2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26350090
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
香西 みどり お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (10262354)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 野菜 / ゲル / 物性 / ゲル化剤 / 加熱調理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、はじめに野菜ゲルの調製条件の検討を行った。種々の野菜の中から比較的安定で扱いやすいニンジンを野菜試料として調味液中で加熱できる野菜ゲルを調製した。ジェランガムゲル1~2%、乳酸カルシウム0.6%、ニンジンピューレ50%、水、ニンジン搾り液からつくる野菜ゲルの調製条件に加えて、皮のままピューレを調製しても問題ないこと、水、搾り液の代替としてニンジンピューレそのものの割合を70%まで増加させることで廃棄率の少ない、調製しやすい野菜ゲルができ、操作性、調理性、嗜好性に問題ないことを明らかにした。次に調味液として食塩水溶液、しょうゆ水溶液、食酢水溶液で野菜ゲルを加熱した際も、煮崩れや嗜好性の低下などはみられず、調味液中で加熱できる野菜ゲルであることを確認した。調味液の濃度については食塩濃度が0.5%のときは煮崩れがみられるが、1%以上になると煮崩れが抑制されることから調理する際には食塩濃度が1%以上であることが要件であることがわかった。野菜ゲルとしてニンジン以外にもダイコン、ジャガイモを用いたゲルを調製した。これらの野菜ゲルの実際の調理品への応用として、シチュー、煮物等を調製したところ、煮崩れがみられず、調味料成分がしみこんだ嗜好的に好ましい加熱野菜ゲルが得られらた。ニンジン野菜ゲルと実際のニンジンを同じ調味液中で加熱した時の品質を比較するために物性測定や官能評価を行ったところ、実際のニンジンは煮崩れがみられたが、野菜ゲルはみられず、ほぼ同程度の嗜好評価が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は調味液中で加熱調理できる野菜ゲルの調製、嗜好性、調理加工特性などを明らかにし、新しい食材としての野菜ゲルを開発することを最終的な目的として行うものである。当該年度では野菜ゲルの調製条件、調味液加熱における野菜ゲルの影響、野菜ゲルを用いた調理品の試作の3つについて検討することを目的とした。野菜ゲルの調製条件の検討では基本的な条件であるジェランガムゲル1~2%、乳酸カルシウム0.6%、水、ニンジン搾り液の配合をさらに微調整して、廃棄の少ないように皮ごとピューレにし、搾り液調製を省くためにピューレのみとする点について検討し、これらを満たす条件としてピューレ70%の添加量を設定した。次に調味液中で加熱したときの物性測定、外観観察、官能評価より調味液中で加熱しても安定であり、嗜好的に好ましいことを確認した。さらに実際の調理品を調製して、野菜ゲルだけでなく、本物の野菜も同時に加熱して調理後の硬さ、味、外観等を比較することで野菜ゲルが実際の野菜に近い状態で調理されること、咀嚼力の弱い人には外観的には本物と類似した色、形で満足でき、食べたときは味付けされた非常に軟らかく、歯茎だけでも噛める状態であることで満足できるものと考えられた。さらに健常者においても色どりよい野菜ゲルの利用については新しい食材としての応用可能性が高いことが示唆された。以上のことより、当該年度の計画に対しておおむね研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
調味液中で加熱調理できる野菜ゲルを調製するうえで、耐熱性ゲル化剤であるジェランガムゲルの性質は重要である。特にカルシウムイオンはジェランガムがゲル化するときに必須のイオンであり、ナトリウムイオンはこれと置き換わることが考えられる。調味料の主要なものである食塩はナトリウムイオンを含むため0.5%程度の薄い食塩水溶液では野菜ゲルが煮崩れを起こし、1%以上ではそれが抑制されることから、この理由として考えられる金属イオンの溶出挙動と物性との関係を検討していく。一般に加熱するときは沸騰状態で行うことが多いが、弱火加熱に相当する90~95℃加熱を行い、野菜ゲルを薄い食塩水溶液で加熱する際の加熱温度について検討する。加熱時のゲルの構造については低真空SEMを用いた観察を行い、またフィルム状に調製した野菜ゲルを用いてFT-IR分析を行い、加熱した野菜ゲルの構造的な特徴について検討する。野菜ゲルに用いる野菜の種類についても根菜類だけでなく、様々な野菜についても調製条件の検討を行い、種々の色どりをもつ野菜ゲルの多様な調理加工特性を把握していくことで利用範囲が広まると考えられる。さらに野菜ゲルの保存性を考慮して、冷凍耐性や乾燥耐性についても検討し、実際の調理加工への応用可能性を探っていく。
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