2014 Fiscal Year Research-status Report
大学生に対する食育の検討‐味覚能力と食行動の視点から‐
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26350165
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
濱口 郁枝 甲南女子大学, 人間科学部, 准教授 (80521997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 豊子 帝塚山学院大学, 人間科学部, 教授 (90047308)
東根 裕子 大阪青山大学, 健康科学部, 教授 (40211502)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 食育 / 味覚 / 計画的行動理論 / 食行動 / 質問紙調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.味覚検査 平成26年7月に大学生の男女26名を対象に、通常味わう濃度範囲の濃度差識別能力を検査する「きき味能力テスト」(以下テスト1とする)と、閾値より少し高い濃度の溶液について味質の違いを識別する「五味の識別テスト」(以下テスト2とする)を実施した。テスト1の結果は、うま味、甘味、酸味、塩味の4味質ともに正解順位と有意に相関のある得点をとった者(濃度差識別能力あり)は0人、3味質が1人(3.8%)と少なかった。テスト2の結果は、正答数が5つ(うま味、甘味、酸味、塩味、苦味)の者は4人(15.4%)と少なかった。テスト1の濃度差識別能力の有無と、テスト2の正解の有無については、全味質において有意な関係はなかった。また、テスト1における濃度差識別能力ありの味質数と、テスト2の正解数の関係においても有意な関係はなかった。味見の訓練を行うことにより濃度差識別能力と味質識別能力の感度が上がり、関連をもつことが予測されるため、今後は食育(味覚教育)を実施し、テスト結果の変化を確認する必要があると考えられた。 2.質問紙調査 計画的行動理論を適応させた尺度を作成し、平成21年7月に女子大学生290名に実施した予備調査結果を詳細に検証した。その結果、家族が栄養バランスの良い食事を作ってくれること、栄養バランスの良い食事を摂るための方法を活用することが、行動コントロール感に影響することが確認された。さらに、態度、行動コントロール感は相互に関連しながら意思に影響を及ぼし、意思は味覚行動を促進し、食行動に対して関連をもつことが示唆された。しかし、主観的規範から意思に対する影響はなかった。したがって、基本的な調理技術を習得させ、食生活に対する意識や価値を高めることができるような指導と、味覚教育を取り入れることが必要であると示唆された。今後は尺度に改良を加え、本調査を実施しさらに詳細に検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.味覚検査 平成26年度は、通常味わう濃度範囲の濃度差識別能力を検査する「きき味能力テスト」と、閾値より少し高い濃度の溶液について味質の違いを識別する「五味の識別テスト」を実施し、2種の味覚検査結果の関連について検証を行った。この結果を元に、次年度に向けた味覚教育プログラムを作成した。 2.質問紙調査 計画的行動理論のフレームワークを適応させた質問紙尺度を作成して実施した予備調査結果について詳細に検証を行った。調査結果については、因子的妥当性の検証(因子分析)と内的一貫性(Cronbachのα係数)について許容水準を満たしていることを確認した。さらに、共分散構造分析を用いて計画的行動理論の要素間の因果関係を検討した。これらの結果をもとに質問紙尺度に改良を加え、さらに本調査を実施し解析を進めている。また、この結果は、次年度に向けた味覚教育プログラムの参考となった。 3.成果の発表 平成26年度の研究成果の学会発表、学術雑誌への投稿については、平成26年度中に実施できなかったため、平成27年度に実施する予定で進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.平成26年度に作成した味覚教育プログラムを用いて大学生に対して介入を行う。味覚教育プログラムは、調理実習の授業に用いる内容と、調理科学実験(官能評価演習)の授業に用いる2つの内容を作成した。 調理実習の授業では、味見を強化した味覚教育を実施する。日本の食文化の特徴を活かした内容として、すまし汁の好みの塩分濃度について官能評価を行い、介入前後の変化を確認する。また、味見や食事作りに関する意識について質問紙調査を行う。 調理科学実験(官能評価演習)の授業では、五感を働かせて味わう味覚教育を実施する。通常味わう濃度範囲の濃度差識別能力を検査する「きき味能力テスト」と、閾値より少し高い濃度の溶液について味質の違いを識別する「五味の識別テスト」を介入前後に実施し、味覚能力の変化を確認する。また、平成26年度に改良した「計画的行動理論」を適応させた質問紙調査を介入前後に実施し、食行動、味覚行動の変化について確認する。 2.平成26年度末に実施した質問紙調査(食を専門に学ぶ学部対象)の結果について詳細に検証する。また、対照群についての調査を実施する。 3.平成26、27年度の結果をまとめ、研究成果の学会発表、学術雑誌への投稿を行う。
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Causes of Carryover |
平成26年度中に、研究結果の学術雑誌への投稿ができなかったため、投稿に関する費用が未使用であった。また、味覚検査の本調査が次年度であるため、試料作成に必要な器具類を購入しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、質問紙調査の本調査を実施するため、データ入力等人件費に充当する。また、平成26年度の結果について論文にまとめ、学術雑誌へ投稿する費用として使用する。さらに、味覚検査の本調査に向けて、試料作成に必要な器具類を揃える。
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Research Products
(2 results)