2014 Fiscal Year Research-status Report
日本における食用油脂及び油脂調理の変容と有用性の検証-食文化の視点から-
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26350104
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
大橋 きょう子 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (60276615)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 昭和時代 / 食文化 / 食用油脂 / 油脂加工品 / 食生活 / 料理 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】大正末期から昭和初期の日常食に着目し、一般家庭における食用油脂の利用と油脂を用いた料理の実態について調査した。 【方法】『日本の食生活全集全50巻』を資料とした。全掲載料理から料理に使用された油脂類を全て抽出し、次の2点について精査した。1.都道府県別に油脂の種類、調理法、油脂調理に使用された主材料について。2.人口の多く集まる都市部に着目し油脂を用いた料理と利用実態について。 【結果】1.①全料理数52,000件中、油脂料理は1.5%弱で日常の家庭料理における食用油脂の使用頻度は極僅かであった。②使用された油脂類の約62%が植物性油で菜種油の使用頻度が最も高かった。地域によりエゴマ油、ごま油などを用いていた。動物性脂は全体の38%で豚脂の使用頻度が高かった。③エゴマ油は山形・宮城県などの東北地方、豚脂は沖縄・鹿児島・兵庫県で多く使用されていた。北海道ではバターの使用が多く、油脂の種類及び調理法には地域性が認められた。④全国的に和風料理が中心で、少量の油で食材を炒めた後に煮る「炒め煮」料理が多かった。都市の中心部ではバターや豚脂を用いた洋風料理も出現し、油脂料理が多様化する兆しが伺えた。2.①東京府では、ごま油、椿油、大豆油、菜種油の揚げ物、炒り物・炒め物が多く、なめ味噌類、マヨネーズ、ライスカレーなど多種多様な料理が出現した。一方、大阪府は主に白絞油、菜種油を使用した揚げ物が多く次いで焼き物、煮物であった。②東京、大阪共に油揚げの使用頻度が農村部で多く、自家栽培した農作物とともに調理された。③カツやコロッケなどの調理済み食品は、中心部の精肉店で購入し、一般家庭では揚げ物料理は少なかった。④油脂を用いた洋風料理は中心部に集中し、料理屋のメニューには洋食が並び油脂料理の多様性が伺えた。大都市を有する地域では、中心部とそれ以外の農村部や山間部の食生活事情に違いが認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、科学研究費を頂いたお蔭で、調査資料となる書籍をかなり購入することができた。しかしながら、申請時当初1年目の研究計画で予定していた調査項目の全てを完了することはできなかった。本研究を行うにあたり必要となる研究補助者が見込めず、調査資料の抽出及びデータ保存に時間を要してしまったためでる。研究補助者の選定に当たって、想定外の時間を要してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
①本研究の遂行にあたり、研究補助者の条件に適した人材2名を確保し、1年目の遅れた部分も含め、調査項目の抽出及びデータ保存を効率よく進める。 ②調査対象資料の調査を続行する。 ③1年目に調査した内容に加えて、今年度の調査結果を学会に発表する。(日本家政学会、日本調理科学会に発表予定) ④発表した内容を骨子として、研究内容を論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
昨年度は以下の2点で研究計画の全てを遂行することができなかった。 ①予定していた研究補助者の手当てができず、補助者に対する謝金の支出が少なかったことによる。 ②当該テーマでの研究発表を行えなかったため、学会発表にかかる諸費用が生じなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は以下の3点について計画し、実施する。 ①研究補助者2名を確保し、2名分の謝金に充てる。②研究発表2件を予定しており、それにかかる費用に充てる。③研究発表2件の内容を骨子として、雑誌論文を作成する予定であり、それにかかる費用に充てる。
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Research Products
(2 results)