2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Critical Theories of Science in the Renaissance, with Case Studies on Petrarca, Salutati and Francis Bacon
Project/Area Number |
26350364
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
東 慎一郎 東海大学, 現代教養センター, 准教授 (10366065)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 学問論史 / 学問の意義 / キリスト教 / 懐疑主義 / 『法学と医学の高貴さ』 / 『無知について』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では,ペトラルカ,サルターティ,ベイコンを,人文主義における重要な学問論の思想家として選び,彼らの学問論の特徴を把握し,同時に今日の学問論のあり方に対する再考の材料を得るべく研究を実施した.本研究では学問論を,学問研究の意義や理念をめぐる考え方とし,とくに自然哲学や自然科学についての研究がどのように位置づけられていたかという問題に注目した.結果は以下の3点にまとめられる. (1) 三者に共通するおおまかな特徴として,それぞれが人間の知の領域全体を見渡す中で,哲学的視点,言い換えれば人間の精神的および社会的あり方を根本に据える視点を共有していたと言える.今日よく見られる,科学技術の進歩を無条件に善とする視点とは明らかに異なっている視点がヨーロッパの知の根源にあるのである. (2) 研究計画の中では,とりわけ未解明のことがらが多い問題として,ペトラルカの『無知について』(1370年)の学問論に注目した.研究遂行の過程で,この著作が,14世紀の大学学問やアリストテレス主義的な知を批判するだけではなく,より普遍的な学問論的-認識論的射程を持つことが明らかになった. (3) 研究計画遂行の過程で,ペトラルカの学問論について先行研究のサーヴェイを行い,アウグスティヌスから受け継いだキリスト教的好奇心批判の重要性とともに,懐疑主義の影響の重要性が確認できた.後者の問題に関しては,研究がいまだ十分でない状況を認識し,それを補うためにいくつかのテーマを引き続き研究した.懐疑主義的立場を披瀝するペトラルカのテキスト分析に加え,歴史的-比較思想的視点から,キケロと『アカデミカ』の懐疑主義,ラクタンティウスの懐疑主義,ソールズベリーのジョンの懐疑主義を取り上げ,それらとペトラルカの思想の共通性および差異についておおまかに明らかにできた.
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