2014 Fiscal Year Research-status Report
10年後の大学教育を想定したゼミ活動の方式提案と評価方法の開発
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26350288
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
永岡 慶三 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (90127382)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ゼミ活動 / 遠隔教育 / e-ラーニング / SMS / ワークショップ / オンライン・ディスカッション / 遠隔合同ゼミ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の高等教育は,遠隔教育,e-ラーニング,MOOC(Massive Open Online Course)と約10年単位で大きな変革のキャッチフレーズとともに,大学教育機能のパラダイム自体がドラスティックに変貌し続けている.こうした状況から,物理的な移動をともなう通学によってはじめて可能となるキャンパスでの対面教育は,大教室での多人数一方向の講義型授業形態から,少人数対話型・参加型の討論形式に転換されるべきであるとする考えが主流となってきた.その集約的形式は「ゼミ活動」である.本研究は,これからの10年間のエポック単位を想定して,先導的にゼミ活動の方式を提案し,その活動自体の評価方法を研究開発対象とするものである. 初年度の研究過程を通し,ゼミ活動を大学教育のより中心的機能として位置づけ,大学内大学(University in University)とする考えを提唱するに至った.個々のゼミに独自の教育理念を設定し,学生が所属したくなる魅力的な教育・研究体制を各ゼミどうしが競い合い切磋琢磨することで,もって今後の大学教育の質的向上を目指すべきものと考える.それを具体的に支援するシステムとして,「統合ゼミ活動支援システム SMS: Seminar Management System」の構築を目標として掲げるものである. 第二年度以降,SMSのシステム構築指針の策定と開発,並びに具体的かつ多様なゼミ活動の手段として,ワークショップ/即興スピーチ,オンライン・ディスカッション,テレビ会議システムによる他大学との同時双方向遠隔合同ゼミなどを試行・展開し,手段として確立していく.その一部は既に成果として,2014年度中に学会研究会に報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を,10年後の大学教育を想定したゼミ活動の方式提案と評価方法の開発,として.初年度において研究・検討を進める内に,「統合ゼミ活動支援システム SMS: Seminar Management System」の構築の概念提唱およびその構築の必要性に思い至った. 日本の大学教育において理工系学部を中心にゼミ活動(研究室活動)は伝統的に重要な機能を果たしてきた.このことは国際的にも特徴的な教育方法であり,徒弟制度的な優れた方法論として,今後とも継承し,重視すべきものといえる.しかしながらゼミ活動の具体的方法は口コミで伝えられる程度で,多くの場に共有されることが従来はあまりなかったのはもったいないことである.このゼミ活動の方式をより一般的な方法論として,理工系のみならず大学教育の多くの領域に汎用な方式として,定着させていくことは今後の大学教育にとって意義は大きいと考える. 初年度において統合ゼミ活動支援システムSMSの構想を策定し,システム構築を開始した.並びに具体的かつ多様なゼミ活動の手段として,ワークショップ/即興スピーチ,オンライン・ディスカッション,テレビ会議システムによる他大学との同時双方向遠隔合同ゼミなどを試行し,既にその成果を2014年度中に,日本教育工学会,教育システム情報学会,電子情報通信学会教育工学研究会などの各学会研究会に報告した.参会者との質疑応答の機会をとおして,次年度以降の研究計画にも有益な示唆を得た. 以上,おおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
統合ゼミ活動支援システムSMSの指針策定と構築をいっそう進める.並行して,eポートフォリオの利活用を中心とした先行研究の調査,諸外国におけるゼミ活動相当の大学教育手段についての調査等を行う予定である. また一方,SMSの中身としての具体的かつ多様なゼミ活動の手段開発が重要である.それらについて当初より計画していたのは,伝統的な専門書・研究論文の輪講の他に,ワークショップ/即興スピーチ,オンライン・ディスカッション,テレビ会議システムによる他大学との同時双方向遠隔合同ゼミである.これらの方法は初年度において実施・試行し,いくつかの研究成果を学会研究会で報告している.ワークショップ/即興スピーチでは,ルーブリックを開発して評価手法の開発,オンライン・ディスカッションでは,これまで実施してきた「六色ハット法」や「三酔人経綸問答式」の他に,それらの拡張版や新規なフレームワーク(参加者の役割分担・振り分け)の導入などを考えている.またテレビ会議システムの合同ゼミもスポーツ・体育実技ものなども構想している. 今後の研究の推進方策として,これをより進展させ,実用化を目指すものである.その規準は,初任者の大学教員でも,有効なゼミ活動を行うことが可能となる方法論の提供である.これに関しては,指摘されることの多い大学教員には教員免許を有しないことや,大学教員になって初めてゼミでの指導を任され,多くは自分自身が学部生・大学院生のときに経験した何年にもわたって引き継がれてきたやりかたをそのまま踏襲することが起こっている.必要最低限のゼミ活動の具体的方法論の規準を設け,指導コンテンツの提供を目指すものである.
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