2014 Fiscal Year Research-status Report
自動化とSensemakingの観点から捉える教師の熟達過程に関する研究
Project/Area Number |
26350339
|
Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
遠山 孝司 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 講師 (50468972)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅田 匡 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00184143)
吉田 重和 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 准教授 (30549233)
西原 康行 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (50339959)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 教師の熟達化 / 大学教職課程 / 自動化 / Sensemaking |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,大学の教員養成課程における教師としての成長を,授業を経験する中での教授行動の自動化と授業内の情報処理の自動化,Sensemakingの観点からとらえることを目的としている。今年度は,研究報告として3つの学会発表を行った。 第一の発表では,教員志望の大学生が自身の初回の模擬授業を振り返った際にどのような内容について語るのかをリフレクションのテキスト分析から検討した。語られる内容において,生徒と準備についての言及はネガティブな表現もポジティブな内容も含まれているのに対し,生徒や黒板,授業展開についてのリフレクションはネガティブな内容が多い事が示された。初回の模擬授業においては黒板への板書,生徒への対応,授業展開などが難しいと感じられている傾向が明らかにされた。 第二の発表では,教職を希望する大学生が2回の模擬授業において同一内容の授業を繰り返した際のリフレクションの内容の変化を検討した。うまくはできなかったがリラックスできたという2回目と1回目を比較してもリフレクションの内容の量的な変化として明確なものは示されなかった。質的な分析の必要性が示されたと考えられる。 第三の発表では,中学校保健体育の教員を志望していた大学生の模擬授業のリフレクションで示された授業観とその後,教員として採用され,半年を経験した後のリフレクションで示された授業観を比較し,学部学生と初任教員の間に見られる成長を検討した。分析の結果,学部時代は現在の自分の心的状況や行動についてのリフレクションが多く,教える対象である生徒の行動や知識や態度に関するリフレクションが見られるようになることや,授業の前後の変化についての言及が多くなることから,教員の意識内容の中心が空間的にも時間的にも拡大していくモデルが示唆された。 今後も同様の観点から大学教職課程での教員要請と教師の熟達化を研究していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,教師の授業をする力量の形成と熟達化の過程を,(1)授業者の授業経験の積み重ねによる教授行動の「自動化」と(2)授業者が授業中に何に気づき,その気づいた内容にどのような意味を付与するのかという「Sensemaking」という2つの観点からとらえることを意図したものである。 平成26年度は,中学校保健体育科教員になることを希望する教職課程の大学3年生の協力を得て,4つの内容に関する2回ずつ計8回の模擬授業を行い,生理的指標によって得られる心理的作業負荷をキューとした精緻なリフレクションを求めるインタビューを進行中である。研究協力者である新任教員と熟達教員の授業の撮影と生理的指標データの収集については,調査対象となる保健の授業の実施のタイミングが天候に左右されることも有り,調整中である。だが,研究協力者である新任教員を対象に,インタビュー調査を行い,授業観の変化についての調査を行った。 当初の計画と若干の変更があるが,平成27年度以降に予定していた調査に着手したことなどから,おおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究において進展の遅れが見られる新任教員と熟達教員の授業時のデータ収集とインタビュー調査については,当初予定していた研究協力者との協力だけでなく,他の研究協力者との協力についても検討する。5カ年計画の研究の2年目として,調整を図りながら,研究の目的を遂行していく。 今年度以降も継続してデータの収集を行うが,収集したデータの分析も並行して行っていく。研究成果については,国内学会だけでなく,国際学会で発表し,教師の熟達化と教員養成における教師の授業をする力量の発達,形成について広く成果を問うていく。
|
Causes of Carryover |
研究協力者から協力を得てデータ収集を行う予定であったが,その一部が天候の影響で当初の計画通り遂行できなかったため,人件費および,データ収集,分析に必要な研究費を次年度以降に繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の研究計画から遅れは見られるものの,研究計画の内容について研究遂行及び予算執行は,研究期間内に調整が可能であると考えている。2015年度,2016年度内に次年度使用額は0にできるものと考える。
|