2014 Fiscal Year Research-status Report
津波被災後の三陸沿岸漁家の食生活及び海洋性微量元素類の摂取と健康状況に関する研究
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26350172
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Research Institution | Morioka Junior College,Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
千葉 啓子 岩手県立大学盛岡短期大学部, 生活科学科, 教授 (90197137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 孝男 東北文教大学, 人間科学部, 教授 (20004608)
猿渡 英之 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (30221287)
中塚 晴夫 宮城大学, 看護学部, 教授 (70164225)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 津波被災 / 沿岸漁家 / 食事調査 / 陰膳実測法 / 海洋性微量元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大地震・津波により被災した三陸沿岸に居住する漁家の食生活の実態を把握し、震災による食生活へ影響や、食事を介した海洋性微量元素類の摂取と健康状況との関連について明らかにする目的で、陰膳実測法による食事調査と健康診断を実施した。 調査は平成27年3月末に、岩手県大船渡市でワカメやウニ・アワビの養殖を主力とする漁家19名(男7名、女12名)を対象に実施した。対象者には事前に十分な説明を行い、調査への同意を得ている。また研究内容は岩手県立大学研究倫理委員会の承認を得ている。陰膳実測法による食事調査は、対象者が一日に口にした、全ての飲食物を朝食・昼食・夕食・間食(おやつなど食事以外に食べたもの)に分けて採取・回収した。対象者には食事票に食事内容を記録して提出してもらった。食事内容は食品毎に秤量した後、ミキサーで均一化して分析用試料を調整し、ポリビンに移して分析までー30℃で凍結保存した。対象者には食事検体回収日に健康診断(問診、形態計測、血圧測定、採血)、生体試料採取(尿、毛髪)、食生活アンケートも実施した。 現在、日本食品標準成分表2010年版を用い、食事票から栄養価計算を実施している。また、検査機関において血液生化学検査後、全ての検査項目の評価を行なっている。 前回の科研費研究期間に、沿岸の対照として岩手県内陸部農業従事者で同様の調査を行ない、得られたデータの一部を当該年度に学会発表や論文としてまとめた。また、食品成分表に記載が加わったヨウ素について、福島原発事故との関連も踏まえ、日常の食事からの摂取量を明らかにする目的で、分担研究者の宮教大・猿渡と東北文教大・渡邊が食事中ヨウ素量を分析中で、さらに宮城大・中塚はヨウ素の栄養価計算値と実測値との関係を検討している(平成26年度からヨウ素で科研費代表研究者)。今後、食事からのヨウ素摂取を多面的に解明できれば大変有意義である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災・津波により甚大な被害を受け、食生活を始め、通常の生活形態が一変した沿岸住民を対象とした調査であることから、陰膳実測法の実施に至るまでにかなりの期間を要したが、被災後、4年を経過した平成27年3月末にようやく食事調査が実現した。当初想定した対象者数よりやや少ない人数ではあるが、丁寧な事前説明を行い、合わせて住民の積極的な協力を得られた事から、結果として、大変精度の高い陰膳食事検体を採取する事ができた。年度末での実施であったため、採取された食事検体は秤量後、分析用試料として凍結保存した。毛髪・血液・尿などの生体試料も同様に分析用試料として前処理し、保存した。これら試料を用いた微量元素量の分析およびでーた解析は次年度へ継続している。これらの経過より、平成26年度における研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
陰膳食事検体とともに回収した食事票から、現在、対象者個人毎の一日の栄養計算を実施しており、これらをもとに今後、対象者の栄養素等摂取量や食品群別摂取量など、対象者の食事摂取の実態を解明する。23~25年度の科研費により、対象者の多くから被災後3年目の食生活アンケート調査を実施していることから、これらを合わせて沿岸住民の食生活における震災津波被災による影響を明らかにする。また、当該対象地域においては平成15年度においても陰膳実測調査を実施していることから、今回は同一地域での約10年後のフォローアップ調査として、栄養摂取や摂取食品品目等食生活の経年的変化についても解析する。 また、食事試料や生体試料について、微量元素類のみならず主要元素類も含めて分析を行い、海洋性元素類の摂取量を明らかにして、健康との関連について解明を試みる。
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Causes of Carryover |
当該年度の陰膳食事調査の実施時期が年度末の平成27年3月29日であったことから、健康診断業務を委託した岩手県予防医学協会での血液生化学検査の実施、健診結果の評価、対象者への結果通知書作成等は次年度での作業となり、業務遂行に係る経費の請求も次年度になったこと(①)、同様に管理栄養士による食事票の栄養価計算作業および対象者に渡す栄養素等摂取量等の報告書作成と事後報告会への出張も次年度に実施されるため、これら業務に係る経費の請求が全て、次年度5月以降になったため(②)。 分担研究者で次年度使用額が生じた理由は、渡邊においては元素分析作業を行なう宮城教育大学への出張が次年度に継続され、その経費として、また猿渡に関しては元素分析機器の部品購入、精度管理に必要な経費等の支出が次年度に繰り越されたことによるものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した金額については、代表者の千葉に配分されている上記の理由欄で①に該当する岩手県予防医学協会から請求される健康診断業務に要する経費として約20万円を、管理栄養士による栄養価計算関係・報告会出張等②に要する経費として約40万円を使用する予定。また、採取した毛髪・尿・血液等の生体試料中元素分析を進めるので、試料分析のための前処理に高純度硝酸他グレードが高く普通より価格が高い試薬の購入に、約10万円を充てる。さらに実験補助に学生を雇用するため、謝金の一部として約8万円の支出することで繰り越した全額を次年度において支出する予定である。 分担研究者の手元で残が出ている分については、渡邊の場合は元素分析のため、宮教大への出張経費および情報収集のための学会参加費用として使用。猿渡の場合はヨウ素測定のための分析試薬や器具類の購入に充てる。
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Research Products
(6 results)