2014 Fiscal Year Research-status Report
ハーブサプリメント素材が有する環境化学物質様作用の検証とそのリスク評価方法の構築
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26350160
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
佐々木 菜穂 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 講師 (10571466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有田 安那 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 助手 (20518104)
志村 二三夫 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 副学長 (70111523)
山崎 優子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 助教 (70518117)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ハーブサプリメント / 安全性評価 / カバ / CYP / 環境化学物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はハーブサプリメント(HS)のリスク評価法を確立し,ハーブ素材の安全性確保に寄与することを目的としている.先行研究において,肝障害事例のあるカバ(Piper methysticum)製品が,従来評価指標とされなかったラット肝CYP1A1を強く発現誘導させ,環境化学物質(EC)様の作用を有する可能性を指摘した.本課題は,薬物相互作用を有するHSだけではなく,EC様作用を有するHS製品についてもスクリーニングするために,CYP1A1を含むCYPを指標とするHSのリスク評価法のアルゴリズム構築を目指している.平成26年度は,先行研究で見出したカバのEC様作用について詳細を調べた. リコンビナントヒトCYP1A1酵素活性に対する各カバラクトンの影響を調べた結果,カバラクトンのうちデスメトキシヤンゴニン(DMY)および,ヤンゴニン(Y)はEROD活性を強く競合阻害した.一方,CYP1A1に対する阻害が報告されているレスベラトロール(RVT)は競合阻害と非競合阻害の混合型阻害であり,DMYおよびYは,RVTよりもCYP1A1活性に対して10倍以上高い親和性を示した.これは,DMYおよびYがCYP1A1の基質となり代謝される可能性を示唆している. ヒト肝癌由来培養細胞HepG2を用いた実験では,DMYによるCYP1A1 mRNA誘導作用について,経時変化,BPとの共培養における相互作用を調べた.その結果,RVTはBPのCYP1A1 mRNA発現誘導作用を阻害するのに対し,DMYはBPにより発現誘導されたCYP1A1 mRNAを高レベルに維持させ,DMYはRVTやBPとは異なる機序でCYP1A1 mRNAを発現誘導することが示唆された. 以上の結果より,カバのEC様作用にはバラクトンのDMYが関わる可能性が強いことが示唆された.酵素試験はさらに検討が必要であるが,細胞試験ではBPとは異なる機構で作用すると推定された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
酵素実験については,実験遂行主担当の山崎が育児休暇からの復帰後,すぐに研究に専念することができなかった.しかしながら,志村,有田,端田らによる実験実施により良い成果を得ることができた.細胞実験については,平成26年度に実施予定であったHepG2細胞におけるCYP1A1酵素活性測定および,酵素タンパク質量(ウェスタンブロッティング法)の条件設定が定まらなかったために,平成27年度実施予定のカバラクトンとBPの相互作用検証試験を先行して行った.酵素活性,酵素タンパク質量については引き続き実験条件の検討を進め,27年度中に結果を得る.これらの遅れは,当初の実験計画から大きく遅れるものではない.
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Strategy for Future Research Activity |
【平成27年度】(1)CYP1A1酵素タンパク質によるカバラクトンの分子認識. CYP1A1酵素に対する競合阻害が示されたDMYとYは,同酵素の基質となる可能性がある.これらのカバラクトンをリコンビナントヒトCYP1A1等と反応させ,その代謝産物をHPLCにより単離・精製する.これらを試料にQTOF-MSを用いた解析等により,反応性生物の化学構造を同定する.さらには,カバラクトン自体あるいは分離精製したその代謝産物を試料とし,生体分子間相互作用解析システムを用いて,CYP1A1酵素タンパク質その他諸生体高分子との相互作用の解析を試みる. (2)ヒト肝癌由来培養細胞におけるCYP1A1の遺伝子発現に対するカバラクトンの影響 平成26年度に達成できなかった,HepG2細胞におけるCYP1A1酵素活性(レートアッセイ法)および酵素タンパク質量(ウェスタンブロッティング法)を測定し,mRNAにおける現象を検証する.さらに,DMYとBPにより誘導されたCYP1A1 mRNAとの相互作用について実態を明らかにするために,CYP1A1以外の分子種(AhR,AhRR,Arntなど)の遺伝子発現についても検討を行う. 【平成28年度】(1)実験動物肝におけるCYP1A1の遺伝子発現に対するカバラクトンの影響.環境化学物質様作用が示されたカバラクトンについて,純品を実験動物に投与することにより明らかにする.実験方法は,カバラクトン純品をマウスに投与し,肝CYP1A1 mRNA発現量をリアルタイム RT-PCR法により定量する.さらに細胞実験と同様にCYP1A1タンパク質発現量をウエスタンブロッティング法で,CYP1A1酵素活性をレートアッセイ法にて測定する.(2)これまでに得られた研究成果について論文を作成する.また,論文作成に必要な補足実験を随時実施する.
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Causes of Carryover |
研究分担者の山崎は,平成25年10月15日から平成26年8月31日まで育児休暇を取得しており,復職後すぐに酵素実験を再開予定であったが,実験の再開が遅れ,平成27年2月より本課題に着手している.今期は志村,有田らの実験資材を用いたため,大きな次年度使用額が生じた.また細胞実験において,実験条件の検討に時間を費やし,当初予定よりも研究遂行に遅れが出ている.これについては平成27年度も引き続き行うために助成金を残した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は,前年度未使用額を合わせた助成金の全てを物品費に充てる. 酵素実験では,HPLC等の分析に必要な試薬やピペットチップなどの実験消耗品を購入する.細胞実験では培養培地やプラスチックフラスコ,プラスチックピペットなどの培養必需品のほか,遺伝子解析実験のための試薬キットなど,酵素活性測定やタンパク質量測定に用いる試薬などを購入する.
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Research Products
(4 results)