2014 Fiscal Year Research-status Report
親世代の葉酸摂取状況が次世代の代謝反応性に及ぼす影響とその分子機構
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26350119
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
中田 理恵子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 講師 (90198119)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 葉酸 / エピジェネティクス制御 / DNAメチル化 / 脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
葉酸の欠乏により新生児の神経管閉鎖障害のリスクが高まることが報告され、妊娠前からの葉酸摂取が推奨されている。一方、胎児期に子宮内で低栄養状態にあった新生児は、成人期以降に糖・脂質代謝異常を引き起こすという報告があり、その機構としてエピジェネティクス制御が注目されている。葉酸は生体内のメチル基供与体として働くS-アデノシルメチオニンの代謝に必須であり、DNAメチル化との関連が注目されている。我々はこれまでに、葉酸欠乏によって肝臓への脂肪蓄積が誘導され、脂質代謝に悪影響を及ぼすことを見出している。そこで本年度は、母ラットの葉酸摂取量の違いが出生仔の脂質代謝に及ぼす影響について検討した。 葉酸欠乏食(葉酸0.08mg/kg diet)または普通食(葉酸4mg/kg diet)を妊娠前4週間摂取させた雌性ラット(Wistar系)から生まれた仔(雄性)に、離乳後から20%高脂肪食または普通食を摂取させた。8週間後に血液、肝臓、脂肪組織等を採取し、組織重量、血漿および肝臓中の脂質量、葉酸誘導体量等を測定した。 葉酸欠乏食群の仔は、出生時には普通食群の仔との体重差はなかったが、授乳期間中の生存率の低下と成長遅延が認められた。この仔に離乳後から高脂肪食を摂取させると、体重と肝重量は有意に減少したが、腹腔内白色脂肪重量と肝臓トリグリセリドは有意に増加した。肝臓中の葉酸量には、各群の仔に差はなかった。以上の結果から、母ラットの葉酸欠乏が、仔の成長期における高脂肪食誘導性の脂質代謝に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
母ラットに妊娠前から授乳期まで、葉酸含有量の異なる餌を摂取させたところ、その出生仔において成長遅延等の違いを見出すことができ、研究計画は概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
妊娠前から授乳期まで、葉酸欠乏食を摂取していた母ラットの出生仔に離乳後から高脂肪食を摂取させると、腹腔内白色脂肪重量と肝臓トリグリセリドは有意に増加し、母ラットの葉酸欠乏が、仔の成長期における高脂肪食誘導性の脂質代謝に影響を及ぼす可能性が示唆された。そこで、計画2年目以降は、脂質代謝に関係する遺伝子発現変動を解析するとともに、DNAメチル化解析などエピジェネティクス制御との関連を明らかにしていく予定である。
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Research Products
(4 results)