2015 Fiscal Year Research-status Report
シンバイオテイクスによる慢性関節リウマチの予防・治療に関する研究
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26350157
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
久保 薫 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (20254493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友田 恒一 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90364059)
田中 康仁 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30316070)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 喫煙 / 関節リウマチ / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
関節リウマチは、遺伝因子と環境因子の交絡による自己免疫反応の産物としての炎症性タンパクによる慢性炎症と考えられ、ハリスン内科第18版(2011年)では喫煙が関節リウマチ発症の重要な環境因子であることが認知されている。前年度にアジュバント関節炎を好発するLweis系ラットが喫煙に感受性が高いこと、またアジュバント関節炎では糞便の16S rRNAシーケンス解析からフィルミクテス(Firmicutes)門が優位に占める腸内細菌叢の不均衡を生じること、喫煙曝露がアジュバント関節炎を増悪することが認められたことから引き続きLweis系ラットを用い、栄養素(グルタミン、ポリデキストロース、ラクチュロース)とBifidobacterium lungumの混合物(GFOB)による腸内細菌叢の不均衡の解消とアジュバント関節炎の軽減を検討した。GFO(2.0%、3.2%、3.0%) と5%Bifidobacterium lungumを含む飼料の摂取は免疫応答を介した腫脹に軽減効果を示し、またフィルミクテス(Firmicutes)門の有意な減少とともにバクテロデス(Bacteroidetes)門、ウェルコミクロビウム(Verrucomicrobia)門とアクチノバクテリア(Actinobacteria)門が有意に増加し、腸内細菌叢の不均衡が解消した。これらの結果より、腸内細菌叢の改善は関節リウマチを軽減する可能性が示唆された。一方、GFO(2.0%、3.2%、3.0%) と5%Bifidobacterium lungumを含む飼料の摂取は、喫煙曝露によるアジュバント関節炎の増悪を抑制しなかった。喫煙条件下ではGFOとBifidobacterium lungumの含有量を再検討する必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者がこれまで得た喫煙曝露の条件等に基づき新規の関節リウマチモデルの作製に取り組み、研究計画に従った進捗状況である。これまで申請者は、喫煙を主因とする肺気腫ならびに骨粗鬆症に対応する動物モデルを作製する過程において、喫煙による生体の全身性炎症や体重の増減等を指標に喫煙条件を模索し、MIPS社製喫煙曝露装置を用いた喫煙曝露(30分間喫煙、2回/日を6回/週、8週間)により自然発症高血圧ラットにおける肺気腫ならびに骨粗鬆症の発症を見出した。この喫煙条件に対してLewis系ラットの体重増加は著しく抑制され、申請者がこれまで得ている自然発症高血圧ラットの喫煙に対する高感受性と同等あるいはそれ以上であった。更に、喫煙曝露終了後のアジュバント関節炎の誘発において、アジュバント感作側の足蹠の腫脹は非喫煙群と差は認められず、また非感作側の足蹠の腫脹発症時期も非喫煙群とほぼ同じであったが、非感作側の足蹠の腫脹容積は発症後に有意に増加し、観察期間である感作後28日目まで持続した。16SrRNAシーケンスを用いた糞便中の菌種解析によりアジュバント関節炎においてフィルミクテス(Firmicutes)門が優位に多い構成であり、腸内細菌叢の不均衡を見出した。更に、この不均衡をシンバイオテイクス(グルタミン、ポリデキストロース、ラクチュロースとBifidobacterium lungumの混合物)で改善することによりアジュバント関節炎が軽減されることを見出した。喫煙習慣及び免疫応答を介した関節炎の増悪ならびに腸内細菌叢の不均衡との関連を示唆する結果が得られており、研究計画はおおむね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者の喫煙条件に基づくLewis系ラットのアジュバント関節リウマチモデルを用いて腸内環境の変化と全身性炎症との関連性の観点から、喫煙による関節リウマチの発症ならびに増悪等の進展に関する機序を解明する。関節炎については、種々の炎症性サイトカインやリウマチ因子の変動、後肢関節ならびに骨のX線撮影、骨質測定(FTIRイメージング測定ならびに顕微ラマン分光法)により解析する予定である。また、腸内環境については、食餌吸収率の算定、小腸と大腸の形態学的変化と血中ジアミノオキシダーゼ活性の定量、回盲部内容物中の有機酸濃度およびpHの測定と腸細菌の定量等により解析する予定である。また、腸管免疫とアジュバント関節炎との関連をパイエル板や末梢リンパ節におけるT helper 17細胞やFoxp3+T細胞の誘導・発現を踏まえて解析する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、アジュバント関節炎と腸内細菌叢との関連性や喫煙曝露によるアジュバント関節炎の増悪に関する現象面の再現性ならびにシンバイオテイクス(グルタミン、ポリデキストロース、ラクチュロースとBifidobacterium lungumの混合物)の調整に重点を置き直接経費を使用したが、次年度にはアジュバント関節炎の作製と喫煙曝露に加え作用機序等を解析するにあたり平成27年度以上の直接経費を要すると見込まれるため次年度への繰越を計画した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用計画として、種々の炎症性サイトカインやリウマチ因子の測定、骨のX線撮影、骨質測定(FTIRイメージング測定ならびに顕微ラマン分光法)の解析等の費用に充てる予定である。
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