2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26350186
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
下井倉 ともみ 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (30569760)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 天文教育 / 教育養成課程 / 理科教育 / 小学校理科 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、国内外の研究機関において得られた最先端の科学データを利用した天文教材の開発と、その教材を用いた学習プログラムを開発することである。これまでに、複数の観測装置や数値計算により得られた科学データを用いて、①太陽系創成に関する美しい2次元画像と、それらについての②専門の研究者自身による躍動感のある解説を作成した。平成27年度は、これらの教材を組み合わせた天文の学習プログラムを開発し、東京学芸大学の教員志望学生を対象に教育実践を行った。 授業実践では、2つの授業科目において(1)地学の知識のほとんどない文系の学生(受講生60人)が、授業を通して太陽系創世の理解を得ることができるか、(2)天体望遠鏡に関する予備知識のほとんどない学生(受講生80人)が、短時間の講習を通してその操作技術や知識を習得し、また,天体観察を実践するにあたっての障害(苦手意識や不安)を解消することができるかどうかを調査した。 (1)について、全15回の講義を行った。初回に事前調査、最終回の事後調査を行い、受講者の知識の習得度を調査した。調査は、太陽系の形成に関するもので、事前・事後で同じ問題を出した。その結果、事後調査では正答率が60%を超え、学習プログラムの有効性を示せた。 (2)について、天体望遠鏡を取り扱う3時限の実習を行った。受講した全学生が望遠鏡の基本的な仕組みを正しく理解し,その操作に必要な最低限の技術や知識を習得できた。また、実習後に行ったアンケート調査により、受講生が天体観察の重要性や必要性について十分理解したことが伺えた。将来、彼ら自身の担当する授業で天体観察を行う可能性についても、85%の学生が肯定的であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東京学芸大学では、2つの授業を利用して、開発した学習プログラムを用いた教育実践を行った。 ①教養科目「入門地学」では、受講生60人に、事前に太陽系や地球に関する基本的な知識の有無について調査した。‘地球誕生が何億年前か’、‘地球の直径は’、‘太陽の主成分は’といった質問に正解した学生は全体の3割程度であった。太陽系や地球に関する地学の基本的な知識を持ち合わせた学生が少ない事が明らかになった。そこで、開発した学習プログラムを用いて、画像や研究者の解説を取り入れた講義を行い、全講義終了後に再度調査を行った。その結果、正答率は6割を超え、基礎知識を十分習得させることができた。 ②免許法上の教科に関する科目である「地学実験」では、地学実験で実施する複数の内容のうち、天体望遠鏡の実習についての実践を3時限分で行った。まず太陽の観察に関する講義を行い、その後、口径8cmの屈折式天体望遠鏡を組み立てて、操作方法を習得するための実習を行った。天体望遠鏡1台につき2~3人で実習を行い、約2時間程度の実習時間をとった。実習後、天体望遠鏡を組み立ててそれを操作し、実際に天体望遠鏡で太陽を観察させるまでの実技試験を行った。実技試験の結果、受講者全員(80人)が合格基準に達した。授業前には天体望遠鏡に触れることさえためらっていた受講者もいたが、授業後にはほとんど全員がその操作に慣れていた。理科の授業での天体観察の必要性についてどう考えているかについて、事前調査では「必要である」、「まあ必要である」をあわせて70%であった回答割合が、事後調査では97%に増えた。実践前と比較すると、小・中学校の理科の授業での天体観察の必要性をより深く認識した学生の割合が増えたことから、授業実践が教員志望の学生の意識の向上に有効だったと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
教育の評価・論文化 教育実践を引き続き行うとともに、学習プログラムの完成度を高める。また、開発した天文素材・学習プログラムの効果を評価する。本研究が科学への理解向上についてどのように有効に働くのか調査し、論文化を行う。さらに、開発した天文教材と、学習プログラムを用いた授業実践案のテンプレートをホームページで公開することで、高い波及効果をねらう。 学校等の教育普及者との協力のもと、開発した天文教材を用いた効果的な普及を行うための学習プログラムを開発する。東京学芸大学の付属学校で試験的な教育実践を行った後、さらに完成度を高め、各地の小・中・高等学校や科学館・博物館などの社会教育施設での教育実践を行う。また、天文教材及び学習プログラムの教育効果の定量的な分析を行う。
|
Causes of Carryover |
当初は国外の国際会議出席を予定していたが、国内開催の国際会議へ出席したため。そのため旅費が予定よりも少額となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
国内開催の教育学会や天文学会等の年会参加に使用する。
|
Research Products
(6 results)
-
[Journal Article] Dense Clumps and Candidates for Molecular Outflows in W402015
Author(s)
Shimoikura, T., Dobashi, K., Nakamura, F., Hara, C., Tanaka, T., Shimajiri, Y., Kawabe, R.
-
Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 806
Pages: 201-220
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-