2015 Fiscal Year Research-status Report
異文化「体験」を活かす学習環境デザインの開発―原初的コミュニケーションの観点から
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26350348
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
久保田 真弓 関西大学, 総合情報学部, 教授 (20268329)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 体験 / 振り返り |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、異文化接触時における大学生の「体験」を認知だけでなく情動と行動に着目して異文化理解促進のための学習環境デザインの要件を提示することである。 そこで、2015年度では、フィリピンへのスタディツアー実施、スタディツアーでの学びを振り返るための報告会を大学生、高校生、一般人など対象者や規模別に数回開催した。その他に「ひらめき・ときめきサイエンス」のプログラムにより『異文化「体験」へのいざない―五感を研ぎ澄ませ』というタイトルで高校生を対象に即興や異文化コミュニケーションを学ぶ「シミュレーションゲーム」をワークショップ形式で実施した。これは、「体験」に重きを置いたワークショップを通して、自分自身の五感の豊かさに気づけることを目的としている。参加した高校生は、さまざまなワークを体験し、最後に「自分探しシート」を使って「感じた自分」「発見した自分」「なりたい自分」の観点から午前と午後の終わりに振り返りをした。その結果、「意外と非言語が好きな自分」、「人のことをちょっと信じられていない自分」「周りの人と比べると会話がまだ少なかった自分」「リードするのは苦手な自分」など多様な自分発見になった。そして、それが今後の「なりたい自分」に変換され、つながっていた。 一方、このワークショップの企画、運営、実施には、大学院生1名、学部4年生5名、3年生10名がかかわった。これも本プログラムの狙いで、各ゲームを分担して実施するだけでなく、高校生が参加しているところを写真に撮り、それを提示して、行動の特徴的な点などを最後にパワーポイントで解説したりした。そうすることで高校生の振る舞いを深く観察したり、さまざまな出来事に「いま・ここで」臨機応変に対応したりすることになり、大学生や院生自身の「体験」を豊かにすることができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの達成度 平成27年度では、以下のことを実施した。1)9月にスタディツアーを10日間フィリピンで実施した。その際に毎年実施している大学での授業や大学生との交流のほかに、社会問題を扱うNGOと協力し、NGOのスタッフのところでのホームスティを含め、さまざまな「体験」をさせた。2)スタディツアー中に体験した個別の「ああ体験」を記述させ、それをもとに「体験」の意義を深めようと考えた。その結果、人とのかかわりで出てきた相手の言葉にハッとさせられていることが分かった。しかし、鯨岡(2005)が提唱する「エピソード記述」は、自分の関与の度合いに応じて見えてくる事象を取り上げ記述するもので、「観察の仕方」と「かかわり方」が重要になってくる。スタディツアーなど短期間の訪問やかかわりでは、記述がなかなか深まらなかった。3)日本質的心理学会の年次大会で開催された「エピソード記述」についてのワークショップに参加し、知見を深めた。4)これらを踏まえ「ひらめき・ときめきサイエンス」でのプログラム『異文化「体験」へのいざない―五感を研ぎ澄ませ』を実施した。 このようにさまざまな活動をしてきたが、活動のための準備や実施に時間がとられ、研究成果としてまとめる時間があまりとれなかった。今後は、少し時間をかけて考察する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度もフィリピンへのスタディツアーなどを実施し、さまざまな「体験」を収集し、分析する予定である。研究方法としては、PAC分析が有効であることが分かったが、教育方法としての「エピソード記述」が、学生にとっては難しいようなので、その点を主に考えることにする。 なお、「体験」を「経験」として、自分のものにしていく方策としては、スタディツアーなどの集団での活動では、全体の目標のほかに個別に目標を決め、各自目的意識を持って行動することが重要なので、平成28年度は、「ルーブリック」などの利用を考えていく予定である。
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Research Products
(1 results)