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2016 Fiscal Year Research-status Report

実験で深化させた粒子認識を持つ理科教員を養成するための系統的実験教材開発

Research Project

Project/Area Number 26350222
Research InstitutionHokkaido University of Education

Principal Investigator

田口 哲  北海道教育大学, 教育学部, 教授 (60281862)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 柚木 朋也  北海道教育大学, 教育学部, 教授 (00311457)
Project Period (FY) 2014-04-01 – 2019-03-31
Keywords科学教育 / 化学教育 / 科学教員養成 / 実験・観察 / 原子・分子 / 粒子 / 物質認識 / ICT
Outline of Annual Research Achievements

理科教員を目指す学生の入学時の粒子認識は,物質は粒子(原子)でできているとの前提を基に演繹的推論だけで身につけてきたものであり,探究的な実験(体験)に基いて「直接は見えないが,物質は確かに粒子からできている」との確信に至ったものとは必ずしも言えない。そこで,科学者が粒子観を獲得するに至った歴史的実験の再現・追試を含め,「巨視的・微視的双方の視点から,実験に基いて粒子認識を深化させた理科教員」を養成するための系統的実験教材の開発を本研究の目的としている。
28年度は,27年度から前倒しで研究を開始した「電子の粒子性の検証実験教材の考案」について引き続き研究をおこなった。既知の公称半径を持つポリスチレンマイクロ球を使用し,ポリスチレンマイクロ球のサイズが球の帯電電気量の測定値に与える影響を明らかにした。ここでポリスチレンマイクロ球の半径は,本研究でも実測し,公称半径とほぼ一致することを確認した。
また「『ブラウン運動によるアヴォガドロ定数Lの測定』の簡便な追試法」についても28年度に研究した。タブレット端末を装備したデジタル顕微鏡を用いてポリスチレンマイクロ球の水中でのブラウン運動を撮影した結果を解析することで,CODATAの推奨値に近いアヴォガドロ定数を得るための条件を検討した。具体的には,ポリスチレンマイクロ球のブラウン運動の様子を動画もしくは一定時間間隔の静止画として顕微鏡下で撮影し,30秒毎の球の位置の測定結果からアヴォガドロ定数を求める方法を検討すると共に,ポリスチレンマイクロ球のサイズが,求められたアヴォガドロ定数の値に与える影響を検討した。その結果,条件によっては,CODATAの推奨値に近いアヴォガドロ定数の値を得ることが可能であることがわかった。
以上の研究実績は,理科の教員養成においてこれら教材を活用する上での基礎データを提供するものである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

28年度は,「電子の粒子性の検証実験教材の考案」を計画していた。具体的には,ミリカンの油滴実験をポリスチレンマイクロ球を用いた実験に替え,可能な限り補正無しで電気素量eが求められ,電荷の量子分解能が高い実験教材の考案を目指した。研究の結果,以下のことを明らかにした。
(1)市販のポリスチレンマイクロ球(公称半径 0.253μm,0.373μm,0.5125μm,0.770μm,0.9625μm の5サイズ)の自由落下速度の測定により,球の半径rを求めた。各サイズの球で測定を50回繰り返したところ,求められたrは概ね正規分布するとともに,相対誤差3%以内で公称半径と一致することを確認した。このことから,ポリスチレンマイクロ球の帯電電気量を求める際に必要なrの値は,rの測定を直接行わずに公称半径を使用しても可能であることがわかった。
(2)ポリスチレンマイクロ球の半径を大きくしていくと,球への帯電電気量は電気素量の整数倍に近づくことがわかった。ポリスチレンマイクロ球に働く空気の粘性抵抗は「ストークスの定理」に従うものとみなして帯電電気量の算出を行っているが,上記は,半径rが小さすぎると厳密にはこの定理が成立しないことによるものと思われた。例えば,比較的大きなサイズr=0.770μmのポリスチレンマイクロ球では,帯電電気量は電気素量の1.12倍の整数倍となり,厳密には電気素量の整数倍にはなっていないものの,「電子の粒子性」(量子性)を示す教材としては悪くない結果が得られた。
「『ブラウン運動によるアヴォガドロ定数Lの測定』の簡便な追試法」については,当初の研究計画「デジタル顕微鏡下でのポリスチレンマイクロ球の運動の動画撮影を行い,画像解析を行うことで一定時間間隔ごとの粒子の位置を測定し,その結果を用いてLを簡便に求めるための方法を考案すること」は概ね達成できた。

Strategy for Future Research Activity

「電子の粒子性の検証実験教材の考案」については,ポリスチレンマイクロ球を電子顕微鏡で観察することで実測した半径rの値を球の自由落下速度の測定で得られたrの値と比較することに加え,ポリスチレンマイクロ球の懸濁液の種類(水,アルコール)や使用するポリスチレンマイクロ球の種類が帯電電気量に与える影響について検討する。さらに,本実験教材を教員養成課程の学生に対する教育実践において使用することで,教材の効果を検証する。

「『ブラウン運動によるアヴォガドロ定数Lの測定』の簡便な追試法」については,引き続き,再現性高くLの値を求める方法を,ポリスチレンマイクロ球のサイズや温度による影響を検討する中でさらに追求する。また,スマートフォンのカメラを使って「ガラスビーズ顕微鏡」を作成し,それを用いてポリスチレンマイクロ球のブラウン運動を測定することで,市販の顕微鏡を使用せずに安価にLを測定できないかどうかを検討する。

Causes of Carryover

今年度,実験補助業務に関する謝金の支出を予定していたが,研究の進行状況から次年度に実験補助業務を行った方が研究の進展にとってより効果的と判断したため,謝金として次年度使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

上記の補助業務を,次年度使用額と翌年度請求助成金の一部から支出する予定である。

  • Research Products

    (3 results)

All 2017 2016

All Journal Article (1 results) (of which Acknowledgement Compliant: 1 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] 力の実感を伴った測定が可能な大気圧標高依存性測定実験-ガラスシリンジ・力センサー・GPS搭載移動端末の活用2017

    • Author(s)
      田口 哲,渕上 哲,仲鉢大地
    • Journal Title

      平成28年度日本理科教育学会北海道支部大会発表論文集

      Volume: 27 Pages: 13

    • Acknowledgement Compliant
  • [Presentation] ポリスチレンマイクロ球を活用した電気素量測定実験に対する球サイズの影響2017

    • Author(s)
      中野智文,田口 哲
    • Organizer
      日本化学会第97春季年会
    • Place of Presentation
      慶應義塾大学日吉キャンパス
    • Year and Date
      2017-03-17
  • [Presentation] 力の実感を伴った測定が可能な大気圧標高依存性測定実験-ガラスシリンジ・力センサー・GPS搭載移動端末の活用2016

    • Author(s)
      田口 哲,渕上 哲,仲鉢大地
    • Organizer
      平成28年度日本理科教育学会北海道支部大会
    • Place of Presentation
      北海道教育大学札幌駅前サテライト
    • Year and Date
      2016-10-01

URL: 

Published: 2018-01-16  

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