2014 Fiscal Year Research-status Report
養鶏現場で簡便かつ迅速に実施できるカンピロバクター保菌鶏の超高感度検出法の確立
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26350179
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
川津 健太郎 大阪府立公衆衛生研究所, その他部局等, 研究員 (20260367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 淳子 大阪府立公衆衛生研究所, その他部局等, 研究員 (30455547)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カンピロバクター / 蛍光イムノクロマト法 / 高感度検出 / 鶏糞便 |
Outline of Annual Research Achievements |
食鳥処理過程でカンピロバクター保菌鶏の腸内容物に汚染された鶏肉は、カンピロバクター食中毒の主な感染源となる。本食中毒の発生を抑えるためには、養鶏現場にて鶏の保菌実態を詳細に把握し、それを踏まえて養鶏場の清浄化に取り組むことが重要であることから、本研究は、超高感度な蛍光イムノクロマト法によるカンピロバクター保菌鶏の現場即応型検出法を開発し、それを用いて養鶏場における鶏の保菌実態を把握することを目的としている。 今年度は、まず、蛍光イムノクロマトの試作キットを作成し、それを用いて、様々な菌濃度に調整したカンピロバクター加熱死菌液を測定し、最適の検体量及び反応時間とその際の検出感度について検討した。その結果、最適検体量は70~85μLで、最適反応時間は20~30分であった。また、測定に際して、検体に0.1%濃度で界面活性剤(TritonX-100)を加えることにより、フロースピードが適正化されて非特異反応の発生を抑えることができた。この条件での試作キットの最小検出感度は、1mlあたり560CFUであった。 次いで、本試作キットを鶏糞便の検査に応用する前に、その検出感度が優れていることを更に検証するために、市販鶏肉(未加熱)60検体の24時間増菌培養液を用いて、細菌培養法、金コロイドイムノクロマト法及び本試作キットによるカンピロバクター検査を実施し、その結果を比較した。細菌培養法では、20検体からカンピロバクターが検出された。その内、金コロイドイムノクロマト法では7検体(35%)が陽性になったのに対して、本試作キットでは14検体(70%)が陽性となった。一方、細菌培養法で陰性となった40検体については、両法共に陰性であった。従って、食品の増菌培養液を用いたカンピロバクター検査においても、従来の金コロイドイムノクロマト法より本試作キットが優れていることが実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に作出している抗カンピロバクターモノクローナル抗体4B4(4B4抗体)は、抗カンピロバクター抗体として優れた親和性を持つことが実証されているので、今年度は、これを用いて、蛍光イムノクロマト法によるカンピロバクター検出系を開発するための実験を行い、以下のことを達成することができた。 1. 蛍光イムノクロマトキットを試作し、その最適な使用条件を設定することができた。 2. 最適な使用条件での本試作キットの最小検出感度は1mlあたり560CFUであり、従来の金コロイドイムノクロマト法と比較して、約100倍の高感度を達成することができた。 3. 実検体(市販鶏肉の増菌培養液)を用いて、本試作キットが従来の金コロイドイムノクロマト法より優れていることを実証することができた。 以上のように、今年度の研究は、おおむね順調に進展した。今後は、鶏糞便を用いて、その前処理法について検討する必要がある。その際、今年度に実施した本試作キットによる食品増菌培養液からのカンピロバクター検出の際に得られた知見が大いに役立つ考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、養鶏場及び食鳥処理場から多数の鶏糞便をサンプリングし、平成26年度に構築した蛍光イムノクロマト法の試作キットを用いてカンピロバクターの検出を実施し、その実用性を評価したい。 まず、鶏糞便を蛍光イムノクロマト法で検査するために最初に検討しなければならない鶏糞便の前処理法については、市販の金コロイドイムノクロマト用鶏糞便前処理キットを利用し、それらが蛍光イムノクロマト法に応用可能であるかを検討する。その際、平成26度に実施した蛍光イムノクロマト法による食品増菌培養液からのカンピロバクター検出の際に得られた知見も踏まえて、必要に応じて改良を加え、蛍光イムノクロマト法に最適な糞便前処理法を構築する。 また、鶏糞便を検査する際には、細菌培養法、金コロイドイムノクロマト法及びリアルタイムPCR法によるカンピロバクター検出も同時に実施し、それらの結果と比較することにより、蛍光イムノクロマト法の有用性について検証する。 更に、養鶏場及び食鳥処理場からの鶏糞便のサンプリングについては、それを定期的に実施して、サンプリング時期や農場の違いによって、汚染の程度にどのような違いがあるのかも検討したい。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、ほぼ計画通りに研究費を使用することができたが、定価等の変動により、結果として非常に少額(199円)の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に生じた残額は、平成27年度の研究費に組み入れて、物品費の一部として使用する。平成27年度は、蛍光イムノクロマトキットの作製、金コロイドイムノクロマトキット、リアルタイムPCR関連試薬、鶏糞便前処理キット及び細菌培養関連試薬の購入に予算を使用する予定である。
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