2015 Fiscal Year Research-status Report
生活習慣病及び食習慣を考慮した食品中化学物質の新規リスク評価手法の確立
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26350125
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
増田 修一 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (40336657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島村 裕子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (60452025)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 化学物質 / 遺伝毒性 / 生活習慣病 / 糖尿病 / 小核試験 / コメットアッセイ / 薬物代謝酵素 / アルコール |
Outline of Annual Research Achievements |
アクリルアミド は、ポテトチップ等の日常食品に含まれる変異・発がん物質である。アクリルアミドは摂取後、生体内において薬物代謝酵素であるCYP2E1により代謝・活性化され、より強力な発がん物質であるグリシダミドに変換される。このCYP2E1は、糖尿病や慢性的なアルコール摂取により誘導されることが報告されている。したがって、これら生活習慣病や飲酒による発がん率増加の要因として、アクリルアミドの遺伝毒性の増強が考えられる。 平成27年度では、アルコール摂取時におけるAAの遺伝毒性の変動についてラットを用いて検討した。15%のアルコールを6日間自由摂取させたWistarラットに50mg/kg b.w.のアクリルアミドを経口投与した。投与24時間後にコメットアッセイ試験を用いてDNA損傷性を、小核試験を用いて染色体異常誘発能を調べた。その結果、アルコールの摂取及びアクリルアミド単独投与によりDNA損傷性及び染色体異常誘発能が誘導された。また、アルコール摂取時におけるアクリルアミド投与により、DNA損傷性及び染色体異常誘発能が有意に増強されることを確認した。アルコール摂取によりアクリルアミドの遺伝毒性が増強した要因としてCYP2E1の活性上昇が考えられた。そこで、肝臓におけるCYP2E1の活性を調べたところ、活性は有意に増強していた。また、アクリルアミドの解毒酵素の活性を調べるため、GST活性及びグルタチオン(GSH) 量を測定したところ、アルコール摂取により低下していることを確認した。さらに、GSHの減少に伴い酸化ストレスへの曝露指標である酸化型グルタチオン(GSSG) 量が有意に増加したことから、生体内の酸化ストレスが増加していることが示唆された。 以上の結果より、アルコール摂取によりCYP2E1が活性化され、さらにアクリルアミドの主要な排泄機能が弱まることから、摂取されたアクリルアミドの生体内での遺伝毒性が増強し、発がんリスクが高まることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度では、食習慣を考慮してアルコールを慢性的に摂取した場合の、アクリルアミドの遺伝毒性の変動について調べた。これらの結果については、さらにメカニズム等の解析を行い、平成28年度中に学会発表及び論文投稿をする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度では、糖尿病発症時において、また平成27年度では、食習慣を考慮して、慢性的なアルコール摂取時におけるアクリルアミドの遺伝毒性の変動を調べた。平成28年度においては、これら生活習慣病及びアルコール摂取時におけるアクリルアミドの生体内代謝物であるグリシダミドのヘモグロビン付加体及びDNA付加体量を測定し、実際にグリシダミドが生成しているのか検討する。また、生活習慣病として、肥満モデル動物を用いて、同様の試験を行う。さらに、これら実験動物より腸内細菌を採取して、アクリルアミドとともに培養し、得られた代謝物の遺伝毒性を評価する。
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Causes of Carryover |
当初の計画より、肥満モデル動物におけるアクリルアミドの遺伝毒性を評価することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度では、肥満モデル動物におけるアクリルアミドの遺伝毒性評価を実施する予定である。
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