2015 Fiscal Year Research-status Report
大学生に対する食育の検討‐味覚能力と食行動の視点から‐
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26350165
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
濱口 郁枝 甲南女子大学, 人間科学部, 准教授 (80521997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 豊子 帝塚山学院大学, 人間科学部, 非常勤講師 (90047308)
東根 裕子 大阪青山大学, 健康科学部, 教授 (40211502)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 食育 / 味覚 / 計画的行動理論 / 食行動 / 質問紙調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.女子大学生の食育に関する検討 平成26年12月に大阪府と兵庫県内の女子大学生245名を対象に、質問紙調査を実施した。その結果、日常の食事を主に作る者は、母親が62.0%と多く、自分も手伝う者は26.5%と少なかった。また、保護者から食生活について気を配るように教えられている者は45.3%で、内食の摂食日数が多く、中食の摂食日数が少なかった。教えられている内容は、野菜をとる、栄養バランスのよい食事をとる、料理は濃い味付けにしない、などであった。また、計画的行動理論に基づいた食行動の基礎要素について質問した結果、おいしさや好みの食事をとることを重要視し、肉と魚のバランスをとって食べることなどは重要視している程度が低かった。以上のことから、健全な食行動を促進するためには、家族から食生活に対して適切な働きかけを行うことが重要であり、さらに、嗜好だけに頼らず、五感を働かせて食事をおいしく味わうなど、味覚教育を行うことが重要であると考えられた。 2.味覚教育を取り入れた調理実習の効果 兵庫県内1大学における調理実習履修者53名を対象とし、4月(授業開始時期)と7月(授業終了時期)にすまし汁の3種の塩分濃度の好みについて、官能評価(順位法)を行った。その結果、4月は好みの塩分濃度に差がなかったが、7月は1番好きな濃度は0.7%が58.5%と最も多く、0.8%が37.7%、0.9%は3.8%であった。また7月にだし汁を調味させ塩分濃度を測定した結果、7割の学生が健康に良い0.6~0.8%の濃度に調味することができた。さらに7月に質問紙調査を行った結果、「塩味について慎重に味見をするようになった」は、非常に・とても当てはまると回答した者を合わせて6割であり、味見に対する意識が向上したと考えられた。以上のことから、実習で味見の練習を行う味覚教育は、薄味を意識し好むことに効果があると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)平成26年度に作成した味覚教育プログラムを改良し、大学生に対して介入を行った。味覚教育プログラムは、調理学実習の授業に用いる内容と、調理科学実験(官能評価演習)の授業に用いる2つの内容を作成した。 調理学実習の授業では、味見を強化した味覚教育を考案した。実習は日本の食文化の特徴を活かした内容を中心とし、汁物の調味後の濃度確認や、五感を使って料理を味わった感想を記録させた。介入前後には、すまし汁の好みの塩分濃度について官能評価を行い、変化を確認した。また、介入後にはだし汁を調味させ塩分濃度を測定した。さらに、味見や食事作りに関する意識について質問紙調査を行った。調理科学実験(官能評価演習)の授業では、五感を働かせて味わうことに重点をおいた味覚教育を実施した。内容は、様々な官能評価の手法を体験させること、条件の異なる料理・菓子を製作し、五感を使って味わった感想を記録させた。介入前後には、通常味わう濃度範囲の濃度差識別能力を検査する「利味能力テスト」と、閾値より少し高い濃度の溶液について味質の違いを識別する「五味の識別テスト」を実施し、味覚能力の変化を確認した。また、平成26年度に作成した「計画的行動理論」を適応させた質問紙調査を改良して介入前後に実施し、食行動、味覚行動の変化について確認した。 (2)(1)で用いた「計画的行動理論」を適応させた質問紙調査は、対照群についての調査を実施した。 (3)(1)の研究成果の一部について学会発表を行った。今後は、全データについて学会発表ができるよう検討を進める。さらに学術雑誌へ投稿できるよう準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)味覚教育の介入効果の検証 平成27年度に実施した味覚教育プログラムを用いて引き続き大学生に対して介入を行い、対象者を増やして介入の効果を検討する。味覚教育プログラムは、調理学実習の授業に用いる内容を約130名、調理科学実験(官能評価演習)の授業に用いる内容を約70名に対して実施する予定である。 さらに、平成28年度から給食経営計画実習に用いる内容を約60名に実施する。内容は、汁物の調味後の濃度確認や、五感を使って料理を味わった感想を記録させる。介入前後には、通常味わう濃度範囲の濃度差識別能力を検査する「利味能力テスト」と、閾値より少し高い濃度の溶液について味質の違いを識別する「五味の識別テスト」を実施し、味覚能力の変化を確認する。また、平成27年度に実施した「計画的行動理論」を適応させた質問紙調査を介入前後に実施し、食行動、味覚行動の変化について確認する。 (2)平成27年度に実施した質問紙調査の結果について、味覚教育介入群と、対照群の比較について詳細に検証する。 (3)平成27年度に発表できなかったデータをまとめ、学会発表、学術雑誌への投稿を行う。
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Causes of Carryover |
平成26年度からの繰越金があったため、物品費や人件費・謝金に充当することができた。さらに、学術雑誌への投稿ができなかったことから、投稿に関する費用が未使用であったため、残高が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、統計ソフトをバージョンアップさせるため購入費用として充当する。さらに、平成27年度の結果について論文にまとめ学術雑誌へ投稿する費用として使用する。
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Research Products
(8 results)