2017 Fiscal Year Research-status Report
X線CT撮影はじめ科学的分析を応用した東アジア古漆器の製作技法と保存修復の研究
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26350379
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
小池 富雄 鶴見大学, 文学部, 教授 (40195631)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 漆工芸文化財 / X線CT撮影 / 漆工史 / 文化財保存修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度でのCT撮影は13点、他にソフトエックス線、デジタル撮影などによる調査作品は、20点余りであった。日本・中国・朝鮮など東アジアの古漆器の調査をして、画像の判読、分析と相互間の比較検討をおこなった。時代判定・産地判定・真贋判定・破損状態判定等有効な画像データを集積した。 【専門学会での発表】① 文化財保存修復学会 第39回大会於金沢 7月1日ー2日。初期高台寺蒔絵食籠(新出在銘作)の保存修復のための分析―X線CTはじめ科学的診断=(ポスター発表P057)X線CTによる黒漆五稜花形小皿の紙胎構造分析(ポスター発表p060研究代表大学院生渡邉裕香)② 漆アカデミー 漆サミット in 鎌倉 11月24日 黒漆五稜花形小皿の復元模造製作ポスター発表) 上記、金沢市出張に合わせて、石川県立美術館、金沢市中村記念美術館、金沢美術工芸大学附属工芸資料館などで所蔵品・寺社寄託品の漆工品の調査、資料収集をした。また、奈良大学、奈良国立博物館に出張し、資料調査した。今後文化財の保存修復に貢献すると期待されるX線CTの利用について調査し、奈良国立博物館に導入したばかりのわが国最新のCT撮影機器を見学して同館での撮影成果についても意見交換した。 本研究では、鶴見大学歯学部附属病院が備える臨床用のX線CTを専ら利用している。ただし、一般的に文化財用には健康被害に配慮する必要がない工業用の高出力器機が主流である。また微細なサンプルを分析するマイクロX線スキャナーも工業製品、考古学の発掘品などに適応されている。当該年度ではそれらの学外のCT機器での利用の調査と試行も行った。その撮影成果は上記②に反映した。今後、学外でのCT撮影機器を利用する場合は、高精細な画像が得られるメリットもあるが、さらに高額な撮影経費と輸送梱包などの障碍が予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学内外の研究協力者の協力と指導により、当該年度も多数のデータ収集に務めることができた。前年度から繰り越した経費も、執行して最終的に年度末には不足となったが、翌年度に業務を繰り延べて対応した。
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Strategy for Future Research Activity |
5年目となる平成30年度は本研究計画の最終年度であり、東洋漆工史についての研究を従来に引き続き、東洋の古い漆芸文化財の内で、日本・中国・朝鮮・琉球などの漆工品の研究と修復研究施工を並行して行い、その経過から得た知見と研究成果を発表する。発表が確定しているのは下記である。また最終年度としての総合的なまとめとしては、シンポジウムを計画している。発表者は、研究代表者の小池のほかに研究協力者の大学院生、大学院修了者らを予定して、本研究を含む総合的な東洋漆工史研究と保存修復を概観する。学部生および一般市民にも公開して、東洋漆工芸研究と保存修復の最先端をシンポジウムでわかりやすく紹介して啓蒙普及したい。①日本の近世大名婚礼調度の研究と資料調査、文化財保存修復学会 第40回大会(会場高知市文化プラザ)既にアクセプト。②中国・上海博物館における招待発表。アクセプト済み。主催者「中国古代漆器シンポジウムおよび2018年中国文物学会漆器琺瑯器専業委員会年会」「千年文華―中国歴代漆器展」会期平成30年11月14日~17日。これに合わせて上海近郊の博物館と史跡調査を計画している。③鶴見大学文化財学会主催、シンポジウム11月17日、会場本学会館ホール「うるし研究の最前線」。発表予定者、小池富雄・基調講演「総論 文化財学としての漆工芸研究」、室瀬祐 本学非常勤講師 博士(文化財学)目白漆芸文化財研究所「漆工美術品の修復―日本の指定文化財と在外作の修復、組織・技術・材料」、渡邉裕香 大学院修了研究生「X線CTはじめ科学的な分析を応用した漆工文化財研究―本学での事例を中心にー」、野口明日香 本学博士後期課程「桜に燕蒔絵源氏物語書物箪笥(本学新収品)の保存修復と分析」パネルディスカション。その後、平成30年度末には、シンポジウム記録を本学科の年報『文化財学雑誌』にまとめる(15号、平成31年3月14日刊行予定)。
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Causes of Carryover |
1,933円の残高は、執行すべき金額の1%未満の端数であり、翌年度に繰り越して執行する。
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