2015 Fiscal Year Research-status Report
脂肪細胞とマクロファージ共培養時における酪酸のエイコサノイドと脂質代謝への影響
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26350166
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
大平 英夫 神戸学院大学, 栄養学部, 講師 (40351762)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 短鎖脂肪酸 / Butyrate / 脂肪細胞 / マクロファージ / プロスタグランディンE2 / Lipolysis |
Outline of Annual Research Achievements |
[目的]脂肪細胞とマクロファージ間の相互作用には代謝性疾患との深い関連性がある。以前、我々は、脂肪細胞とマクロファージの共培養にてlipolysisによる遊離脂肪酸(FFAs)放出が、酪酸ナトリウム(Bt)添加により、有意な抑制を示すことを報告した。Btは、様々な細胞においてプロスタグランディンE2(PGE2)産生を増加させることが知られている。そこで我々は、共培養下にて、BtがPGE2を増加させ、これがlipolysis抑制作用と関連性を持つかどうかについて調査を行う。 [研究計画]直接、または間接共培養条件下、分化3T3-L1細胞とRAW264.7細胞を用い、昨年の研究成果(PGE2増加、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)発現増加、マクロファージ cytosolic PLA2活性増加等)から得られた結果の機序を解明する追加実験を、受容体経路とlipolysis抑制の観点から調査を行う。 [結果]共培養下、PGE2処理によりFFAs放出量は有意に低下し、PGEレセプター3阻害薬はその効果を打ち消した。共培養下、Bt処理によりFFAs放出量は有意な低下かつPGE2処理よりも著明な低下を示し、PGEレセプター3阻害薬は、部分的な低下を示す結果であった。3T3-L1細胞へのTNF-α刺激下によるlipolysis抑制効果を確認するため、COX-2阻害薬、NF-kappaB阻害薬を用いた結果、FFAs放出量は有意かつ著明な低下を認めた。一方、PGE2処理ではFFAs放出量は有意な低下を示したが、上記の阻害薬に比べ、その効果は弱いものであった。 [結論]これら結果はBtによる脂肪細胞へのlipolysis抑制効果は、PGE2増加によるPGE2経路に加え、異なる経路による影響を含む可能性を示唆するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由) 昨年の研究成果に加えて、次年度、課題としていた実験進行がおおむね計画通りに進んだ。当初の仮説通り、共培養にて増加を示すPGE2が、Bt添加によりさらに増加を認め、lipolysisを抑制する補足結果を得た一方、Btのlipolysis抑制作用はPGE2経路だけではなく、異なる経路の存在を含めたものであることを示唆する結果を得ることとなった。 また進捗状況として、2015年度内に明らかにすべき課題の4点中、3点の要となる研究結果を得ている。 Ⅰ:共培養下、PGEレセプター3阻害薬を用いた実験に加え、COX-2阻害薬を用い、脂肪細胞のFFAs放出量を評価している。 Ⅱ:脂肪細胞のlipolysis抑制に関与するNF-kappaB/TNF-α経路を阻害した条件での、FFAs放出量を評価している。 Ⅲ:cPLA2, adipose-specific PLA2(AdPLA2)に加え、secretory PLA2(sPLA2)に対するBt添加の発現量評価を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策) 今後、共培養下、Bt添加により増加したPGE2がlipolysisを抑制に影響している仮説をより強く証明するには、現時点では未だ不明な点が幾つか存在する。特に脂肪細胞内での反応機序を解明するための実験を追加する予定である。 1. 短鎖脂肪酸レセプターであるGPR41阻害薬を用いた実験を行い、Btのlipolysis抑制効果が打ち消されるか確認を行う。 2.脂肪細胞内のレセプターによるシグナル反応の経路を確認する実験を行うため、共培養ならびに、Bt、PGE2の細胞内cyclic AMP(cAMP)レベルの変化の評価を行う。 3.cAMP経路の関与を確認するため、共培養下、ならびにBt添加による脂肪細胞内の各protein kinase発現レベル変化の評価を行う。共培養下、cAMP産生阻害薬(アデニル酸シクラーゼ阻害薬)によるBt、PGE2の脂肪細胞内cAMPレベル変化の評価を行う。 4.cAMP経路阻害によるlipolysisの抑制効果を確認するため、共培養下、cAMP産生阻害薬によるBt、PGE2のFFAs放出量変化の評価を行う。
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Causes of Carryover |
次年度の計画は、以下の3点について実験を行う。 1. 短鎖脂肪酸レセプターであるGPR41の選択的阻害薬(PTX)、アデニル酸シクラーゼの阻害薬(SQ22536)を用いた実験を行い、Btのlipolysis抑制効果が打ち消されるか確認を行う。2.脂肪細胞内のレセプターによるシグナル反応の経路を確認する実験を行うため、共培養ならびに、Bt、PGE2の細胞内cyclic AMP(cAMP)レベルの変化の評価を行う。3.共培養ならびにBt処理によるcAMPシグナルを確認するためprotein kinaseの脂肪細胞内発現レベルを評価する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1. GPR41選択的阻害薬であるPTX、アデニル酸シクラーゼ阻害薬であるSQ22536、もしくはBt、PGE2存在下における脂肪細胞内のlipolysis評価について:共培養条件(直接法):培養液中の放出された遊離脂肪酸量(FFAs)に加え、Free glycerol量(濃度)を定量。2. 共培養下、Bt、PGE2存在下における脂肪細胞内のcAMP評価について:共培養条件(間接法: 脂肪細胞内のcAMP量(濃度)を定量。2. 共培養下、アデニル酸シクラーゼ阻害薬であるSQ22536存在下における、Bt、PGE2の脂肪細胞内cAMP評価について:共培養条件(間接法): 脂肪細胞内のcAMP量(濃度)を定量。3. 共培養下、ならびにBt添加による脂肪細胞内の各protein kinase発現レベル変化の評価について:共培養条件(間接法):脂肪細胞内protein kinase A, C mRNA、蛋白質発現レベルをreal-time PCR法、Western Blot法により検出。
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Research Products
(2 results)