2015 Fiscal Year Research-status Report
日本における食用油脂及び油脂調理の変容と有用性の検証-食文化の視点から-
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26350104
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
大橋 きょう子 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (60276615)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 昭和時代 / 食文化 / 食用油脂 / 日常食 / 戦時下 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】昭和時代の食生活における食用油脂及び油脂を用いた料理の実態について調査研究を行っている。先行研究に引き続き、昭和時代初頭から20年間の一般家庭の日常食を調査した。特に太平洋戦争前後のおよそ10年間の油脂料理の実態を明らかにした。 【方法】東京朝日縮刷版及び「聞蔵Ⅱ」、読売新聞縮刷版及び「ヨミダス」、『日本の食文化-昭和初期・全国食事習慣の記録』Ⅰ本編・Ⅱ補遺編、『近代料理書集成』第9~13巻を資料とした。油脂及び油揚げなどの油脂含有量の多い加工品を用いた料理を全て抽出し、油脂の種類、調理法、食べ方、地域性について精査した。 【結果】①新聞に掲載された油脂調理は、食糧統制の厳しさを反映しつつも先進的な料理が掲載されていたが、戦時下の4年間は食生活の中で油脂を用いた料理は激減し、油脂の種類や調理法は戦前と比べて大きく変容する実態がうかがえた。配給制による油脂類や食品が年々減少し、調理の多様性は失われていたことが認められた。②昭和16年から17年の記録書によれば、揚げ物は中部地方、九州・沖縄地方で、炒り物・炒め物は東北地方、九州・沖縄地方で見られたが出現数は僅かであった。天ぷらや精進揚げは人寄せの場で主に調理され、出現地域も限定していた。また、パン粉や卵を使うフライ物は極僅かであった。使用油脂の量が制限され食材統制の厳しいことが認められた。③昭和15年出版の『全日本郷土料理』には揚げ物の記載が見られたが、19年出版の『郷土食と調理法』には揚げ物の記載は皆無であり、油脂を用いた料理の割合は著しく減少した。④油揚げ、がんもどき、生揚げなどの加工品はタンパク源の補給及び油脂味の付与として調理への利用頻度が高かったが、昭和16年以降はその使用は激減した。 戦時下の食糧事情は極めて困窮し油脂類の使用実態にもその影響は大きかった。食生活の実態とマスメディアの情報には格差があった事も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は当初の研究計画が思うように進まなかったが、今年度は研究補助者が確保でき、昨年度の遅れを取り戻すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①研究補助者の確保:平成27年度(平成28年3月)までの研究補助者の雇用契約が終了した。次年度(平成28年4月)の研究補助者が現在未定となっているため、早急に研究補助者の条件に見合った人員の確保を行う。 ②調査対象資料の選定と購入:調査対象期間の実態をさらに詳細に把握するための資料が必要となる見通しである。そのため、早急に調査対象資料を選定し購入する。入手でき次第、調査研究を遂行する。 ③今年度の調査結果を、学会に発表する。(日本調理科学会平成28年度大会に発表予定) ④発表内容を骨子として研究内容を論文にまとめる。
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Research Products
(3 results)