2016 Fiscal Year Research-status Report
日本型チュートリアル方式で物理概念形成と論理的思考力育成を図るプログラムの開発
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26350185
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
植松 晴子 (小松晴子) 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70225572)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 相互作用型授業 / 学習姿勢 / 能動的関与 / ファシリテーション / 学習観 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 相互作用型授業を通じた学生の物理概念の獲得について 米国で開発された教材を用いて相互作用型物理授業を日本の大学で継続的に実施し,日本のカリキュラム,授業観・学習観に適合した教材や実施方法が確立しつつある.一方,前年度までの研究により,同じ相互作用型授業を受講しても,物理概念の理解の進み方は学習者の学習姿勢によって異なることが示唆されている.そこで,授業前の概念理解度が学習姿勢を表しているものとして,授業前後の理解度の伸びとの関係を先行研究と比較した.その結果,実施した相互作用型授業では,物理の学習に積極的・消極的と考えられる学習者それぞれの概念理解度の伸びが異なり,学習者の多様性に配慮したアプローチの必要性が明らかになった. 2. ファシリテーションの質向上について 相互作用型授業の要であるファシリテーションをより有効にするため,TA教育を系統的に行う手法を検討した.米国での実施例を参考に,学生の解答例のデータが蓄積された問題を提示して,誤概念や学生に見られる困難を意識させた.また,教材をTA同士が分担して互いに内容を紹介し,ファシリテーションに関する議論を活性化した.1.の効果とあわせて,相互作用型授業を通じた物理概念の理解度の向上が,安定して見られるようになった. 3. 教員間の意識の共有について 本研究で実施している相互作用型授業を,所属機関で複数クラス開設とし,他の教員と共同で授業を実施した.また,実験の授業で,学生の能動的関与を促す取り組みを自然科学系の教室全体で開始した.物理教育研究の多くの知見を他の分野の教員と共有する機会となっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
相互作用型授業を継続的に行って,教材の内容や実施方法を改善し,日本のカリキュラム,授業観・学習観に適合した形で実施する土台ができ,本研究課題の目的の一つは概ね達せられた.また,授業でのファシリテーションを担うTAの教育を系統的に行う見通しもできてきた. 論理的思考力の育成については,より長期的な取り組みが必要である. 所属機関での授業研究の機会を増し,学生の理解度や学習観の情報を共有する体制ができてきた.学生の能動的関与の必要性についても共通認識をもつようになり,単一の授業での実践にとどまらず,相互作用型授業が定着する可能性が示唆される.
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Strategy for Future Research Activity |
教材の内容や授業の実施方法,TA教育については継続的に改善する.物理概念獲得に影響する個々の要因に対する取り組みは,その由来などについて継続的調査が必要である.学生の理解への道筋も抱える困難も多様であることが明らかになっており,集団での授業において,協同学習を活かしながら多様性にどう対応するかが課題である.ラーニング・アシスタントのようなさまざまな背景をもつファシリテータの活用も検討したい. 学生の能動的関与を促し論理的思考力を育成するカリキュラムを構築するため,継続的に授業研究を行い,教員間で学生の理解度や学習観の情報を共有する.
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Causes of Carryover |
平成28年度までに,相互作用型物理授業の実践と学習者を対象とする調査等によって,物理概念形成と論理的思考力を図るプログラムを開発してきたが,学習者が概念を理解する過程も抱える困難も想定以上に多様であることが明らかになった.研究計画を修正して,多様性に配慮したファシリテーションを取り入れることがより効果的であると考えられた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度までは,物理専攻の教員・大学院生が相互作用型授業のファシリテーションにあたってきた.次年度には,物理非専攻の大学院生をTAに加えることにより,ファシリテーションを多様にし,プログラムの開発に新しい視点を組み込む.
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Research Products
(2 results)