2015 Fiscal Year Research-status Report
銀河系中心天体 Sgr A*事象を使った教育活動とその評価
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26350255
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Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
大西 浩次 長野工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20290744)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 科学リテラシー / 科学的研究手法 / 天文教育 / ブラックホール / 系外惑星 / 重力波 / Sgr A* / S2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①最新の天文学的の研究や観測状況をリアルタイムに市民に伝えることで、科学的な研究の現場を市民とリアルタイムに共有し、②科学的な研究手法の意味を市民に理解・普及することを目指すことである。このために、研究者と教育者の混合組織による研究と教育が同時進行する③研究者・教育者の協調によるスタイルの科学リテラシー教育の手法を作ることにある。 当初、この目的として、銀河系中心の巨大ブラックホール(Sgr A*)にガス雲が落ちることで起きる諸現象(SgrA*事象)を対象とする予定であったが、平成26年度中に起きると期待されていたSgrA*事象は起きなかった。原因は、ガスと思われていたG2という天体が、周りに電離ガスを持つ星のためであろうと考えられている。このため、平成26年度の途中より、研究の対象をブラックホールに関係する諸現象(X線衛星Astro-H(愛称ひとみ)による観測広報などを含む)や系外惑星系など最新の天文学に関することに広げて、研究を再開した。 ブラックホールに関しては、研究者と教育者の連携を深めるための第2回目の研究会(長野ブラックホール天文教育研究会)を5月に開催し、ブラックホールを使った天文教育教材を実際に開発している。これらは現状と成果を学会等で発表している。また、系外惑星系に関しては、国際天文学連合(IAU)初の天体命名キャンペーンを通じて、広報普及活動を展開した。 現在、「研究者と教育者によるネットワーク、研究者と市民のネットワークによる科学教育」の実践として、ブラックホールと系外惑星をキーワードにした教育プログラムのための組織が2年目となり、実際にいくつかの教材案が提案されているが、実際の使用は平成28年度の予定である。これらの活動をベースに、平成28年度内に、教材開発や啓蒙活動を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的として、研究者・教育者の協調により、科学的な研究手法の意味を市民に理解・普及するための手法を作ることである。ここで、本研究での科学リテラシーの向上のための対象として、銀河系中心巨大ブラックホール天体Sgr A*を考えていたが、期待されているSgrA*事象が起きなかったため、Sgr A*事象を観測していたブラックホール研究者や理論の研究者、および、教育関係者(高校や大学の教員、および、プラネタリウムなどの社会教育関係者)など20人規模のブラックホール教育研究会を結成し、ブラックホールに関係するテーマの最新の研究を伝える教材開発を目指してきた。この中には、X線衛星AstroH(愛称、ひとみ)の観測対象としてのブラックホールなども検討されていたが、年度末の衛星破損事故のため、この方はストップしている。 平成26年度後半より、系外惑星命名キャンペーンが行なわれて、系外惑星を対象にしたネットワークを構築しようとしたが、平成27年夏にキャンペーンが終わったことで、現状として研究者と教育者のうまい協調ネットワークの構築まで持ってゆくことが出来なかった。 そのため、再度軌道修正をして、現在、ブラックホールをキーワードにした広報普及と教材の開発を行っている。このようないくつかの不測の事態により、当初より遅れた状況で進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的、①最新の天文学の研究状況をリアルタイムに市民と共有し、②科学的な研究手法を伝えることと、③研究者・教育者の協調によるスタイルの「科学リテラシー教育の手法」を確立することである。まず、研究目的のための題材の対象としては、一つは当初より選んでいる「ブラックホール」を中心に教育リテラシーの作成のための会合を夏・秋・冬と行ない、研究者と教育者のネットワークの構築と教材の完成を目指す。 現在、ブラックホールの実在を証明する観測的手法として(a)ブラックホール・シャドーの観測、(b)ブラックホール近傍の相対論的効果の直接的検証、(c)重力波によるブラックホール固有振動の検証が考えられる。現在、(a)に付いてはサブリミ波VLBIによる観測が検討中であり、(b)については、銀河系中心巨大ブラックホールSgrA*の周囲の星団のなかで、S2星が2018年にSgrA*近傍約120AUを通過する前後にいくつかの相対論的効果が検証できる可能性が検討されている。また、(c)については2016年2月11日のLIGOによる発表があったように、昨年9月14日に、太陽質量の29倍と36倍のブラックホールが合体し太陽質量の62倍のブラックホールが出来る際に発生した重力波を世界で始めて検出したというトピックスがある。また、日本の重力波検出器KAGRAが動き出し、ここ1,2年内に重力波天文学が本格的に稼動する。 本研究では、(a)と(b)に関する研究グループと連携し、教育者を含むネットワークを構築してきた。これらによる成果を目指して、本年度中に研究会を3回ほど行なう予定である。また、(c)の重力波に付いてもあわせて連携グループを計画する。これらによって、現在の研究の進展を進めている研究者とそれらを伝えてゆく教育者との連携グループのモデルを作り、「科学リテラシー教育の手法」を定着させる。
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Causes of Carryover |
研究者と教育者の連携を深めるための研究会(ブラックホールに関しては、5月開催の長野ブラックホール天文教育研究会など)を、5月と2016年2月の2回考えていたが、2回目がずれ込んだため、当初、研究会参加の旅費として考えていた分が翌年に繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究者と教育者の連携を深めるための研究会を3回実施する。最後の会を大きなシンポジウムとする予定で、招待講演などで使用する。また、重力波関の連携を模索しており、うまく行けば、重力波を含めてた研究会を別に実施したいと考えている。
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Research Products
(12 results)