが重要になると考えられる.型紙作成の過程での操作について,不足している機能性能についての意見を聴取することは必要である.また,型紙作成の過程だけでなく,作成した型紙からパーツを作成し,これらを縫合して衣服の試作を行い,不具合を見出し型紙形状を修正する,という一連のサイクルについても観察が必要である.さらに本システムでのこのサイクルの実行についての評価も同時に必要となる. 上述の2要素を組み合わせることによる改良のためのサイクルを回してゆくことも必要である.専門家の意見に基づいてシステムの改良を行い,改良されたシステムに対する評価を行い,さらに改良を行うというサイクルを回すことによって.システムを構築してゆくことができると考えている.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、購入予定の機器を購入することができなかったことによる。本研究では仮想空間内で布モデルを、手のモデルにより操作するものである。現状では仮想空間内だけでの操作になっているが、現実世界との相互作用も必要となってくる。そのためには拡張現実のための機器が必要となる。拡張現実とは現実の世界に仮想的な物体等を重ね合わせることによって、現実の世界を拡張した体験を得るための技術である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は、H28年度請求額と合わせて上述の拡張現実に関わる機器を購入する予定である。この機器はインターフェースとなるグラス、制御用のコンピュータなどから構成される。コンピュータには高精細のディスプレイや高速処理のためのボードなどを要する。 また、これまでの研究成果の発表と情報収集のための機会として、TBIS 2016, FLINS 2016などの国際研究集会への参加を予定している。今年度分の予算はこれらの研究集会への参加費や、論文掲載のための費用として支出することを予定している。
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[Presentation] 仮想的布操作とその応用2015
Author(s)
乾 滋, 山本航, 堀場 洋輔
Organizer
第17回日本感性工学会
Place of Presentation
文化学園大学新都心キャンパス (東京都渋谷区)
Year and Date
2015-09-01 – 2015-09-03
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[Presentation] マッピングによる型紙作成手法2015
Author(s)
乾滋、召田優子、堀場洋輔、乾眞理子
Organizer
日本繊維製品消費科学会 2015年 年次大会
Place of Presentation
信州大学繊維学部, 上田, 長野
Year and Date
2015-06-27 – 2015-06-28
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