2015 Fiscal Year Research-status Report
学習者全体の有機的な知識ネットワークを作るアクティブラーニング支援システム
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26350329
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
二瓶 裕之 北海道医療大学, 薬学部, 教授 (70433422)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アクティブラーニング / グループ討議 / eラーニング / 教育支援システム / 学修成果の可視化 / ICT活用システム |
Outline of Annual Research Achievements |
効果的なグループ形成の支援機能をシステムに実装した.ここでは,グループ形成のための指標とする学習記録として,当初計画していたグループ討議の記録や出欠情報に加えてジェネリックスキルのテストの結果を用いた.ジェネリックスキルは,対人基礎力,対自己基礎力,対課題基礎力から構成される「社会及び職業生活を生き抜くために必要とされる汎用的技能」であり,コミュニケーション能力や課題解決能力などといったグループ形成のための有効な指標となりえる学生個人の能力である.システムでは,討議で教員が重視したい点を支援できるようなグループ形成の方法を選択できるようにした.例えば,討議をスムーズに進行させることを重視する際には,協働力や親和力が発揮されるように対人基礎力のスコアを重視して,すべてのグループに対して対人基礎力のスコアの高い(もしくは低い)学生が均等に割り振られるようにした. さらに,これらの取り組みの学修効果を検証するためのICT活用の仕組みも構築した.まず,電子ノートや電子ペンなど様々なICTツールを組み合わせることでグループ討議などを実施している最中に発生する多様な学修情報(KJ法で用いたカードに記載された文字,図解化された島などの図形情報,各作業の所要時間など)をリアルタイムに収集する仕組みを作った.また,グループ討議などの後に実施する事後アンケートを収集するためのWebシステムに,ジェネリックスキルとの関係を分析する機能を拡充した.これにより,全体的には,ジェネリックスキルのスコアを基準としたグループ形成には討議の進めやすさなど様々な点において一定の効果が認められた.しかし,グループ形成の指標を算出するにあたっては,ジェネリックスキルを構成する各基礎力をどのような比率で重視するのかを適切に設定することが重要であることもわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画としては,「効果的なグループ形成の支援機能」と「空間と時間の枠組みを越えた情報共有機能」に関する2つのモジュールに分けたシステム開発を平成27年度までに完了させるものであった.開発の途中段階においては,完成予定が前後するものもあったが,平成27年度にはシステムを完成している.特に,「効果的なグループ形成の支援機能」に関しては,当初計画していなかったジェネリックスキルテストの結果を加味するなど計画以上の進捗となった. さらに,平成28年度などに計画をしていた電子ポートフォリオシステムの開発も前倒しで開始した.電子ポートフォリオシステムでは,グループ討議において個人がどのような役割を担当して何を学んだのかなどの学修情報を管理できるようにする計画であった.現在計画している電子ポートフォリオシステムでは,さらに,学修課題の達成度を自己評価する仕組みも実現して,各課題の達成度に基づいて学修行動をモニタリングできるポートフォリオ機能も実装した.また,学修成果の可視化のためにルーブリック評価システムも構築し,評価項目と到達レベルのマトリクス形式による学修成果の視覚化機能を実現した. 以上のことから,システム開発,ならびに,アクティブラーニングの実施に関しては「当初の計画以上に進んでいる」といえる.ただ,研究成果の発表に関しては計画より少々遅れが生じている.計画当初は,平成26年度に引き続き,査読付き論文への投稿を計画していた.しかし,平成27年度には,研究会など査読の無い投稿・発表は行ってはいるものの,システム開発へのエフォート率が高くなってしまい,査読付き論文への投稿が無かった. したがって,システム開発,アクティブラーニングの実施,研究成果の発表の全ての進捗を勘案して,全体的な研究の進捗としては「おおむね順調に進展している」と評価するものとした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては,まず,システム開発とアクティブラーニングの実施に関しては,能動的学修の推進には学修成果の可視化までも含めたトータルな授業設計が不可欠であるとの考えに基づき,「ICT活用による能動的学修支援と学修成果の可視化を融合させた教育改善の実践」を行う.具体的には,まず,反転授業における事前・事後学修の実施率向上のために学修ポートフォリオを融合した電子シラバスシステムを構築する.授業設計の基礎となるシラバスには対面学修のみならず事前・事後学修の内容までも具体的な課題形式で記載し,それにより,平成27年度のシステムを拡充して,学修行動をモニタリングできるポートフォリオ機能を実現する.また,協働学修に対しては,ディスカッションなどで学生が担当した役割など多様な学修情報を管理するプロジェクト管理システムに,学修成果の可視化のために構築したルーブリック評価システムを融合させる.加えて,システム間で継ぎ目のなく学修情報を共有できるようにもする. また,研究成果の発表に関しては,研究会や発表会などの査読の無い投稿・発表に加えて,査読付き論文への投稿も現在行っているところであり,さらなる投稿も計画している.
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Causes of Carryover |
年度末に予定していた学会出張旅費(日本教育工学会(3/4~6 高松))の航空券を割引価格で購入できたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の学会発表にかかる出張旅費に使用する計画である.
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Research Products
(5 results)