2014 Fiscal Year Research-status Report
嚥下状態にある液体食品の粘度を予測する簡易測定器による迅速評価システムの構築
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26350087
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 雅典 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70282994)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 食品 / 嚥下 / 非ニュートン粘性 |
Outline of Annual Research Achievements |
修正溝型流路測定器の考案と試作 嚥下プロセスにおける特徴的な要素である咽頭部での挙動に着目し,測定器の概念となる系を思案した.嚥下プロセスにおける咽頭での食塊の流れの経路を身体の後方から観ると,口腔から送られた食塊は,中咽頭にある喉頭蓋の両側を通って食道へ達するという経路をとる.口腔から食道までをひとつの流路とみなすならば喉頭蓋は流れに対する障害物であり,食塊は障害物を周り込んで流れると考えられる.このような流れは,流路に障害物を設置する系において模擬できる.溝型流路に障害物としての円柱を置くことで,円柱周りの流れをつくり,それを,喉頭蓋を含む咽頭での流れの模型とした.この模型を組み入れた実験装置を修正溝型流路測定器として試作した.人の咽頭における喉頭蓋の平均的な寸法を参考にして流路の幅と円柱の直径を決定した.測定器における液の流れ,特に円柱周りの流れを観察するために,適当な照明下でビデオカメラを用いて流れ模様を記録するシステムを構築した.
ニュートン性試験液での解析 試験液として,ニュートン粘性を示すグリセリンを,温度すなわち粘度を変えて用いて,流路を流れる液の断面を円柱の上方からビデオカメラで連続的に撮影した.分割した時系列画像に基づき液先端の速度を円柱周りの位置の関数として解析した.解析は幾何学的条件としての円柱の取付位置を変えて行った.解析において,液の流れに及ぼす円柱の影響は,液が円柱の後縁に達したあたりで最大になることを見出した.この点での流れ挙動は液粘度や幾何学的条件にかかわらずStokesの抵抗則により記述できることを確かめた.概算された剪断速度は1 s-1のオーダーであり,嚥下状態での剪断速度の条件(10-100 s-1)には至らなかった.このことについては,流路の傾斜を大きくして液流速を増加させるという対応で実験を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね計画どおり進めることができた.計画していた,流路を傾斜させることにより操作条件としての液流速を変えた場合の検討が26年度中に十分行えなかったが,現在実験を進めている途中である.
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Strategy for Future Research Activity |
非ニュートン性試験液での解析 非ニュートン性試験液について実験的解析を行う.非ニュートン性液の粘性は,べき乗側モデルを用いて表し,モデルパラメータである流動性指数と粘性係数を系統的に変えるべく,複数の溶質を,濃度を変えて混合した溶液を調製する.溶質にはグアーガム,キサンタンガム,水飴などを用いる.
修正溝型流路測定器内液流れを記述する実験的関係の導出 修正溝型流路内の液の流れを記述する一般的な関係の導出を試みる.液流れにおける剪断速度を定義し,力学的相似条件を規定する無次元数である摩擦係数とレイノルズ数により,液物性および幾何学的条件,操作条件を変えて得られた実験データを整理する.併せて,ニュートン性と非ニュートン性の相違についても検討を加える.これらの結果に基づき粘性測定器としての合理性を流れの特性の観点から考察するとともに,測定器内の試料に形成する剪断速度のレベルを定量的に明らかにする.
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