2015 Fiscal Year Research-status Report
理科教育における授業分析・解釈と教育内容構造との関係究明及び記述理論の統合
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26350180
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大野 栄三 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60271615)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 教科書分析 / 教育内容 / 束論 / 授業プラン / 授業分析 / 理科教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度には、教科書記述が別の教科書記述を分有(partake)しているとする片側関係を設定し、物理教科書に書かれている教育内容の構造を表現する理論的枠組みを提案した。平成27年度は、分節化された教科書記述から成る教育内容の集合A={a, b, c, ... } とクラスの生徒の有限集合X={ x1, x2, x3, ...}、および生徒xi(i=1, 2, ...)が分節化された教育内容aを理解していると教師が期待する度合いを示す特性関数f(a, xi)を設定し、教科書記述の分析と授業展開との関係を考察した。 分節化された教育内容の集合は、その要素間の論理的な関係をもつ半順序集合と考えることができる。しかし、その構造は教科書記述がもつ構造であって、実際の授業展開を表しているわけではない。そこで特性関数fを定義して、 授業プランの構造(授業展開)と関連付けて分析することができるようにした。要素a, b∈Aの間に関係a→bがあることを、1)aがbの一部を共有する片側関係が成立しており、2)すべてのxi∈Xに対して、f(ba,xi)≧f(ab, xi)であると定義する。ここで、f(ba,xi)= f(b, axi)f(a,xi)であり、f(ba,xi)は、aを教えた後にbを教えたときに、xiがそれらを理解していると教師が期待する度合いを表している。f(ab,xi)は教える順序が逆の場合の期待度である。fの値は現在の科学で明らかにすることはできず、教師の経験値として与えられる。特性関数fも合わせることで、集合Aの半順序構造(教科書記述間の関係)と、教師が作成した授業プランの順序構造との間に成立する関係を分析することができた。 平成27年度の成果として、Aの構造を束論的図形として表現し、力学教育分野で授業プランと教科書記述との関係を分析し発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)授業分析・解釈の分岐記述理論 教師が作成した授業プランの構造を分析するための理論的枠組みを提案するのが遅れたため、平成27年度に予定した国際会議での発表を見送った。年度後半で提案でき、国内学会で発表を行った。 (2)教育内容の構造記述理論 特性関数を導入し見通しのよい理論となった。予定通り進んでいる。 (2)2つの記述理論の関係とそれらの統合 上述の(1)と(2)で記述された構造間にガロア接続が成立しているという仮説を設定することができたが、(1)の遅れのため、いろいろな分野・領域の事例で検証されていない。
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Strategy for Future Research Activity |
理論的な枠組みは設定できたので、エフォートを増やすことによって平成27年度の遅れを取り戻す。
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Causes of Carryover |
研究の遅れがあり、国際会議での発表を1件実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度後半に研究が進んだので、今年度の成果発表にはその成果も含め、学会発表と論文投稿を増やす。
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Research Products
(3 results)