2015 Fiscal Year Research-status Report
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26350381
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
岡田 文男 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (60298742)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 漆工技法 / 大成洞古墳 / 青松塚古墳 / 勝負砂古墳 / 二月堂練行衆盤 / 愛知県美術館 / 木村定三コレクション / 木目塗盆 |
Outline of Annual Research Achievements |
1国内調査 ①京都大学文学部考古学研究室が保管する大阪府茨木市所在の青松塚古墳より出土した有機質遺物の顕微鏡による材質調査を継続しており、その中で新たな課題として鉄製遺物の表面に付着した獣毛の同定が上ってきた。そこで標準試料として在来馬の毛、動物園より野生動物の毛を取集し、電子顕微鏡観察試料の作製を行い、同定作業を実施した。②岡山県に所在する勝負砂古墳より出土した有機質遺物の調査を行った。同古墳より出土した遺物は現在、岡山大学文学部ならびに国立歴史民俗博物館に保管されており、両館に赴き試料採取を行い、現在報告書作成に向け、顕微鏡観察標本を作製中である。③二月堂練行衆盤の裏面にある銘文は修理時の後銘であるとの仮説を検証するため、東京・五島美術館、福岡県・福岡市美術館、滋賀県ミホミュージアム所蔵の練行衆盤の銘文調査を行った。本年度も継続予定。④愛知県美術館に収蔵されている木村定三コレクションの中の木目塗盆について塗膜構造調査をおこなった。調査の結果、犀皮と異なる技法であることを明らかにした。 2 海外調査 韓国慶尚南道金海市に所在する大成洞古墳群の88号墳、92号墳より出土した漆製品について、プサン大学考古学研究室、金海大成洞古墳博物館との共同で、漆製品の材質・技法調査を継続中で、報告書作成に協力した。さらに、2016年度の日本文化財科学会において口頭発表することが決定している(6月5,6日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた国内調査では岡山大学が発掘調査した勝負砂古墳出土の有機質遺物の材質・技法調査を継続して行っており、分析が着実に進んでいる。また、京都大学文学部が保管する青松塚古墳の出土品の中の獣毛調査についても現生標本を作製することで比較検討を進めており、報告書に結果を反映させる予定である。また、海外調査では韓国金海市に所在する大成洞古墳群より出土した漆製品の調査を終了し、本年度中に報告書刊行予定である。それに対して当初の研究予定の一つであった中国との共同研究は過去2年間に全く進捗していない。その点については本年度に少しでも進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の国内調査については青松塚古墳出土の獣毛の同定、勝負砂古墳出土の有機質遺物の顕微鏡標本の作製と同定作業、二月堂練行衆盤の銘文調査を継続する予定である。懸案になっている中国における漆製品の出土資料調査については今後も西安市の関係者と調整をしながら実現に向けた努力をしていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が166,917円生じた。この金額は中国における漆工品調査の旅費滞在費2回分に相当し、2015年度に実行できなかったことに由来する。今年度に前年度の未調査分を解消したい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
中国西安市における漆工品調査を年2回行う予定である。現段階で中国西安市との調整が取れておらず、調査日程は未定。
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