• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2014 Fiscal Year Research-status Report

ルネサンスの批判的学問論の研究――ペトラルカ,サルターティ,ベイコンを中心に

Research Project

Project/Area Number 26350364
Research InstitutionTokai University

Principal Investigator

東 慎一郎  東海大学, 総合教育センター, 准教授 (10366065)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2018-03-31
Keywordsペトラルカ / 哲学の範囲 / 中世学問論 / 17世紀学問論 / デカルトの学問論 / 国際情報交換,フランス
Outline of Annual Research Achievements

平成26年度の研究においては,ルネサンス学問論の重要な問題として,ペトラルカにおける哲学の範囲の問題を認識した.『無知について』のテキストを,哲学そのもの本質をめぐる考察として捉えることの可能性に気付かされた(Christian Trottman, 2008 ; Francesco Petrarca, 1999等を参照).今後は,ペトラルカが「哲学」という言葉に何を見ていたか,あるいは期待していたかについて一層明確にする必要がある.
同時に,2015年度に開催予定の国際コロックについても準備を進めた.2015年12月初旬,フランスから研究者2人を招聘し,中世から初期近代にかけての学問論についてコロックを行うことにした.日仏両方からの研究発表と議論を通じて,学問論史についての認識を深めるとともに,両国研究者の交流を図り,研究発展のきっかけを作ることがその目的である.準備作業の中で,中世,ルネサンス,初期近代の学問論を考える上で,論理学や形而上学の地位をめぐる議論が重要であったこと,同時に,時代による議論の違いも無視できないということが確認された.特にデカルトにおける歴史上の断絶が際立つ.これは,本研究課題であるルネサンスの学問論を捉え直す上で大いに役立つ成果である.
なお,2014年度の研究費の一部を,招聘旅費として支出するため,支出せずに繰り越した.予算の一部が未支出であるのはそのためである.
最後に,これまでの研究成果を元に,3件の研究発表を行った.それぞれにおいて,非常に有用な質問を受け,また生産的議論を行うことができた.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の計画では,平成26年度はルネサンス学問論の広がりに関する文献調査に充てる予定であった.その際,学芸の闘いと言われる,今日から見れば技術に分類されるようなもの(戦争術,音楽等)も含めた,学問技術の諸分野間を比較する議論も視野に入れていた.
当該年度は,実際はペトラルカ学問論についての認識を深め,残りの研究資源は,成果のまとめとその学会や研究会での発表,そして平成27年度に開催予定の国際コロックの準備に充てられた.
国際コロックに科研費を使って招待するのは,フランス人研究者ふたりである.どちらも中世後期およびルネサンスと初期近代の学問論について実績がある.共同でコロックを開催することは,本研究計画遂行上非常に重要であると判断し,昨年度中に開催を判断した.その準備作業,特にメールによる打ち合わせを通して,本研究計画のテーマに関していくつかの重要な知見を得ることができた.中世後期と初期近代を比較する観点が深められ,学問論における論理学や形而上学の扱い,またベイコンと同じく17世紀前半に活躍したデカルトの位置づけをめぐって得られた知見は,この時代の学問論史を立体的に捉える上で大いに役立つ.こうしたことを踏まえて当該年度進捗状況を評価した.

Strategy for Future Research Activity

研究においては,今後も初期人文主義からベイコンまでの学問論史がテーマになる.ペトラルカに関しては,懐疑主義との関わりに焦点を絞る.キケロの懐疑主義を引くに当たり,ペトラルカがどのような意図で行ったのか.そもそもキケロの懐疑主義はどのような性質のものだったのか,といった問題について調査を進める.ペトラルカが参照したのはキケロ『アカデミカ』とされているが,このテキストは中期アカデメイアの懐疑思想の下に書かれているとされるものの,キケロ独自の視点から懐疑の範囲が拡張されている節も見られ,単純な判断はできない.近代哲学に大きな影響を及ぼすことになるピュロン主義とは異なった思想である,このキケロの懐疑主義と,ペトラルカの意図とを注意深く比較する必要がある.
また,27年度後半の12月には,26年度から準備にとりかかっている国際コロック(仮題「中世から17世紀までの学問論」)を実施する.この点は研究計画上の変更であるが,この変更は大きな意義を持つと確信している.本研究のテーマである「学問論史」は未開拓の分野であり,国内外の知恵を借りつつ,積極的に開拓してゆく必要がある.そのため,中世哲学,および17世紀哲学の専門家で,認識論や科学史にも関心のある著名研究者をフランスより招き,コロックにおいて学問論史の可能性と今後の発展の仕方を考えることにした.
このコロック開催のための招聘費用と開催費用に,平成27年度の予算の大部分を割り当てる予定である.コロックの実施は,研究代表者単身では困難が多いので,関心を共有する国内の他の研究者に協力を仰ぎつつ,また有給のアルバイトも依頼しつつ,進めていく予定である.

Causes of Carryover

既に記した通り,今年度は,当初の第2年度の計画を変更し,学問論史についての国際コロックを開催する予定である.その際,2名の研究者をフランスから招聘する.そのための旅費,宿泊費等を支出するため,次年度使用額が生じた.
招聘する研究者は,いずれも中世および17世紀哲学において,学問論的視点に近い視点から,十分な歴史的俯瞰と同時に緻密なテキスト分析に基づく研究を発表してきた研究者である.現に昨年度,学問論史のコロックについて打診した際,早速前向きの反応と,幾つかの建設的提案も頂いており,研究代表者自身が学問論史についての認識を深めるきっかけになっている.研究計画の変更は,研究目的を達成する上で極めて重要であると判断している.助成金の使用額および支出計画も,コロック開催を可能にするために変更することになった.

Expenditure Plan for Carryover Budget

上述国際コロックにおいては,招聘する研究者のフランスからの往復旅費,宿泊費,日当のほか,会場使用料,設営補助の人件費を全額科研費助成金から支出する予定である.合計70万円超が必要と計算している.この金額に,前年度の次年度使用額,および今年度の科研費助成金の合計のうち,9割前後を支出する予定である.

  • Research Products

    (4 results)

All 2015 2014

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] “Objects and Demonstrations in the Philosophy of Mathematics of Alessandro Piccolomini”2015

    • Author(s)
      Shin Higashi
    • Journal Title

      I.M. Vandoulakis, Liu Dun (eds), "Navigating across Mathematical Cultures and Times: Exploring the Diversity of Discoveries and Proofs", Singapore, World Scientific Publisher

      Volume: 1 Pages: 1-38

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 「中世ルネサンスにおける数学論をめぐって――学問論的伝統とその現代的意義」2014

    • Author(s)
      東慎一郎
    • Organizer
      中世哲学会第63回大会
    • Place of Presentation
      中央大学(東京都八王子市)
    • Year and Date
      2014-11-08
  • [Presentation] “Mathematics, Aristotelianism and the Society of Jesus”2014

    • Author(s)
      Shin Higashi
    • Organizer
      Japanese Association for Renaissance Studies, 2nd International Conference: “Aristotelian Traditions and Japan’s Christian Century”
    • Place of Presentation
      学習院女子大学(東京都新宿区)
    • Year and Date
      2014-07-19
  • [Presentation] 「学問論史からの視点――科学史との補完的関係」2014

    • Author(s)
      東慎一郎
    • Organizer
      日本科学史学会第61回年会(シンポジウム「科学史とインテレクチュアル・ヒストリーの挑戦」)
    • Place of Presentation
      酪農学園大学(北海道江別市)
    • Year and Date
      2014-05-25

URL: 

Published: 2016-05-27  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi