2014 Fiscal Year Research-status Report
食文化教育を切り口とした家庭科教育へのサステナビリティ教育導入の試み
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26350142
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
西川 陽子 茨城大学, 教育学部, 准教授 (60303004)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 食生活と環境 / サステナビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度であるH26年度の研究においては,ESDを取り入れた家庭科教育の教材開発を主として行い,教育実践可能なものについては開発教材の教育効果と家庭科教育へESDを導入することの意義を検証するために,実際の教育現場で試行し確認することを計画していた。実際には,① 小学校家庭科教育を想定した大豆を教材とするESD教育,② 高校家庭科における食文化教育をターゲットとした小麦粉代替用米粉を教材としたESD教育,以上2パターンの教材開発を試みた。①については,日本食文化の基盤となる大豆の生産がほぼ海外に依存しており,伝統食品として成り立たない事実を理解させる紙芝居教材,地元の豆腐業者のを訪ね使用大豆の選択や消費者に対する考えをインタビューしたビデオ教材,さらになぜ自国での生産が少ないのかゲーム形式で学ぶ教材を開発し,水戸市内の公立小学校にて実際にそれら教材を用いた授業を行い,生徒らの学習効果を検証した。結果として,これら教材を通して生活の簡便さを追求することと環境や文化を保持していくことが必ずしも一致しないジレンマが体感でき,このことが重要な教育効果と考えられ,家庭科へのESD導入の意義を見出す結果が得られた。また,小学生においてはまだ知識が少なく,善悪どちらかに決めて理解してしまう傾向があり,国産食材が良,外国産が悪といった一元的な理解に導く危険性が高いことが示唆され,家庭科の授業時間だけでは教育遂行が難しいことが推察された。②については,小麦粉代替用米粉の開発要因を学ぶことを通じて食生活と環境の関係について理解できる授業を目指し,小麦粉代替用米粉の従来の米粉との違い,小麦粉との調理特性上の違いなどの概要を端的に学べる教材の検討をした。スポンジケーキ,蒸しパン,クレープなど数種の調理について検討した結果,クレープの教材有効性を示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたH26年度の研究計画である「家庭科教育にESDを導入するための教材開発」について,小学校家庭科,高校家庭科を対象に異なる視点から多角的に教材開発を検討することができた。また,小学校対象の開発教材については,実際の教育現場にて実践し,教育効果を検証することができ,次年度以降の研究の方向性を絞る上で有意義な結果が得られた。本研究申請及び研究スタート当初は,食品保蔵手段(発酵食品,腐敗と追熟(バナナなど))の教材化も高校家庭科の開発教材として視野にいれていたが,扱うことができなかったため,次年度以降の研究題材として検討することを考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度は小学校と高校の家庭科教育を想定したESD導入教材の開発を行い,その結果から小学校家庭科においては教育効果は示されたが,家庭科の時間数が少なく,ESDの確かな教育効果を得るには時間的に十分ではないことが推察された。そのため,H27度以降は,高校家庭科教育におけるESD導入の教育効果に的を絞り,教材開発及び開発教材の実践検証を行っていくことを予定している。 内容としては,H26年度に検討した小麦粉代替用米粉をESD学習教材とする教育の検討を更に進めていく。また,新たに日本食文化に欠かせない長期保蔵食品(糠漬け,乾物など)の教材化についても検討を進める。これら2つの教材については,米粉は食生活の基盤となる主食の生産を通した食と環境の関係を理解することができる教材として,一方,長期保蔵食品は環境負荷の最も少ない食生活として得られた食材を100%使い尽くす姿勢の重要性を理解するための教材として,それぞれに異なる視点から食のサステナビリティを学ぶものであり,両者の教育効果の違いなども比較検討し,より良い教材の完成を目指す。
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Causes of Carryover |
H26年度は,本研究について発表した学会が所属する大学にて行われたものであったため,予定していた旅費を使用せずに済んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H26年度の研究活動から考えて,H27年度では開発した教材を用いて教育現場で実際に教育実践する際に,安全に行うためのサポーターやその際のデータ収集に人手がかなり必要になるものと予想される。また,データ処理用の研究室パソコンのバージョンアップ(OS使用期限によるもの)の必要性が新たに出てきている。ゆえに,H27年度の人件費及び物品費を補う形でH26年度分を合わせて活用していきたいと考えている。
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