2015 Fiscal Year Research-status Report
地域居住の継続に必要な「住まい」と「生活支援」に関する研究
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26350074
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
村田 順子 和歌山大学, 教育学部, 教授 (90331735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 智子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (20197453)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生活支援ハウス / 高齢者 / 居住の継続 / 生活支援 / 地域ケア / 地域居住 |
Outline of Annual Research Achievements |
生活支援ハウス(以下、ハウス)の現状と課題を把握するために、7ヶ所のハウスへの訪問調査を実施した。調査対象は、全国でも最もハウスの設置数が多い自治体の一つであるW県T市の3ヶ所、地域性を比較するため同じW県の県庁所在地W市の2ヶ所、大都市部であるO市に設置されている2ヶ所のハウスである。 W市とO市の4ヶ所はすべて社会福祉法人運営だが、山村地域のT市は社会福祉協議会の運営が3ヶ所中2ヶ所である。W市、O市では、同法人運営の特養やグループホームなど居住系施設が併設している場合もあるが、T市では居住系施設併設はなかった。 ハウスの入居者の平均年齢は80歳以上が殆どで、W市、T市は要介護認定を受けている入居者が多数を占めているが、O市では自立や要支援の入居者が約半数である。しかし、どのハウスも入居年数の経過により身体状況の低下がみられ、日常生活に支援が必要な入居者が増加し職員の負担が大きくなっている。提供される支援はハウスで異なるが、夜間の支援(排泄介助など)が必要になると転居となるのが一般的である。利用料は応能負担だが、負担なしの割合はT市では100%、W市やO市でも3~7割弱と低所得者の入居が目立つ。そのため、転居の際、費用負担の問題で転居先を見つけるのが困難な人が多いのが課題である。 都市部のO市と山村地域のT市における地域の高齢者介護施設および高齢者向け住宅の整備状況の全体像を把握し、地域の中でのハウスの役割について考察したところ、高齢者人口に対する高齢者施設・住宅定員の割合は、T市とO市はともに6%と全国よりも高い。T市は、自治体主導の施設・住宅の整備が主であり、ハウスがその一旦を担っている。O市は民間による高齢者住宅の整備が進んでおり、ハウスはその選択肢の一つである。費用負担が軽いため、入居者を経済力で選別することなく受け入れることが可能となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度の当初計画では、生活支援ハウスを7ヶ所程度訪問する予定としていたが、計画通り7ヶ所の生活支援ハウスを訪問し、担当者から現状と課題を伺うことができた。昨年度実施したアンケート調査を基に訪問先を検討した結果、当初想定していた場所よりも大学所在地近辺で調査を実施することが出来たため、旅費もかなり節約することが出来た。 また、高齢者の居場所づくりとして奈良県T町で活動している「地域の居間」も継続調査を実施した。今年度は、活動の場に数回参加し、ボランティアのスタッフとの信頼関係を築いた。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度に引き続き、O市およびW市、T市の生活支援ハウスへの調査を実施するとともに、入居者や地域の高齢者の生活についての聞き取り調査も実施する予定である。 また、これまでの調査より、生活支援ハウスは高齢者の地域内居住の継続には一定の役割を果たしているが、夜間の支援(排泄介助など)が必要になった際には退居しなければならない。その目安の要介護度が要介護2であることから、特養への入居が困難な場合が多く(特養への入居は原則要介護3以上であり、生活支援ハウスに入居しているため緊急性があると判断されない)、また生活支援ハウスには低所得の入居者が多く、費用負担の面からグループホームへの入居も困難となっている。特に、人口過疎地域では民間による高齢者向けサービス付き住宅の建設も進んでおらず、転居先の選択肢が少なく、困難を極めている。在宅サービスの夜間対応型訪問介護サービス、定期巡回随時対応型訪問介護・看護など、重度の要介護状態になっても自宅に住み続けるためのサービスの整備は都市部も含めほとんど進んでいない。転居が前提となっている生活支援ハウスの今後のあり方、将来的にも民活による高齢者住宅建設や、在宅サービスの整備が望めない過疎地域における高齢者居住のあり方を早急に検討する必要がある。2016年度は、この点も視野にいれ、海外の事例も参考にしながら研究を進めていくつもりである。 また、上記のような事情を鑑み、地域の互助的関係の構築が、住民の地域内居住の継続にどのような役割を果たすことができるのか、継続して検討していく。地域の高齢者をゆるやかにつなぐ場のあり方として、「地域の居間」の活動について、参与観察による調査を継続する。
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Causes of Carryover |
2015年度は、計画通りに前年度に実施したアンケート調査結果を基に訪問調査を実施した。しかし、アンケート調査結果および訪問調査を進める中で、現状の生活支援ハウスは高齢者の地域居住継続に一定の役割を果たしているものの終の住処にはなり得ず、他の施設への転居が必要となり、その際に高齢者およびその家族、また職員も大変な困難に直面していることが分かった。解決策を導きだすためには、他のアプローチを検討する必要があると考えた。 地域包括支援システムは、高齢者住宅および夜間型訪問介護等が整備可能な都市部が対象であり、散村集落では異なる居住支援システムが必要と考えられる。生活支援ハウスの調査を継続するとともに、新たに研究対象を定め、どのような高齢者居住のシステムが構築されていればよいのか、地域による事情を勘案しながら検討していきたい。その分の費用を捻出するため、訪問調査の旅費を抑えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度は、調査対象地域への滞在しながらの調査を実施したいと考えている。また、生活支援ハウスが直面している課題への解決策の検討に向けて、国内での事例検討とともに散村を計画的に形成してきたドイツにおける継続的な地域内高齢者居住の対策を調査する計画である。ドイツは、日本と同様に介護保険制度を制定し、民間が高齢者福祉に重要な役割を果たしているという類似点もある。残額分は、資料収集に係る費用に当てる計画である。
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Research Products
(4 results)