2015 Fiscal Year Research-status Report
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26350090
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
香西 みどり お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (10262354)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 野菜 / ゲル / 物性 / ゲル化剤 / 加熱調理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では野菜ゲルとしてニンジンピューレを用いたニンジンゲルについて検討した。調味液加熱でゲル強度が変化する場合の原因を明らかにするために加熱中に野菜ゲルから溶出する金属イオンとゲルの物性との関係を調べた。野菜ゲルからの2価の金属イオン溶出は95℃加熱において100℃加熱より少なく、野菜ゲルの硬さは95℃加熱のほうが100℃加熱より硬く、95℃加熱では金属イオンの溶出が抑えられることが加熱後の形状保持に影響していた。ジェランガムゲルの場合のジェランガムの溶出率は約10%程度であり、重量減少とほぼ同程度であったことから、ゲル内部からの溶出は少ないと考えられた。野菜ゲルの調味液加熱におけるゲル構造の変化を調べるためにSEM観察を行った結果、わずかに加熱後のゲルに亀裂がみられた。またゆで加熱後のジェランガムのカルボキシ基の存在形態を明らかにするために乾燥したフィルム状にした野菜ゲルのIR分析をATR(全反射測定)法により行なった結果、1600cm-1付近のピークは未加熱のゲルが最も吸光度が高く、加熱に伴い吸光度が低下した。このことから野菜ゲルは加熱後においては加熱前に比べてゲル構造が疎になることが示唆され、RO水加熱に比べ1%NaCl加熱のほうがこの傾向が強く起こることが考えられた。野菜ゲルの調理加工への応用として、予備的に冷凍耐性、凍結乾燥耐性を調べ、ジェランガムのみのゲルに比べていずれも野菜ゲルのほうがこれらの耐性があることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は調味液中で加熱調理できる野菜ゲルについて加熱中で何が起こっているかについて溶出する成分と物性の関係について調べた。溶出する金属イオンは95℃加熱のほうが100℃加熱より少なく、このことが95℃加熱のほうが100℃より野菜ゲルの硬さを保持していることに関与していると考えられた。またゲルの加熱前後の組織観察をSEMにより行ったところ、加熱後のゲルに肉眼ではみえない亀裂が観察された。またフィルム状にした野菜ゲルのIR分析を行った結果、カルボキシ基を反映する1600cm-1付近での吸光度が加熱前より加熱後のほうが値が低くなり、加熱によってゲル構造が疎になることが示唆された。これらの結果より野菜ゲルを調味液中で加熱することによりゲルからの成分溶出が起こり、亀裂も多少が入ることで溶出が進み、ゲル構造が疎になることが示唆された。これらの結果から野菜ゲルを調味液加熱する場合は加熱温度が95℃付近が望ましく、成分溶出がある程度抑えられることでゲル強度を保つと考えられた。これまでの研究成果において調味液加熱中での成分溶出とゲル強度、ゲル構造の関係が明らかになってきており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で行った予備的実験で野菜ゲルの冷凍耐性、凍結乾燥耐性がジェランガムのみのゲルよりあることがわかり、今後はさらに野菜ゲルの冷凍耐性、凍結乾燥耐性について明らかにしていく予定である。また野菜ゲルに適した野菜、あまり適さない野菜など、様々な種類の野菜からピューレを作って野菜ゲルを調製し、適性の有無について検討し、適した場合は野菜ゲルとして最適な組成を決定していく予定である。最終的には調味液加熱可能な野菜ゲルの調製条件、調味および加熱条件、冷凍および解凍条件、官能評価による 嗜好性評価などの実験結果について総合考察を行い、新しい食材としての野菜ゲルの実際の調理加工への応用可能性を明らかにするとともに最適な調製条件、調理条件の設定を行う予定である。
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Research Products
(1 results)