2014 Fiscal Year Research-status Report
包接機能食品実用化のためのin vitro吸収評価法の開発と新規錯体への実践研究
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26350156
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
土江 松美 大阪市立大学, 大学運営本部, 技術職員 (90433317)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 機能食品 / 分子包接 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で目指す包接機能食品実用化のためのin vitro吸収評価法の確立に向けたモデル系として選んだα-リポ酸/γ-CD複合体を用いて、実際の包接のダイナミクスについての評価法について検討した。即ち、R(+)体のみが生体内で有効性を示すα-リポ酸の両異性体のγ-CD複合体を調整した上で、R(+)体とS(-)体を区別して認識できる可能性について、両異性体と特に口径が大きいγ-CDとの弱い空間相互作用の差異について検討可能なパラメータとして、本来分子解析のためのNMR DOSY法を基礎として、各プロトンの拡散係数の比較が有効であることを初めて見出した。 α-リポ酸/γ-CD複合体は包接と除放速度が当初の予想以上に早く、重水中での解析からは、γ-CDは両enantiomerを認識し、C-2位のプロトンケミカルシフトに差異を示した。 しかしながら、各プロトンの拡散係数測定結果からは、C-2位よりもC-6位(不斉中心)のプロトン運動性低下が観測される結果を得、プロトン個別の拡散係数値が、ケミカルシフトだけでは不明だった微弱な化合物包接構造を確認する有効なパラメータとして評価できる可能性が確認できた。 さらに微弱な結合からの徐放速度の検討のため、有機溶媒による徐放効果の検討を重ねた結果、ピリジン中においては、(R)-α-リポ酸ではその除放効果はほとんど確認できなかったが、(S)-α-リポ酸では、ピリジンの窒素原子がγ-CDの水酸基に配位する形で徐放が行われており、enantiomerの結合強度に差があることが実証された。またDMSO中では逆に、(S)-α-リポ酸ではその除放効果はほとんど確認できず、(R)-α-リポ酸複合体に関して、DMSOの酸素原子がγ-CDに配位することで(R)-α-リポ酸を徐放しており、徐放剤によりその徐放効果が大きく異なることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初モデル系として選んでいたα-リポ酸/γ-CD複合体の包接と徐放速度が当初の予想以上に早く、通常のDOSY法その他でのアプローチが困難であることが明らかになった。その結果、弱い結合定数を見積もるため、パラメータに改良が必要であることがわかり、その最適条件を確立するために予想外の時間がかかってしまったため、計画すべての測定を実施するに至らなかった。 また1年間、研究機関の学舎建て替えにより、各種大型分析機器の使用が不能な研究環境下、他研究機関へ出向いての測定研究の占める割合が多く、予定通りの進捗状況が得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で結合定数を見積もるパラメータが確立できたので、今後は生体内での除放作用を示すことを期待している胆汁酸/γ-CD複合体の結合力評価を実施する。 さらに新たな機能性食品への展開を期待している新規錯体の合成に着手し、その複合体の胃での消化モデル実験による安定性の確認も進めていき、本機能性食品の開発の可能性へと研究を展開していきたい。
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Causes of Carryover |
1年間学舎建て替え工事対応のため実験スペースが限定され、主として学外に最小限の測定のため赴く形での研究推進となったため、当初予定していた実験器具を購入して設置する場所の確保が困難であった。実験器具が少なくて済む研究を中心に推進した結果、予定よりも少額の使用額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ようやく研究環境も整ったため、1年目に予定していた実験器具の購入も含め、少し遅れがちの研究を軌道に乗せる予定である。
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