2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26350370
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
松田 利彦 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (50252408)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 植民地医学 / 志賀潔 / 公衆衛生 / 赤十字 / ロックフェラー |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年4月、米国Rockefeller Archive Center, Presbyterian Historical Society, American Philosophical Societyで調査を行った。1920年代における京城帝国大学医学部に対するロックフェラー財団の援助計画についての資料を発掘し「ロックフェラー財団と植民地朝鮮の医療衛生改革構想―京城帝国大学医学部長志賀潔との交渉を中心に」(ワークショップ「植民地帝国日本における知と権力」2015年10月26日、中央研究院台湾史研究所)で発表した。 同8月韓国ソウルにて、姜南紅氏に植民地期朝鮮の東亜聯盟運動に関するインタビューを行い著書『東亜聯盟運動と朝鮮・朝鮮人』(有志舎、2015年)に反映した。 そのほか海外では、韓国国会図書館、台湾国立中央図書館、国内では、国会図書館、東京大学医学図書館、徳富蘇峰記念館、東北大学医学部図書館、国立公文書館、豊田赤十字看護大学等で、京城帝国大学医学部における公衆衛生学研究の系譜、日本赤十字社の植民地朝鮮での活動などの調査をした。関連研究として「1910年代における朝鮮総督府の国境警備政策」(『人文学報』第106号、2015年4月)、"Les KEMPEITAI et l'expansion du Japon imperial a Taiwan en Coree et en Chine au debut du XXe siecle", Arnaud Houte et Jean-Noel Luc eds., Les Gendarmeries dans le monde, de la Revolution francaise a nos jours,(Paris: Presses universitaires Paris Sorbonne, 2016.2)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度は、著書1冊、論文2編を公刊し、学会・シンポジウム等で口頭発表5本を行った。ロックフェラー財団による京城帝国大学医学部への支援計画をめぐる当時の医学部長・志賀潔との交渉についての資料が大量に見つかり、これをまとめることが大きな仕事となった。この成果は、上述のように国際ワークショップで発表したが、2017年度に刊行予定の編著に取りいれる計画である。そのほか、国会図書館・国立公文書館の調査を元に、京城帝国大学医学部における公衆衛生学研究の系譜、日本赤十字社の植民地朝鮮での活動についての論文を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
京城帝国大学医学部における公衆衛生学研究の系譜については、2016年6月に韓国でのシンポジウムで口頭発表する予定であり、また、同年9月に国際日本文化研究センター共同研究会でも口頭発表を行う。ロックフェラー財団による京城帝国大学医学部への支援計画についての論文をまとめるため、同年7~8月にかけ、ジョンズホプキンス大学医学史アーカイブセンター、ロックフェラーアーカイブズセンター、ハーバード大学で調査を行う。 これらの調査と報告により、植民地朝鮮における医療をめぐるヘゲモニーが、1910年代の在朝鮮宣教師から1920年代以降、京城帝国大学へ移行したこと、その流れにドイツ医学からアメリカ医学への転換という世界的潮流を視野に入れた志賀潔の働きがあったことを明らかにできると考えている。 あわせて、サブテーマとして、日本赤十字社の植民地朝鮮における活動も明らかにしたいと考えている。豊田赤十字看護大学所蔵の日本赤十字社関係資料は既に複写しているので、その整理を進めて論文発表の目処を立てる。
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Causes of Carryover |
137,850円の次年度使用額が生じたが、これは、出張旅費の内いくつかが総合研究大学院大学文化科学研究科国際日本研究専攻長としての出張と併せて行ったため一部の経費が科研費以外から支出されたこと、および、購入予定の古書が売り切れになっており執行できなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国会図書館・国立公文書館・東京大学医学図書館等への出張旅費にて使用する計画である。
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