2016 Fiscal Year Research-status Report
幼小連携を視野に入れた音楽と科学のコラボレーションによるアウトリーチ開発
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26350249
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
荒川 恵子 京都女子大学, 発達教育学部, 准教授 (20319445)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 典子 大阪人間科学大学, 人間科学部, 准教授 (30413363)
岡林 典子 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (30331672)
谷口 高士 大阪学院大学, 情報学部, 教授 (20249395)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 演奏によるアウトリーチ / 音楽と科学のコラボレーション / 幼児の科学的興味 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度の成果としては、以下、原著論文が挙げられる。「幼稚園における音楽と科学のコラボレーションによるアウトリーチ活動の成果と課題-「海の生き物探険」をテーマとした子どもの目と耳と知的好奇心に訴える演奏会を通じて-」(関西楽理研究会発行『関西楽理研究』2016/12発行 豊田典子 荒川恵子 豊田秀雄 岡林典子 内田博世 谷口高士」これは、2016年2-3月に企画した大阪府、京都市の大学付属幼稚園にて行った「海の生き物探検」の理科的内容を含む演奏会を対象として、当日の画像記録の質的分析、園児とともに鑑賞した保護者からのアンケートや保育者による演奏会後の保育室での観察記録、主任教諭へのインタビューをもとに、演奏会の意義とその成果を検証したものである。 我々の本演奏会のコンセプトは、(Ⅰ)ほんもののクラシック音楽の生演奏の提供(Ⅱ)子どもの科学的興味を喚起する理科教育的な内容を分かりやすく提供、(Ⅲ)観て、聴いて、体験して、子どもの心や記憶に残る参加型プログラムを導入、の3本柱である。(Ⅰ)はマリンバに中心を置いた。身近な楽器でありながら、ヴィルトゥオーゾ的な演奏もできる表現力豊かな楽器であることをハチャトリアン作曲《剣の舞》など演奏して示して驚きを与え、マレットの種類や奏法によって様々な音が出るのを、見て、聴いて、楽しめるように教育的に配慮した。(Ⅱ)は「海の生き物」クイズを行ったが、模造紙に書いたジンベエザメ実寸大の絵を用いて大きさを実感させ、歯の形状の相違から食性の違いを学ばせたり、クジラの祖先も示した。単に生きものの名前を知るだけでなく、海の生きもののかたちや行動が、生存の為の結果であることを紹介する内容を多く盛り込み、我々の意図する「知的好奇心の種まき」を行った。尚、2月13日に大阪の私立幼稚園にて「生物の体の大きさと環境」に関する理科的内容を含む訪問演奏会を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
幼稚園において、小学校の学びと接続できるような「音楽と科学のコラボレーション」のアウトリーチのコンテンツ開発を行ってきた。我々のコンセプトは、(Ⅰ)ほんもののクラシック音楽の生演奏の提供、(Ⅱ)子どもの科学的興味を喚起する理科教育的な内容を分かりやすく提供、(Ⅲ)観て、聴いて、体験して、子どもの心や記憶に残る参加型プログラムを導入、の3本柱である。(Ⅱ)の領域について、①「恐竜(古生物学)」②「生物観察(分類、行動分析、食物連鎖)」③「音の物理的側面」④「宇宙(天文学)」⑤「地球環境問題(気象学)」の5分野を設定して行ってきた。特に生物は、園児にとって身近な存在であるため興味を喚起しやすいということから、2014年度は、鳥の生態や、京都新聞掲載記事からヒントを得て「動物の糞からいのちと地球の不思議を学ぶ」内容など、地上の生物を中心に扱った(2015年度に研究報告1本、原著論文1本執筆)。2015年度は、生命の源ともいえる海に着目し、海の生物を中心に扱った(2016年度に原著論文として執筆)。2016年度は「動物の体の大きさと環境」についてのアウトリーチを行った。つまり、②「生物観察(分類、行動分析、食物連鎖)」を中心に扱い、楽器を扱う際に、必然的に楽器の大きさ、長さと音高の関係、マレットの撥の固さと音色の相違などに着目させることになるので、③「音の物理的側面」にも触れることになった。 生物を取り上げる際も、生きものの名前を取り上げるだけで終わらせず、生物のかたちや行動が、生存の為の結果であることを紹介する内容を多く盛り込んでいる。子どもの知的好奇心を大いに揺さぶり、楽しませながらも興味の連鎖を生み、生きものの神秘について、「もっと知りたい」という強い気持ちを小学校での学びへ連携していくことができれば理想的であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
アウトリーチ活動は理論化することが難しい。我々には原著論文として採択された論文もあるが、理論面をより堅固にすることが課題である。本研究では、エビデンスに基づいた開発を行うと謳ったが、そう簡単ではないことを日々感じている。これまで一連の研究において①実践者の思考や実践内容、②演奏会中の子どもの様子の映像からの行動分析(即時データ)、③保護者等のアンケート回答、④一部の演奏会における事後の行動変容(教諭の観察、主観によるもの)を収集し分析してきた。特に、④は実施園の保育者に多大な負担をかけることが予想され、一昨年までは実施できていなかった。しかしながら、演奏会が一過性のものでないことを確認するためには、必要なデータである。 そこで、追跡調査として、昨年より、実施園の保育者による観察記録を依頼している。演奏会当日から1か月間、気づいたことを自由記述するよう依頼した。2015年度は園児たちが演奏会を振り返るきっかけとなるように、すみだ水族館監修『魚たちが飛び出す!ARすいぞくかん』(東京書籍2014)など海の生きもの「図鑑」と、海遊館で購入したジンベエザメ他、ぬいぐるみを演奏会終了直後、両園に提供した。2016年度はネイチャー・プロ編著・増井光子監修『どうぶつのからだ』シリーズ全6巻(偕成社 2010)を提供した。これは どうぶつの「目」、「鼻」、「口」、「耳」、「手と足」、「しっぽ」に焦点を当て、美しい写真によって編集されており、なぜそのような形になったのかを教える内容である。子どもたちが内容に興味を持ったことが追跡調査によってわかっている。 また①「恐竜(古生物学)」②「生物観察(分類、行動分析、食物連鎖)」③「音の物理的側面」④「宇宙(天文学)」⑤「地球環境問題(気象学)」の5分野のうち、①、④、⑤についても今後アウトリーチを行えたら良いと考えている。
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Causes of Carryover |
代表者の荒川が、第6回アジア・太平洋音楽認知科学協会国際大会(2017年8月25日ー27日京都国立博物館及び京都女子大学にて開催)の組織委員長を引き受けざるをえなかった為、各方面への交渉や助成金申請他、多忙をきわめ、研究を計画通りに進めることが困難となった。また、本テーマとは別テーマで、大会にて発表することになり、輪をかけて多忙であった。2017年度は、いよいよ学会の日を迎えるが、様々なことが軌道に乗っているので、2016年よりやや動きやすい。計画的に研究を進める予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
報告書を兼ねて著書を作ることにした。費用が足りなくなった場合、自費で賄う予定である。
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Research Products
(1 results)