2014 Fiscal Year Research-status Report
水素分子の糖尿病改善効果と遺伝子発現誘導における作用機序の解明
Project/Area Number |
26350129
|
Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
上村 尚美 日本医科大学, 付置研究所, 准教授 (60283800)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 糖尿病 / 酸化ストレス / 抗酸化剤 / 肝臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化ストレスは、糖尿病を誘発する原因のひとつと考えられている。また、糖尿病を発症すると酸化ストレスがさらに増加し、腎症や網膜症等の合併症を引き起こすことが知られている。申請者らは、これまでの研究により、水素分子(H2)が有害な活性酸素種のみを選択的に還元し糖尿病を含めた様々な疾患の改善に効果的な抗酸化剤であることを報告している。 これまで行った研究により、長期投与では水素ガスの吸入(1%水素を空気中に含む環境の中で飼育)より水素水(水素ガスを精製水に飽和レベルまで溶解させたもの)を飲用水として与えて飼育する方法の方がより効果的であることが判っている。しかしながら、飲用水の自由摂取では飲むタイミングや1回の摂取量を把握しにくく、水素分子の効果とその作用機序を明確にするには不向きである。そこで、その解決策として投与量が明確な水素化マグネシウムMgH2を経口投与し、胃の中で水素分子を発生させる方法を検討した。MgH2は海水から得られる岩塩中に含まれる水素吸蔵金属であり、以下の反応によって水素2分子を発生する。 MgH2 + 2H2O → 2H2 + Mg(OH)2 Mgは酸素と反応するが、MgH2は空気中の酸素と反応せず安定であり、反応後はMg(OH)2となる。MgH2は経口ゾンデを用いてマウスに経口投与を行った。その結果、投与量依存的に血中水素濃度が一過的に上昇することが確認できた。さらにMgH2を1日1回4週間の経口投与により血中の中性脂肪の上昇が有意に抑制できることが明らかとなった。 また今年度は、これまでに作製した生体内の酸化ストレスを定量評価できるモデルマウスを使用して肝臓の酸化還元状態の測定を行った。Db/dbマウスでは、対照マウスに比べ酸化ストレスへの感受性が優位に高まっていることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始の時点でモデルマウスや測定機器・設備等が整っていたため、おおむね計画書の通りに実施できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに作製した生体内の酸化ストレスを定量評価できるモデルマウスを使用して水素分子の効果を測定する。また、これまで行った研究により、2型糖尿病のモデルマウスdb/dbにおいて水素水を飲用水として3ヶ月間自由摂取することにより肝臓で分泌されエネルギー代謝を調節するホルモンFGF21の遺伝子発現が増加することが明らかとなったている。しかしながら、この結果は水素分子の長期摂取によるものなので、FGF21の遺伝子発現の増加が水素分子による効果の一次的な原因なのか、二次的な結果なのか不明である。そこで、水素分子の投与期間を短くして効果が現れるより前の段階において遺伝子発現の変化をマイクロアレイにより網羅的に解析を行う。
|