2015 Fiscal Year Research-status Report
モデルを志向した算数・数学の垂直カリキュラムの開発
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26350188
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
池田 敏和 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (70212777)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | モデル / 数学的知識 / 再帰的活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
応用指向と構造指向を統合したモデル志向という立場から、モデルをつくって考えるという行為に着目している。モデルの役割として,大きく二つの役割「仮想空間としての役割」「対比の対象としての役割」を特定し、複数の世界に跨る活動を通して、数学的知識が構築され成長していく再帰的な活動を特徴づけた。 第1の活動は、ある世界に生じた問題を、複数の世界に翻訳してモデルをつくり、それらの行き来を通して問題を解決していく活動である。第1の活動が終わると、問題解決の後に、複数の世界に跨る数学的知識の同異を明らかにすると共に、その関連性を明確にしていこうとする行為が期待される。第2の活動である。また、このような対比を通して、複数の世界には対応している要素があるのに、ある世界においては対応する要素が存在しないという場面が見出される。このような場合は、その未知な要素(ある世界にあって、別の世界にはまだその存在が明らかでない要素)をさらに明らかにしていく行為が期待される。さらに、開発した数学的知識をモデルとして捉え、モデルが適用される具体的な場面を広げていく活動が行われる。未知な要素を探り、それがモデルに適合するかどうかを探っていくことになる。第3の活動である。最後に、不整合な要素が見出されると、整合性がとれるようにするために、拡張・統合を通して、新たな数学的知識が構築される。第4の活動となる。 そして、上記の再帰的な活動の中では、複数の世界が対比的に扱われ、未知な要素、不整合な要素を原動力として、「互いが互いを成長させる」ことを可能にしている。問題が生じた世界を適宜捉え直しながら、複数の世界をふりこのように行ったり来たりすることによって、複数の世界における未知な要素、不整合な要素が新たな問いを引き起こすための原動力になり、各々の世界を互いに成長させることにつながっていくわけである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、応用志向と構造志向を統合することを意図しており、その鍵となる概念としてモデルに着目している。本年度は、そのための基礎となるモデルの役割を大きく2つ特定したと共に、数学的知識を成長させていくための再帰的活動について特徴づけた。この再帰的な活動は、垂直カリキュラムを開発していく上での基本的な枠組みとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、数学的知識を成長させていくための再帰的活動について、教材開発を試みるための枠組みを設定する必要がある。そして、その枠組みに基づき、具体的な教材を開発すると共に、その評価を行っていく必要がある。垂直カリキュラムを考案していく上での具体となる研究である。
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Research Products
(6 results)