2015 Fiscal Year Research-status Report
オンライン授業学修者の集中度推定のための中枢神経系生体信号処理モデルの確立
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26350315
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
小俣 昌樹 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (60402088)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生体信号 / 集中 / オンライン学修 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,オンライン学修コンテンツの学修者の心的状態を推定するモデルの確立を目指し,その第一段階として,学修者の集中の程度を生体信号から推定する数理統計モデルを確立することである.このモデルによって,従来手法では閲覧履歴や小テストなどから断片的にしか把握できなかった学修者の様子について,その心的状態を含めて客観的かつ連続的に把握できるようになると考える. 2年目である2015年度は,第一に,集中を促したり維持したりすることに関連する「興味」とさまざまな生理指標の組み合わせとの間の関係を分析した.組み合わせを分析対象とした理由は,より少ない生理指標で精度の高い推定を行えるモデルを構築するためである.計測した生体信号は,頭皮上の脳波,頭皮下2 cm程度の脳血流内の酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンとの比,指先の容積脈波,手掌の皮膚コンダクタンス変化,腹部の呼吸運動である.被験者が行ったタスクは,2分間の映像を閲覧してもらうこと,そして,その前後に映像への興味に関する質問紙調査へ回答してもらうことである.この質問紙調査への回答値と映像閲覧中の生理指標の組み合わせとの関係について,被験者ごとの重回帰分析を行った.組み合わせは,4種類,3種類,2種類である.分析の結果,脳波が興味に強く寄与していることがわかった.このことについて,生物医科学に関する国際会議で発表した. 第二に,集中の程度の違いの検証として,オンライン学修者の学修コンテンツへの操作の有無の違いにおける生体信号の違いを分析した.ここでの操作は,学修者が閲覧している授業スライドの中でわかった箇所とわからなかった箇所をマウスカーソルで指し示すことである.学修中に計測した生体信号は前述と同じである.分析の結果,被験者ごとの生体信号において,主には手掌の皮膚コンダクタンス変化が操作の有無に関係していることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画の通り,数理統計モデルの評価として,生理指標の組み合わせによる寄与率の分析を行った.一方で,eラーニングサーバに生体信号や推定データを記録するシステムの構築には至っていない.この理由は,2014年度の知見に基づいて推定モデルの精度を向上させるための追加実験として,2015年度に,他の実験タスクにおける生体信号の計測実験とそのデータ分析を先行して実施したためである.
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Strategy for Future Research Activity |
eラーニングサーバに生体信号や推定データを記録するシステムの設計を行う.また,さまざまなオンライン学修タスクにおける集中と生理指標との関係を検証する実験と分析を継続して実施し,それらのデータとこれまでのデータとを統合したデータの分析を行う.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,今年度に購入した物品の購入額が当初計画時の予算額よりも安価となったため,および,現在までの進捗状況に示した通り,当初計画では今年度購入予定であったサーバの購入を延期したためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に,次年度のサーバ購入に充てる計画である.
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