2016 Fiscal Year Research-status Report
「料理を作る」過程における心理療法的アプローチの検討
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26350167
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
板東 絹恵 四国大学, 生活科学部, 教授 (70208726)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 調理作業 / POMS / 唾液中αアミラーゼ / 机上作業 / 心理的安定 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】今回は大学生を対象に、グループでの調理作業と机上作業の心理的効果を比較することを目的とした。【方法】同意が得られた大学生男子5名(20.4±0.55歳)、女子67名(19.5±0.50歳)の合計72名(19.6±0.55歳)を対象に、4~5人ずつのグループで、調理作業と、座位での机上作業を120分程度行うことを介入内容とした。それぞれ作業前後に気分や感情を評価する質問紙POMSと、交感神経の興奮状態をみる唾液中α‐アミラーゼ(アミラーゼ)測定を試みた。またそれぞれの作業後に自由記述を含むアンケートと、一般的パーソナリティを見るための質問紙Big Five(BF)も実施した。【結果】それぞれ作業前後のt-test結果から、POMSの「緊張-不安」「抑うつ-落込み」「怒り-敵意」「疲労」「混乱」は、調理作業後いずれも有意に低下した。また机上作業についても作業後の低下は見られたが、調理作業に比較して有意水準が低かった。さらにアミラーゼは、調理作業後に有意に値が下がってたものの個人差が大きかった。調理作業後と机上作業のPOMSの比較では、「疲労」について有意に調理作業後が低い値を示した。自由記述のKJ法による分析から、調理作業の方が、快の情動が多彩で、作る達成感と対人協力の達成感の両面があり、自己効力感を持ちやすい傾向から、より未来志向的であった。また性別、年齢、BFの5因子、日常的調理作業の有無、調理作業の好き嫌いを独立変数に、調理作業後のPOMS値を従属変数とした重回帰分析結果では、特徴的な点として独立変数の「調和性」が「緊張-不安」「抑うつ-落込み」「怒り-敵意」「混乱」に対して、負の影響を及ぼす結果が得られた。【考察】調理作業は机上作業に比較して、立って実働したにも関わらず、疲労を感じる度合いも低く、調理作業による心理的安定が高まることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研費の助成を受けることにより、質問紙や唾液中αアミラーゼ測定のための使い捨てチップなどの購入することができ、集団に対する調査の実施が可能となった。そのため、効率的にデータを集めることができた。また、学会や研究会、研修会などへの参加費や会場までの旅費を捻出することができ、これまでの制約から緩和されたことから、本研究課題に対する示唆や教示を直接的かつ具体的に得られる機会が増え、その中から、あらたなアイデアや研究内容の深まりが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
調理作業という介入前後比較をしているため、複数回実施する質問紙のテスト効果が生じ、バイアスとなりうることは、この研究の限界点でもある。そのため、今後さらにn数を増やして検討したいと考えている。また唾液中αアミラーゼについては、個人差が大きい点が課題としてあげられ、測定値そのものの比較より、変化率として比較することを、現時点では考えている。また今後、客観的指標として、心拍センサーを利用しての心理的安定度の評価も検討しており、クリアな結果が得られにくい唾液中αアミラーゼ値の変化率から分析する方法と併用したい。そしてそのことにより、客観的指標の精度が高まるのではないかと考えている。また、心拍センサでは、調理作業中のデータも反映できることから、食材を切る作業や、加熱作業などの様々な調理作業、調理中の視覚や臭覚など感覚器官への刺激など、調理作業の種類や感覚器官への刺激状況などと心理的安定度の関係性もみることができるのではないかと考えている。調理作業を包括的に検討した場合と、様々な調理作業に影響を及ぼす要因を明確にすることにより、ライフステージや目的に合わせた調理実習が、心理療法的アプローチとして可能になるのではないかと考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度は、研究発表のために出席した学会開催日程と開催場所の関係上、複数回の往復をせずに、継続して移動した経緯があり、旅費支出が少なくてすんだ。そのため差し引き額を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の物品費として、質問紙および測定チップ、心拍センサーシールの購入に充てたい。
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Research Products
(6 results)