2015 Fiscal Year Research-status Report
炊飯時の玄米粒子内品質推定モデルの構築とその炊飯プロセスへの応用
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26350093
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
村井 正之 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (00166240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 俊夫 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (60224812)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 玄米 / 炊飯 / 物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
玄米の炊飯時の内部物性の変化を捉える方法として、針状の走査プローブを利用した玄米断面の硬軟測定を試みた。吸水量の少ない、加温の直後では玄米の硬度が十分にあるため、断面4点での硬度を測定することは可能であったが、吸水の進行とともに穀粒の外表面に近い部分で水分が急速に浸透するため、実質的な測定点が減った。そこで、断面水分分布を知る直接的な手法は採らず、炊飯途上の玄米を取り出し、玄米の紡錘形状の両端を切除して樽状のサンプルとし、これを長軸方向に圧縮試験することで、玄米硬度と含水率との関係を求めることにした。その結果、全体平均硬度と含水率との間に非線形の関係が見出され、Fittingによる近似式およびそのパラメタを求めることができた。 また、顕微近赤外分光光度法を用いて、炊飯玄米のスペクトルを計測し、得られるスペクトルと水分との関係を調査した。玄米表面は平面ではないため反射光が散乱しやすい。このため、曲率の小さい胴部分に光を照射することでスペクトルを取得した。その結果、炊飯の進行に伴い、玄米の近赤外スペクトルは長波長において吸収率が著しく大きくなった。炊飯初期の玄米内部の水分は低いが、水分吸収は表面で著しく進むため、外部照射によって得られるスペクトルは穀粒表面の水分吸収の影響を受けやすいためである。光の照射範囲を0.1mm直径として測定しているが、照射範囲を広げるか、または光の照射方向をいくつか変えることで水分推定の手がかりになるものと考えている。現在、長波長域以外で、水分含量を推定し得るスペクトル上の特徴点はないか分析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
針を用いた硬度走査プローブでの測定は、炊飯初期の含水率が低い玄米では比較的有効に働くが、炊飯の進行に伴い含水率が急速に進むと形状破壊が起こりやすいことが分かった。このため、部分的な含水率や硬度は次年度のシミュレーションによる推定手法を用いることとし、その基礎データとしての断面平均の硬度と含水率の関係を求めることにした。炊飯途上の玄米を樽状に加工して押圧試験器によって弾力特性を測定する手法により、硬度と含水率の関係を明らかにすることができている。また、近赤外分光法を用いた炊飯玄米の品質評価では、光の反射特性が表面形状に大きく影響を受けるため、光の照射範囲や照射方向の改善を試みているところである。含水率が多くなれば、水分に関連する長波長域での光吸収が大きいため、2500nm近辺に重畳する品質特性については測定が難しいが、それ以外の部分に吸収域のある成分については品質評価の指標となるスペクトルを取得できている。 以上のことから、研究のコアとなる部分についてはおおむね順調に計画どおり進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
炊飯途上の玄米の硬度試験を引き続き実施して基礎データの蓄積を行うとともに、近赤外分光法による品質評価では、炊飯に伴い米のアルファ化にかかわるスペクトルの変化の特徴を調査する。これは炊飯米の仕上がり状態を推定するのに有用なことから、多変量解析などの手法で、アルファ化を特徴づける近赤外スペクトルの波長の選択を行う予定である。さらに、玄米の含水率分布の推定においては、シミュレーション技法を取り入れ、これまでの測定で蓄積した硬度-含水率の関係式や実験によっては得られていない文献データを総合して物性を整理し、玄米の炊飯過程のシミュレーションを試みる。
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Causes of Carryover |
実験上の消耗品が予定よりも少額で済んだことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度、分析試料の成形などに若干の消耗品追加が必要となる可能性があるので、これに活用する。
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