2015 Fiscal Year Research-status Report
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26350279
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
大下 晴美 大分大学, 医学部, 准教授 (00618887)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多読 / NIRS / 視線追跡装置 / 脳科学的検証 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,脳科学的見地から英語リーディング指導法としての多読(Extensive Reading)の効果を検証し,多読実践のための教育的示唆および多読教材開発のための理論的枠組みを行うことである。 本研究計画の柱は,1.多読指導の効果,2.多読指導法の違いによる効果の差,3.多読教材提示媒体の違いによる効果の差,4.多読教材における挿絵の効果,5.音声付多読教材の効果について検証することである。先行研究においては,読解テストや質問紙によるアンケートを用いた仮説検証が中心であるため,本研究においては,近赤外線分光法NIRSによる脳血流の変化と視線追跡装置による読解過程の変化を観察することにより,英語の脳内処理について考察し,多読の効果と多読教材の有効性について検証する。 平成27年度は,上記2~5についての実験を行う予定であった。しかしながら,平成26年度に購入を検討していた視線追跡装置が予算の都合上購入することができなかったため,予算内で研究目的を達成できる性能を持つ視線追跡装置を平成27年度に探し,購入した。購入時期が12月となったため,平成27年度に実施予定であった実験を行うことができなかった。そのため,平成27年度は予定を変更して,論文等の発表をするための先行研究のまとめ,視線追跡装置の操作法やデータ処理方法の習得,および平成26年度に実施した実験(上記1)の内容の再検討を行った。その結果,平成26年度に実施した実験の客観的根拠を示すために,NIRSのみのデータでは不十分であるという結論に至った。そのため,NIRSと視線追跡装置の両方を用いた追実験を今後実施することによって,より詳細な検証を行う計画を立てている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は,実験の準備として,1.先行研究のレビュー,2.実験で使用する課題文の選定,3.実験参加者募集の案内や説明書・同意書を作成した。さらに,多読3原則に則った自律型多読指導を半年間実践し,指導前後でNIRSを用いて脳血流量の計測を実施した。 平成27年度は,その結果を受け,1.協同型多読指導法の実践とその効果についての検証,2.自律型多読指導法と協同型多読指導法との効果の差の検証,3.多読教材を紙媒体で示した場合と電子媒体で示した場合の有効性の差の検証,4.挿絵付き教材と挿絵無し教材を与えた場合の効果の差の検証,5.音声付き教材と音声無し教材を与えた場合の効果の差の検証を実施する予定であった。しかし予算の関係上,3~5で使用する予定であった視線追跡装置を平成26年度中に購入できなかったこと,平成26年度に実施した実験結果を検証する上で,脳血流量の増減の根拠を明らかにするためには,視線追跡装置との同時計測を行い,再検討する必要が生じたため,平成27年度の計画を変更した。当初計画していた3~5の実験は平成28年度に行うことにした。また,平成26年度の実験結果から,1・2の実験についても,視線追跡装置との同時計測を行う必要が生じたため,平成28年度に先送りした。以上のことから,平成27年度は,先行研究の概観や学会参加などによって,今後の研究の示唆を得ること,実験内容および方法の再構築を行うこと,平成28年度に実施予定であったデータ処理方法の習得を中心に行い,平成28年度に実験を行った後すぐにその成果を発表することができるように準備を整えた。 以上,研究が計画通りに進まない要因が生じたが,計画の修正はすでに行っており,今後は順調に計画を進めることができる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,近赤外線分光法NIRSと視線追跡装置を用いて実験を行い,1.多読指導法の違いによる効果の差,2.教材提示媒体の違い(紙媒体と電子媒体)による効果の差,3.挿絵の効果,4.音声付多読教材の効果について検証する。1については,授業中に1回30分の多読活動の時間を設定し,自律型多読指導法(個による多読)と協同型多読指導法(グループによる多読)の2グループに,合計10回の多読活動を実施する。その指導前後の脳血流量の変化と注視状況の変化を検証する。自律型多読指導法については,平成26年度にも1度実験を行っているが,より客観的な根拠となるデータを収集するために,視線追跡装置を併用した追実験を実施する。2については,課題文を電子媒体で提示した時と紙媒体で提示した時の脳血流量と注視状況の差を検証する。3については,挿絵なしの教材を提示した時と挿絵ありの教材を提示した時の脳血流量と注視状況の差を検証する。4については,音声付教材を提示した時と音声無教材を提示した時の脳血流量,文字追跡スピード,注視状況の差を検証する。以上の実験で得られた結果を分析,検証し,多読指導法および多読教材の有効性に関する脳科学的見地からの教育的示唆をまとめる。その研究成果については,学会発表や論文投稿などを行い,最終的に研究報告書としてまとめる。 課題としては,実験期間の短縮により,当初予定していた被験者数を確保できない可能性が挙げられる。NIRSを用いた先行研究における被験者数と比較すると,本研究で予定していた被験者数はやや多い状況であるため,上記のような事態が生じた場合には,被験者数を減らし,規模を縮小して,すべての実験を行う計画に修正する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,1.当初計上していた予算よりも視線追跡装置を低価で購入することができたこと,2.予定していた実験を実施することができなかったため,参加者に対する謝金が生じなかったこと,3.平成26年度~平成27年度の研究成果を順次発表する予定であったのだが,再検討する必要が生じ,論文投稿等の費用がかからなかったことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記理由で生じた次年度使用額は,平成27年度に行う予定であった実験の被験者に対する謝金,論文投稿費用,および研究成果で得られた多読教材開発のための理論的枠組みを基にした教材サンプルの作成に使用する計画である。
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