2014 Fiscal Year Research-status Report
線虫を用いた生活習慣病胎児期起源説の分子遺伝学的研究
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26350134
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
松本 晋也 京都女子大学, 家政学部, 准教授 (30263156)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 飢餓 / 成人病胎児起源説 / 線虫 / Caenorhabditis elegans |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,過度のやせはその女性が生む子供の体質に影響を与えるという成人病胎児期起源説が提唱されている。この説が正しいならば,妊婦のやせ→低出生体重児=太りやすい体質へ変化→生活習慣病に罹りやすい体質の世代の出現→生活習慣病の拡大 という悪循環が日本で生じている可能性がある。成人病胎児期起源説は,栄養学的,生物学的,社会的に非常に大きなインパクトを有するものであり,そのメカニズムを調べることは重要である。しかし,実験期間の長さ,費用,倫理の観点からほ乳類を使って研究することは難しい(ヒトを使うのは全く不可能)。そこで,本課題では,高等多細胞生物のモデルとして使われる線虫を使って成人病胎児期起源説の仕組みを解析する。 本研究では,飢餓を経験した世代の線虫(親線虫)から生じた次世代線虫(仔線虫)の体質が変化したのかということを調べる。これまでに次の4項目について検討した:運動能力,生殖能力,脂肪蓄積量,寿命。平成26年度までに,飢餓を経験した親線虫から生じた仔線虫では脂肪蓄積量が増えることを見いだした。この知見は,成人病胎児期起源説を線虫レベルで再現した可能性を示すものである。この結果を確たるものとすべく,平成27年度では更なる解析をおこなう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
飢餓を経験した線虫から生じた仔線虫の遺伝子発現パターンを調べるために,DNAマイクロアレイをおこない,次世代線虫ではクロマチン構造に変化が生じている可能性が示された。現在,タンパクレベルでヒストンの修飾状況を検討し始めたところである。 また,次世代線虫から脂肪を直接定量する実験も条件検討がほぼ終了した段階に達しており,ほぼ計画通りの進行状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.飢餓を経験した親線虫から生じた仔線虫では脂肪蓄積量が増えるというデータは画像解析に基づくものである。このデータはこの研究の根幹をなすものであるため,別の原理で再確認することが重要である。そのため,線虫から脂肪を抽出し,脂肪量が増えていることを直接確認することを試みる。具体的には,数十万匹レベルの線虫から脂肪を生化学的手法で抽出し,ガスクロマトグラフィーを使って脂肪量を定量する予定である。 2. 脂肪蓄積量が増えているとしたら,脂肪代謝関連遺伝子の発現量が変化しているはずである。具体的には,脂肪合成遺伝子が増えているケース,または脂肪分解遺伝子が減少しているケースが考えられる。そこで,飢餓を経験した親線虫から生じた仔線虫において,実際にそのような遺伝子発現変化が認められるかをRT-PCR(逆転写反応を利用した遺伝子発現解析法)を使って解析する。 【結果】第一の結果として、ガスクロマトグラフィーの条件設定に思わぬ時間を要したため,予備的な結果を得るにとどまった。第二の結果として、脂肪分解遺伝子群の発現が絶食子孫では減少しているとの知見が得られた。このことは,以前のデータを積極的に支持するものである。
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Causes of Carryover |
線虫飼育用のインキュベータを購入する予定だったが,DNAマイクロアレイをおこなうことを優先したため,予定購入計画が次年度にずれてしまったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
線虫飼育用インキュベータは今年度購入予定である。
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Research Products
(6 results)