2015 Fiscal Year Research-status Report
知識基盤社会における生涯職能学習のための制度と方法の調査研究と理論化
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26350277
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
西之園 晴夫 京都教育大学, その他部局等, 名誉教授 (90027673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山西 潤一 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (20158249)
山内 祐平 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (50252565)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生涯学習 / 職業能力 / 地域振興 / 資格 / 海洋スポーツ |
Outline of Annual Research Achievements |
生涯学習による地域振興、特に人口減少の歯止めがかからない地域の資源を活用し新たな産業を生み出すための職能を習得することを目標とした非大学型の高等教育機関の設置にむけ、ニーズ調査、学習内容と学習方法の選定、利害関係者の調整方法など実現可能性を追求している。 今年度はフィールドとして、研究目的から、都市部への人口流出が大きい日本海側に注目し、さらに高等教育機関がない地域として、具体的には京都府宮津市に入り、一年間を通して、現地でのインタビュー調査を中心に研究を進めた。 その過程で、地域の資源である海洋を活用した職能として、海浜スポーツ普及促進を担うインストラクターの育成プログラムを具体的に検討することとなった。 先行事例としてフランスの国立帆走水上スポーツ学校および職業資格をモデルとして、海洋スポーツによって海浜地域の地域振興(観光客の増加や移住者の獲得、繊維業など海洋スポーツ用品に関わる産業の発展)に効果的に寄与できる長いスパンの計画図の構築を進めた。 海浜スポーツは大きく2つに別けられる。海面スポーツ(サーフィン、ウインドサーフィン、カイトサーフィン、カイトボーディング、スタンドアップパドルSUP・サーフィン)、砂浜スポーツ(ビーチサッカー、ビーチバレー、ビーチバスケット、トライアスロン)である。海浜スポーツは多様化しているが、しかしそれぞれのスポーツ団体はその種目のスポーツの振興に力点をおいて活動しているため、それらが組織的に協調して地域振興に貢献することはまだこれからの課題となっている。今年度の調査研究から、スポーツ団体同士、または、スポーツ団体と地域住民などとの利害関係の調整を進めることが非常に困難であることがわかってきた。特に海洋をテーマとするとため、漁業権など歴史文化的に様々な利害が衝突する場が生まれやすい状況になっていることがわかってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、研究フィールドである京都府宮津市を中心に、教育行政関係者、地域産業を支援する商工会議所関係者、海洋生物研究調査機関関係者、プロ海洋スポーツ選手、海洋スポーツ産業関係者、漁村に住む地元住民など利害関係者にインタビュー調査を実施するとともに、海洋スポーツによる職業資格を取得可能な高等教育機関の設置にむけた実現可能性を探った。インタビュー調査を進める中で、本研究の成果を評価するために、(1)~(9)の段階を整理した。 (1) 海に親しむ人が増える。(2) 海洋スポーツの魅力を感じる人が増える。(3) (2)の人の一部が、継続的に親しみ続けられるようにする。(4) (3)の人の一部が、職業的に従事できるようにする。(5) (2)または(3)の人たちが増え、(4)の人たちが指導と安全確保をすることにより、地域的な盛り上がりができる。(6) (5)の盛り上がりにより、域外の人たちが来るようになる。(7) (6)の際に(4)の人たちが対応し、盛り上がりを定着させる。 (8) (7)の一部が地域に定住し(Iターン、Jターン、Uターン)、職業的に従事するようになる(人数が増える)。(9) (8)により、職業的な分担が細分化されて、周辺産業が栄える。 平成27年度の研究成果をふりかえり、(3)を当初の目的として、(2)までを実現を目指す。今後、細かい企画や学習設計は、提案しつつ関係者と相談しながら地域住民の参加協力が得られる態勢を整える。
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Strategy for Future Research Activity |
海浜地域のスポーツ環境の整備ならびに人材育成の問題はまだ本格的には取り組まれていないため、海浜スポーツが行われる海面は漁業従事者にとっては職場であり、漁業権を行使できる場所であるため、海洋スポーツ関係者と漁業従事者との間での信頼と協力の関係が形成されないと健全な発展は望めない。そのため、海浜スポーツの環境整備と人材を育成して活性化プログラムを開発するために、関係する諸団体や活動を以下の活動とのコンタクトおよび共同研究を進めることを検討している。 ①JF全漁連内のJF全国魚青連の「浜プラン」②地域活性学会 スポーツ振興部会 ③海浜スポーツ・レジャー関連諸機関 ④企画・指導専門職の育成による副業の創成 ⑤普及・広報ネットワーク ⑥資金調達 平成28年度は本研究の最終年度となるため、将来の海洋スポーツ大学校の設置にむけて、実践的な学習プログラムを開発し、実施、評価を積極的に進めている。
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Causes of Carryover |
当初研究計画のなかでドイツをはじめ職業資格制度と職業教育訓練機関が発展している国々への視察を検討していたが、①視察を検討していた国の制度や現状に精通している研究者やプロスポーツ選手とのコンタクトがとれたこと、②現在研究フィールドとしている京都府の地域で海浜スポーツを中心とした非大学型の高等教育機関の設置にむけた各種学習プログラムの開発にむけた教材作成などに費やす、この2点から次年度に研究費を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海浜スポーツを中心とした非大学型の高等教育機関の設置にむけた各種学習プログラムの開発にむけた教材作成などの費用として、具体的には、スポーツに必要な道具類の準備やデジタルコンテンツを作成するための海浜スポーツインストラクターへの謝金、撮影編集費用、eラーニングとして活用するための環境整備を検討している。
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Research Products
(5 results)